1年目1学期 バイト決定 デートのお誘い
運動会が終わって二回目の土曜日。
俺は妹・みかんを連れて喫茶店へ向かった。
一人で行くのもなんだし…と思い、すみれを誘ったが美咲と出かけるらしい。
じゃあ、みかんでも連れていくか…そう思って誘ったら、
「お兄ちゃんのおごり!? やった~~~!!!」
と、勝手に奢る事前提となってしまった。
まぁ、いっか。
駅前の商店街に喫茶店はある。
一階はテイクアウト専用のケーキ屋で、その二階が喫茶店だった。
ドアを開けるとカランカランとベルが鳴った。
「いらっしゃいませ~」
奥から聞き慣れた声が聞こえた。
「お、なんだ、君か」
出迎えたのはお兄さん・晃さんだった。
「こんにちは」
「今、お袋を呼ぶな。適当に座ってくれ」
土曜日とあって店は空いていた。まだ昼前という事もあるが、茶色い家具に統一された店内は何処か落ち着く雰囲気だ。ただ一つ、隣町のサッカーチームのグッツが壁一面に飾られていない限り…。
四人掛けのテーブル席に座ると、みかんはすぐにメニューを手に取った。
「お兄ちゃん、何食べてもいい?」
「俺の懐事情を考えろ」
「大丈夫! お母さんからお金貰ってきたから! でも、デザートはお兄ちゃんのおごりだからね!」
ちゃっかりしてやがる。
まあ、元々値段は安いから別に構わないけど。
しばらくしてお袋さん・紗栄子さんがやってきた。
「いらっしゃい、ヒロキ君。ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます。あの…」
「彩夏か? あいつは今日はいないぞ」
晃さんがズバリと言ってきた。
「いない?」
「ああ。姉貴と出かけている」
「サッカー観戦ですか?」
「ああ。今日はアウェイの試合だからな」
アウェイの試合って……かなりサッカーが好きなんだな…。
まあ、いない方が話は進めやすそうだけど。
「サッカー、好きなんですね」
「最初は好きじゃなかったぞ。嫌々俺たちにくっついてきていた。だけど、今年の4月に突然のめり込んで、急にアウェイまで見に行くようになった。お気に入りの選手でも出来たのかね?」
「背番号10番の選手ですか?」
「う~…ん、どうだろう? そんなにのめり込んでいるイメージがなかったから、誰が好きっていうのは分からない。今までサッカーに興味なさそうだったから、俺たちも深くは聞かなかったんだが、昔からのめり込んできたのかもな」
心境の変化…ってやつかな?
その後、注文した料理を食べ終わる頃、紗栄子さんが働くために必要な書類を持ってきた。
バイトの勤務は週二日。演劇部の活動がある日のみ、夕方6時から9時までの三時間だけ働くことになった。土日に関しては、隣町のサッカーチームの試合がある日は休みになるので、人手が足りない時だけ出勤することになった。
夏には商店街の夏祭りが数回あると聞いたので、その時は店先で一階のケーキ屋と共同で店先に屋台を出すそうだ。
因みに一階のケーキ屋は紗栄子さんの友達の店で、時々彩夏が手伝いに行っているらしい。
喫茶店を後にし、少し商店街で買い物をしてから帰宅することにした。
「あ、プラネタリウム、オープンするんだ」
商店街の中にある本屋に立ち寄った時、レジの横に張ってあったポスターを、みかんがワザとらしく見つけた。
「オープンは7月か…」
「お兄ちゃん、連れて行ってくれる?」
「おいおい、友達と一緒に行けばいいだろ? なんで俺が連れて行くんだよ」
「だって、ここのプラネタリウム、入場料が高いんだもん!!」
みかんの言葉通り、入場料は子供料金でも小学生同士では高すぎる。高校生以上大人料金となっているが、映画とほぼ変わらない値段だ。子供料金はその半額だが、みかん如く、
「見に行くとなると、毎月楽しみにしている月刊誌を諦めなくてはいけない」
らしい。
みかんは毎月お小遣いで、少女漫画の月刊誌を二種類買っている。入場料はその二冊に相当するようだ。
ウルウルと潤んだ瞳で見上げてくるみかん。
小学生でもこういう仕草で男を操ることができると知っているんだな…。
「行くときは言えよ」
「本当に!? わぁ~い!!」
雑誌二冊分と思えば安い物だよ。
プラネタリウムのオープンは夏休みの初日。また来月になったらメルマガで情報が入ってくるんだろうな。
その日の夜、坂本からメールが入った。
『イェ~イ!! 今日も勝ったぜ!!!
足運んだ甲斐あったよ!
└(゜∀゜└) (┘゜∀゜)┘ワッショイ!ワッショイ!!』
って、坂本も行っていたのかよ!?
本当に好きなんだな、あのチームが。
『で、スタジアムで彩夏ちゃんに会ったよ。
お姉さんと一緒に来てたみたい。
(俺は観戦ツアーで一人参戦)
今度、一緒に観戦する約束したんだ~。
羨ましいだろ~?』
坂本の奴、いつの間に仲良くなったんだ?
まあ、彼女はメインキャラでもないし、隠れ対象者でもないから、俺には関係ない。
好きにすればいい。
坂本に返信しようとしたその時、新しい着信を知らせる音が鳴った。
メルマガだろう…そう思ったが、鳥のさえずりの音だったので、メールだとわかった。
送り主はすみれだった。
って、俺、いつの間にすみれの連絡先を入手したんだ!?
幼馴染みの特権か!?
『こんばんは、ヒロちゃん。
来週の土曜日、用事ある?』
ん? これはデートの誘いか?
『実はね、美咲ちゃんのお誕生日が近いの。
もしよかったらプレゼント選びを一緒にしてほしいな…』
ほえ? 美咲の誕生日?
うぉぉおおぉぉぉぉおお!! 忘れてた!
確か期末テストの中日が美咲の誕生日だった!!
ゲームではみかんから情報を仕入れないと誕生日イベントが発生しなかったんだ!!
すみれ、ナイス!!
『彩夏ちゃんを誘おうと思ったら、サッカーで忙しいんだって。
ヒロちゃん、時間があるのなら付き合ってほしいな』
もちろんYES!!だぜ!!
たしか、今度の土曜日は喫茶店も休みだし(サッカー観戦の為)、部活もないし、お誘いOK!!
「いいよ。何時に待ち合わせする?……と」
すぐに返信をすると、すみれから返事が来た。
『ありがとう!
じゃあ、午前10時に家の前でいい?
なんか、デートのお誘いみたいだね』
もっちデートだぞーーー!!
今のうちに美咲の情報収集♪ 情報収集♪
って、どうやって情報収集するんだ?
たしかゲームだと、女の子の誕生日プレゼントは、前日に選択肢が出て、お気に入りの物を選択した。
だが、この世界では選択肢などない!
どうしたらいいんだ?
その時、
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
と、みかんがドアをノックしてきた。
部屋に入ってきたみかんの手にはノートが握りしめられていた。
「どうした?」
「あのね、夏休みの宿題なんだけど…」
は? 夏休み? まだ6月だぞ?
「夏休みの宿題に、自分の興味のある事を調べるっていうのがあるんだけど、手伝ってくれないかな?」
「……プラネタリウムに連れていけってか?」
「違う! 星空については去年やっちゃったから、他の事をやりたいの!」
「じゃあ、勝手にやれば?」
「お兄ちゃんの手を借りないと出来ないの!!」
「なんで?」
「それは……その……」
なかなか話そうとしないみかん。
絶対に何かあるな?
って、こんな下り、ゲームにはなかったぞ?
「…お兄ちゃん……隣町のサッカーチームの試合、見に行ったよね?」
「ああ。知り合いがチケットをくれた」
「わたしも行きたいの!!」
「……へ?」
「今年の夏休みの宿題は、サッカーについて調べたいの! だから、わたしも見に行きたい!! お兄ちゃん、サッカー部に入ったんだよね? なんとかならない?」
おいおいおいおい。いくらサッカー部でも、現実世界の俺はサッカーには興味がないんだぞ。
前回はチケットをくれたから見にいけたけど、第一、どうやってチケットを手に入れていいのかもわからないし、俺一人じゃどうにもならんぞ?
「なんでサッカーなんか調べたいんだ? ネットで調べればはやいじゃないか」
「そ…それは……その……」
顔を赤くしてモジモジとしだすみかんを見て、俺はピンッと来た。
さてはみかん、気になる男の子がサッカー好きだな?
「行っておくが、今度の土曜日は無理だからな。俺は出かける用事がある」
「じゃあ、次の試合は?」
「いつ行うんだよ」
「わからない」
「じゃあ無理だな。いつの試合に行きたいのかわからないんなら、俺も動けない」
「うぅ~~…」
「唸るな」
「じゃあ、行きたい日が決まったら連れて行ってくれる?」
「その時の俺の用事による」
「調べてくる!!」
そう言いながら、みかんは部屋を飛び出した。
みかんの奴、絶対に好きな男の子がいるな。
で、その男の子がサッカー好きで、少しでも気を引きたいから夏休みの自由研究かなんかの宿題にサッカーを選んだな。
てか、なんでこの世界はサッカー中心に話が進んでいるんだ?
さては作者、相当なサッカー好きだな?(ドキッ!! by作者)
ああぁああぁぁああぁぁぁぁあ!!
みかんに聞けばよかった…。
あいつ、恋愛対象となる女の子の情報、詳しいんだよな。どこで仕入れてくるんだか。
坂本よりも情報は詳しかった記憶がある。
火曜日の放課後、俺のバイトデビューとなった。
現実世界ではレストランで働いている事もあって、ホールの仕事は何の支障もなくスムーズに動けた。
「初めてなのに手慣れている感じね」
紗栄子さんは何の疑いもなく、俺の仕事っぷりを褒めてくれた。
「お前、本当に高校生か?」
サッカースクールでの仕事がない晃さんは疑いの目で見ていた。
うん、現実世界の俺はとっくに高校を卒業していますからね。…なんて言えるわけがない!
「憧れていた職業なので、喫茶店とかレストランを舞台にした漫画をたくさん読んでいたんです」
なんて嘘を付いてその場を逃れた。
喫茶店はほぼ常連が来店し、新規のお客は珍しいらしい。
学校帰りの高校生とかも来るが、同じ学校の制服を着ていても面識がないため従業員と客という関係で接することが出来た。
中にはどこかで見たことあるんだよな~…と思う男性数人の姿もあったが、特に気にすることはなかった。
9時が近づくと紗栄子さんは早いけど上がっていいよと言ってくれた。
まだ店内には数人のお客が残っている。
「あと一時間で閉店だから大丈夫よ。また木曜日、お願いしますね」
「はい」
「木曜日は晃もいないから、少し忙しくなるけど頑張りましょうね」
優しい笑顔を見せる紗栄子さん。
この店でバイトしてよかった~~。
あ、ついでに聞いちゃおうかな?
「あの、紗栄子さん。ちょっと聞きたい事があるんですがいいですか?」
「なに?」
「サッカーの観戦チケットって、どうやって買えばいいですか?」
「サッカーの? 見に行くの?」
「妹が見に行きたいって言うんです」
「妹さんて、この間お店に来てくれた子?」
「はい。いま小学生です」
「そうね~……」
紗栄子さんはどうやって話そうか悩んでいるようだった。
「初めてスタジアムに行くのなら指定席をお勧めするわ。自由席だとかなり早い時間に行かないと席は取れないし、ゆっくりとスタグルも楽しめないと思うの。でもお金のことを気にするのなら自由席がいいんだけど…」
「指定席って高いですよね?」
「ええ。自由席の倍ぐらいかしら? 自由席なら小学生は安い値段で入ることできるけど、場所によっては見にくかったり、嫌な思いをすることもあると思うの。ご両親を説得して指定席を購入した方が落ち着いて見ることができると思うわ」
だよな~…。初めての観戦で自由席はきついだろうな。俺も初観戦が指定席である意味嬉しかったし。
しかもみかんは元々サッカーに興味がない。ただ見るだけなら指定席が無難かもしれない。
「ヒロキ君、サッカー部なのにサッカーは見ないのね」
「やる方が好きなんで…」
また嘘を付いてしまった…。ただ単にサッカーについて詳しくないだけで、サッカー部を選んだのもステータス上げの為だとは言えない…。
「憧れの選手はいるの?」
「一応…。元日本代表の選手には憧れています」
「まあ! 誰?誰?」
「隣町のチームで背番号10を背負っている選手です。サッカー部の入部テストもその選手をイメージしてフリーキックとか打ったんですけど、現実と理想は全く違いますね」
「あの選手は救世主だからね。今ではなくてはならない存在よ。このチームに来てくれてありがとうって心から思うの」
安堵の顔を見せる紗栄子さんからは、本当に感謝している様子が伺える。
サッカーを知らない俺でも名前は知っているし、プレーも知っている。そんな有名人が隣町にいるなんて、さすがゲームの世界。
いや、コラボしているんだから現実世界にもいるんだよな。
見る機会がないから本当に疎いや。
紗栄子さんは詳しい事は彩夏に伝えると約束してくれた。
この後、まさか【あんな事】になるなんて、この時思いもよらなかった。
翌日、いつもの昼休み、いつもの屋上でランチタイムを迎えた。
今日は坂本と彩夏も一緒だった。どうやら坂本が屋上に向かう美咲、すみれ、彩夏の姿を見つけ、この間の試合の事で彩夏と話したかったそうだ。
「でな、前線でボールを奪って、GKが前に出ている所をズドーン!!って決めたわけ! あれは最高に気持ちよかった!!!」
興奮冷めやらない坂本のテンションは異常に高かった。どうやら観戦ツアーに申し込んだはいいが、バスでの移動で、しかも試合が終わったのが夜の9時過ぎで、こっちに戻ってきたのが朝方4時。仮眠はしたが興奮しすぎてほぼ寝ていないという。徹夜から来るハイテンションらしい。
って、もう水曜日だぞ!!
試合は土曜日だったはず!!!
そのテンション、いつまで続くんだ!?
「坂本君、テンション高いね」
「生徒会長さんみたい」
サッカーに詳しくない美咲とすみれは、ハイテンションの坂本に対して引き気味。
彩夏は上手くスルーしている。彼女のスルースキル、高くないか?
「そういえば、彩夏ちゃん。ヒロちゃんにお話したい事があるんだよね?」
「え? 俺に?」
「彩夏ちゃんったら可愛いんだよ。ヒロキ君に伝えたい事があるけど、1人だとお話する勇気がないから一緒についてきてってモジモジしながら言うんだもの。もぉ~! 可愛い!!」
美咲は隣にいた彩夏をギュッと抱きしめた。急に抱きしめられた彩夏は「ひゃぁぁあぁ!?」と可愛い悲鳴を上げた。
うん、彩夏よ。その場所代われ。
マジで思った。
でもそんなこと口にしたら軽蔑される。ゲーム画面に向かって叫ぶだけにしておこう。
「お母さんからの伝言なんだよね?」
「は…はい、そうです」
「紗栄子さんから? ……あ、もしかして観戦チケットのこと?」
「はい。明日のバイトの時に渡したい物があるって言ってました。ヒロキくん、サッカーを見に来るんですか?」
「あ~…俺が…っていうよりも妹が見たいって言うんだよね。夏休みの宿題でサッカーの事を調べたいんだって。それで実際に試合を見に行きたいって言い出したんだけど、初めての観戦だからどうしたらいいのか、紗栄子さんにアドバイスを貰ったんだ」
「妹さんって、いくつなの?」
「今、小学5年。急に見に行きたいって言い出して困っていたんだ。自由席は安いけど、初めての観戦なら指定席をお勧めするって言われた。席が決まっているから、ゆっくり入場できるし、スタグルも堪能できる。嫌な思いもしないだろうって進めてくれたけど、でも指定席って高いじゃん。高校生のお小遣いではちょっとな…」
「わかる~!!! 俺もシーズンチケット買ってるけど、チケット、ユニ、タオマフはお年玉で賄ってるもん。1月2月に合計5万はきついよ」
テンションマックスの坂本が大きな溜息を吐いた。
彩夏もウンウンと頷いている。
「そんなにお金がかかるの?」
美咲が信じられないという顔をしている。
前に一度だけ調べたけど、改めて金額を聞くと俺も驚く。
「シーズン始めはそれぐらいだけど、サポーター会員だから年会費も払うし、スタグルで金使うし、アウェイも金掛かるんだぜ」
「それに試合が開催される毎に新しいグッズも出ますので、それを買い続けていると、1か月の出費は相当な物です」
「そうそう! ガチャに新作が出た時なんか、目当ての選手が出るまで引くからな」
「わたしはコンプしたことあります」
「マジで!? どのシリーズ!?」
「リボン型のストラップです」
「マジ!? いつの!?」
「2年前…ですね」
「あぁ~~……じゃあ、俺の推しはまだいない時だ」
「でも、毎年何回かは引いていますので、最近のもありますよ」
「3番! 3番ある!?」
「はい、持っています。去年の最終節で販売された色紙もありますが…」
「マジで~~!? 交換しない!? 彩夏ちゃんって誰推し? 10番?」
「今は10番ですが、40番も気になるんです」
「40番なら沢山持ってるぜ! 明日持ってくるよ!」
俺たちには理解できない会話を続ける坂本と彩夏。これがスタジアムに通い続けるサポーターの会話ってものなんだろうな。なんとなくオタクの会話にも似ている…気がする。
ハイテンションで隣町のサッカーチームの話をする坂本と彩夏は、2人だけで会話を楽しんでいた。
俺への伝言は、明日のバイトの時に渡したい物があるという、その一言だけだった。
坂本がいなければ、もっと話は続いたのかな?
翌日のバイトで、俺は紗栄子さんから信じられない物を貰った。
「本当にいいんですか!?」
渡された物を手にして、俺は微かに震えていた。
紗栄子さんから渡されたのは、夏休み初日に行われる試合の観戦チケット。しかもメインスタンドと書かれた高い席だった。
「お金、払います。いくらですか!?」
「あ、お金はいいの。それ、貰いものだから」
「こんな高い席を!?」
「ヒロキ君がチケットの取り方がわからないって、2日前に話していたでしょ? その話を聞いていた人がくれたの。よかったらどうぞって」
「こんな高い席、貰っていいんですか? その人は大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。気にしないで」
こんな高い席(7000円って書いてある)、3枚もくれる人ってどんな人だ!? スポンサー席か!?
「それから、よかったらこれもどうぞって」
そう言いながら紗栄子さんが差し出したのは、チームのエンブレムが描かれたショッピングバック。
中を開けたら、二枚のユニフォームが入っていた。
背番号は10。しかも大人用と子供用だ。サインまで入ってる!!
「あの、これ!!」
「ご本人からのプレゼント。火曜日の夜、店にいたのよ。気づかなかった?」
はぁぁぁあぁぁあぁぁぁ!?
「嬉しかったのよ、自分に憧れている人がいることに。これをきっかけにスタジアムに足を運んでくれると嬉しいって伝言を頼まれているわ」
「うわぁ~~~…」
「また来るって言っていたから、お礼は本人に言ってあげてね」
とんだサプライズだよ……。
もちろん、みかんにチケットを手配できたと話したら大いに喜んでくれた。
チケットが3枚あったのは、彩夏を案内人として付ける為らしい。(本当は4枚くれたらしいが、1枚はお断りしたとのこと)
みかんはサッカーなんか知らないから、プレゼントされたユニフォームに興味はなかった。ただ見に行ける事が嬉しいだけだった。
みかんよ。俺もよくは知らないが、この選手は超有名人なんだぞ。
その有名人に俺は直に会うことが出来るんだぞ。
サッカー部を選んでよかった~~!!!!!
<つづく>