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幼馴染のSランクパーティーからお荷物扱いされている件

「俺は世界一の剣士になる。そしてどんな人でも守れる強い男になるんだ」

 俺の目の前で幼馴染のアイザックがそう高らかに宣言し木人形へと切りかかる。

 切り付けられた木人形には大きな溝ができていた。


「私は絶対世界一の魔法使いになるわ」

 エミーは杖を振り回すとそれにあわせて、火の玉が縦横無尽に空中を動き回っている。

 そして、岩へ向かって火の玉を放つと派手な音を立てて爆発した。


「わっ私は……どんな怪我も治せる女性になれたらいいなって思ってます」

 カラの目の前にはポーションの空瓶が大量に置かれている。

 カラが魔法を唱えるとポーションの瓶の中に透明の液体がどんどん増えていく。


「俺は……」

 みんなと一緒にいつまでも楽しくいられたらいいと思ってしまう。

 そのためにみんなが夢を叶えるためにサポートしよう。

 そして……。

 俺たちは魔王城に一番近いグラエラ村で育った仲良し4人組だった。


 俺たちが12歳になると、4人は村の司祭から鑑定をうけ、それぞれが適正職業を告げられた。

 アイザックは世界一の剣士になると目標に近い剣闘士。

 エミーも自分が望んでいた魔法使い。

 カラも人を回復し導く聖女の職業だった。

 俺は……聖獣使いという変わった職業だった。


 聖獣使いという職業は司祭も今まで聞いたことがないというほど希少な職業だった。

 村の職業一覧にものっていなかった。


「すごいねロック! 聖獣使いなんて希少な職業につくなんて本当にロックはカッコイイよ」

「そんなことないよ。エミーだって小さい頃から訓練してた魔法使いになれてすごいじゃないか」


「本当だよね。俺なんてありきたりな剣闘士だからな。ロックはやっぱりすごいよ」

「いやいやアイザックは俺たちの攻撃の中心だからな」


「私も、ロックと同じ聖気を使えるから一緒に訓練しようね」

「カラの回復にはみんな期待しているからね。一緒に頑張ろうね!」


「それにしても、聖獣使い、魔法使い、聖女、それで俺の剣闘士ってかなりバランスのいいパーティーじゃね?」

「間違いない! みんなで最高のパーティーになろう」


 全員が拳をつきだし、そして空高く掲げた。

 空は快晴、俺たちの進むべき道を太陽が明るく照らしているようだった。


 そして3年が経過した。

 俺たちは村から王都クロントへ来て冒険者パーティーとしてやっていた。

 元からの才能や運もあり3年間という短い間でS級パーティーへと成り上がっていた。

 ただ、俺たちの中で徐々に差ができてしまっていた。


「なぁエミー、もう首を縦にふれよ。あれとパーティーを組むメリットがもう何もないんだよ」

「そんな……だってメリットとかそういうの関係なくない? 私たちはずっと一緒だったんだよ」

「もう俺たちは自分たちだけのパーティーのことを考えていればいい時期は終わったんだよ。S級パーティーとしてさらに成長しなきゃいけないんだ。あいつは12歳までで終わり」


 俺は宿屋の2階の借りている部屋の前で中の声を聞いていた。


「俺たちは誰もが憧れ、羨望を集めるS級パーティーなんだよ。だからこそさらに高みに行かなきゃいけないし、雑魚をいつまでも面倒見ている余裕はないんだ。なぁわかるだろ? 勇者が俺たちのパーティーに興味を持ってくれるなんてこんなチャンスはない。あれをクビにすれば上手くいくんだよ」


 俺は部屋の扉を開けることができなかった。

 さらにアイザックはまくしたてるように続けている。


「あれは確かに12歳まではすごかったよ。でも今じゃただの役立たず、お荷物だ。あれの代わりなんていくらでもいる。あれのできることはみんなできるんだからな。S級パーティーの一員にまでなれただけであれだって満足するだろうよ。普通はS級にあがる前に切り捨てられる。勇者が俺たちの仲間になれば王様だって俺たちを無視できなくなるし俺たちの村にだっていい影響があるに決まってる。みんなの夢が叶うスピードだってあがるんだよ」


 聖獣使いという非常にレアな職業になった俺は最初の頃はみんなからの期待に応えられるように頑張った。でも、当たり前だが聖獣なんてそんな滅多にいるものじゃなかった。


 王都クロントへ来れば何か情報があるかと思ったが、王都でも聖獣使いは珍しい職業だった。

 過去にまったくいなかったわけではなかったが、その多くは一生涯聖獣を探すか別の職業について一生涯を終えている。


 聖獣がいないと言っても、それに関連した色々なスキルを覚えられたのでパーティーには貢献してきたつもりだ。聖獣使いのスキルは聖獣がいなくても仲間へのサポートとして使えるものが沢山あった。


 小さな頃からサポートを意識してきたので支援魔法や装備への加護などで仲間の基礎力を向上させた。荷物持ちも率先的にやり、料理や警戒、斥候、壁役までやってきた。

 パーティーが強くなりS級へあがるためには上手く立ち回ることも必要でギルドとの交渉もしたし、すべての厄介事は全部俺が引き受けた。


 みんなが特化して鍛えて行く中で、全員のサポートができるように、そしてどんな職業になっても大丈夫なようにと基本的な技術は身につけた。

 だけど、その俺の貢献はまったく理解されていなかった。


「明日、勇者と顔合わせをしてもらいそのままダンジョンへ潜る。俺たちに足りなかった力があれば『滅火のダンジョン』の攻略もできるはずだ。それであれとはおさらばだ」


「たしかにロックは使えないけど。でも幼馴染で頑張ってきたんだから切り捨てなくても」


「エミーもう話し合いは終わろう。エミーは個人的にあれと付き合えばいい。ところで明日からダンジョンだって言っているのにそんなドレス持っていくのか?」


「そうよ。素敵でしょ? これ高かったから宿に置いておいて盗まれたりしたら嫌でしょ。あれも子供じゃないんだから荷物が一つくらい増えたからと言って文句言わないわよ」


 ドアをノックし扉をあけると室内が静かになる。


「それじゃ俺はもう寝るからな。ロックお前もいつまでもトロトロやっていないでさっさと明日の準備しておけ。ただ、ガチャガチャ音たてるんじゃねぇぞ。お前と違って俺たちは明日忙しいんだからな」


 明日の準備のために買い出しに行った俺にたいしてアイザックはそう言い放つと布団に入る。

 宿では小さい頃から一緒に育ったせいもあり全員が同じ部屋で寝ていた。


 でも最近では当たり前のように俺だけベッドの使用は許されず床で寝ている。


 パーティーの中では結局戦闘に参加し敵を倒せるものや回復ができるものが優先される。

 見えないところでカバーや活躍をしても、それはやって当たり前という認識しかされなかった。


 勇者が入るということは明日で俺は首になるということだろう。

 小さな頃から一緒にやってきて仲間だと思っていただけにショックは大きい。

 その夜、俺は床の上で薄い毛布を被りながら声を出さずに泣いた。


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