雪山の上でそり遊びをしよう。メロウはまだパトラたちの本気を知らない。
スイジュ国を初めて見たが、山頂から見えるのは大きな城壁に囲まれていた。
山を越えてすぐに見える街は、遠目に見ても馬車など沢山の人たちが行きかい活気に溢れている。
いつか行ってみたいものだ。
「みんなここなら誰にも邪魔されないから出ておいで」
パトラたちは手に雪山で遊ぶ用のそりを持ってでてきた。
もう準備万端といった感じだ。
他の女性陣は雪山用に少し防寒がしっかりとした服を着てた。
シャノンの服は、シャノンの可愛さを引き出してくれてるとても可愛いものだった。
あの感じはパトラが作ったものだと予想をしたらドンピシャだった。
「ロックさん、これ新しい服パトラちゃんが作ってくれたんですけど……どうですか?」
「あっうん。よく似合っていると思うよ」
シャノンの服はふわふわもこもこの、白を基調にした服だった。
ここへ来る時に着ていた服と似ているが、さらに可愛さが増している。
「へへっ、ありがとうございます。パトラちゃんが市販品を参考にしてどんどん可愛く作ってくれたんですよ」
シャノンの反応がとても可愛い。寒さのせいか、赤くなった顔が余計に彼女の可愛さを引き立てる。
「パトラすごいな。いっぱい作ってあげて偉いな」
「うん。メロウのも作ってあげたんだよ」
メロウのはシャノンと同じ型で茶色を基調としたものだった。
シャノンのが可愛いが、メロウのはより大人っぽくなっている。
「ご主人様、私は?」
メロウが俺の前で一回転する。
「うん。メロウのも素敵だと思うよ」
「ふふっありがとう」
「それじゃあ、パトラ何で遊びたいんだ?」
「まずはそりで遊びたい!」
「ここだと結構急だけど大丈夫か?」
登って来た時よりも、上から見る方がかなり急だ。むしろ上から見たら崖といっても過言ではない。
「大丈夫だよー。行ってきてもいい?」
「もちろんいいぞ。怪我だけ気をつけてな。帰りは箱庭経由で戻ってくればいいよ」
かなり急だが、パトラたちなら大丈夫だろう。
前なら過保護に心配したが、今では信頼の方が上回っている。
「ご主人様、この高さをそりで子供たちだけで降りるって危なくないんですか?」
「そうかな……パトラたちなら大丈夫だと思うけど、それならワイバーンたちも一緒に行くか?」
ワイバーンたちは頷いてくれ、パトラたちの後ろに飛び乗った。
ワイバーンは全部で10個の卵があったが、最初に孵ったのが3つと、あれから2つ孵って5匹になっていた。
残りの5個の卵は残念ながら孵ることはなかったので、箱庭の中にお墓を作った。
残念だが仕方ない。
従魔が増えた時、同じように声が聞こえてきたので、2回分を箱庭の拡張を選んだ。
そのおかげで箱庭の中はかなり広い。
「もし、危なかったら空に飛んで逃げるんだよ」
オレンジアントEだけガーゴイルくんがいないのでパートナーがいなかったのか少し寂しそうにしている。
「Eは次回からいくか?」
Eだけ少し寂しそうな表情を見せるが、周りを一度見てから、ゆっくりと頷いた。
「ご主人様、仕方がないわね。私が一緒に行ってあげるわよ」
「メロウ行ってくれるのか?」
「空には逃げられないけど、私も少しは魔法が使えるし、最悪箱庭に飛べばなんとかなりますよ。それよりも、Eくんだけ一人残す方が可哀想ですから。子供の面倒はちゃんと大人が見てあげないと」
メロウはみんなのお母さんのような優しい笑顔でEの頭をなでる。
「メロウさん、大丈夫ですか? 結構この山急ですよ」
「シャノン大丈夫よ。子供たちだけで行くって言っているんだから。私だっていけるわ」
メロウはとてもいい人魚だ。
パトラたちを普通の子供として扱ってくれる。
だけど……パトラたちの潜在能力をまだまだ知らないのだろう。
「それじゃあ、気を付けて遊んでくるんだよ」
「パパー行ってくるねー」
「ご主人様、私の活躍をご覧ください」
メロウは乗り気だったけど……ほぼ同時に全員のそりが崖下へと消えると同時に、メロウの絶叫とパトラのはしゃぐ声が聞こえてきた。
上からパトラたちのそりを見てみると、猛スピードで山を下って……落下していく。
さすがに俺でも、あのスピードは……。
メロウは……あれ大丈夫かな? 意識失っていないといいんだけど。
どことなくフワフワ浮かんでいるようにも見える。
「メロウさん、大丈夫ですかね?」
「まぁ、自分から言い出したわけだし、大丈夫じゃないかな」
崖を下まで一気に急降下して、なだらかな斜面になり、ゆっくりとそりが止まると同時にメロウが雪山の中にぶっ倒れ、一瞬で消えていった。
箱庭の中にメロウは入ったらしい。どうやらダメだったか。
『ロック、私もやってみたい』
「ラッキーもか? そりがあればいいんだけどな。ラッキーが乗れるようなそりあるかな?」
『ガーゴイルくんが作ってくれていたぞ』
「そうか? それならちょっととってくるから待っててくれ」
「あっそれなら私がとってきますから待っててください」
「それならシャノンに任せるよ」
「はいっ!」
ラッキーはそりに乗るのが楽しみなのか非常に高速で尻尾を振っている。
「よっぽど楽しみなんだな」
『あぁ、こういうの初めてだからドキドキしてる』
パトラたちも箱庭の中に消え、シャノンも箱庭に入ってからなかなか戻ってこない。
「どうしたんだろうな? 遅くないか?」
『そうだな。でも、シャノンならすぐにとってきてくれるだろ』
「それはそうなんだけど、パトラたちも戻ってきてないんだよな」
『パトラは……あれじゃないか。メロウがビックリしてるからお茶でも飲ませているんだよ』
それにしても遅い。何かあったのだろうか。