1年目1学期 ゴールデンウィーク
学校生活にも慣れ、サッカー部と演劇部の掛け持ちも苦はなく、順調な高校生活を送っている。
サッカー部ではレギュラー組と同じ練習を行い、着々と実力もついてきた。
演劇部は男部員が少なく、大道具の移動や照明器具の設置など、力仕事を主にしている。演劇部の顧問からはサッカー部の有能な選手なのに、掛け持ちで大丈夫?と言われたが、体力作りの一環だと嘘を付いて(本当はパラメーター上げの為)、なんとか演劇部にも馴染んできた。
授業や部活でストレスは貯まるが、適度に休み、時々すみれや美咲が手作り弁当を作ってきてくれて、それを食べるとストレスが低下することに気付いた。
日曜日も部活がない時は休息をし、ゲームと違って時間を自由に使えるので、2~3時間買い物に出かけたりしてストレスだけ下げるように尽した。
ただ、買い物に出かけても、お小遣いがないため何も買えない。
やっぱりアルバイトしないとダメなのかな?
もうすぐゴールデンウィークがやってくる。
今年は最大8連休を予定している。部活も演劇部はお休みらしい。サッカー部も先輩たちがアルバイトや家族と出かける為、初日だけの練習となった。
本当にこれだけ休みばっかりで大丈夫かよ…と思ったが、ミニゲームでは某サッカーゲーム顔負けの試合展開をする先輩たちに俺は驚いてばかりだ。一応俺もサブメンバーとしてミニゲームの控え組に入れるようになった。でも、先輩たちの技術は凄く、プロ顔負けのプレーを繰り広げる。さすが全国大会の常連だ。
ゴールデンウィークに入る前日、坂本からサッカーを見に行かないかと誘われた。
「お前と2人で?」
嫌そうな顔を向けると、坂本は必死に頭を横に振った。
「違うよ! 女の子たちとだよ! 隣のクラスの女子にチケット貰ったんだ。一緒に行こうぜ?」
「隣のクラスって誰だよ」
「美咲ちゃんとすみれちゃん。2人の友達がメインスタンドのチケットを年間で買っているんだけど、その友達以外用事で行けなくなったんだって。それで、美咲ちゃんとすみれちゃんを誘ったところ、オレたちにもお声がかかったってわけ」
なんでもう「ちゃん」付で呼んでいるんだよ。なんかムカつく。
「オレ、年チケ(年間チケット)持っているけど、メインスタンドって座ったことないし、いつもゴール裏だからどんな景色が見れるのか楽しみだ! しかもボックス席!! 簡単に手に入る所じゃないぜ?」
そんなに珍しい席なんだ。
俺はスマホで隣町のチームのスタジアムを検索し、ボックス席という席種の値段を調べた。
は!? 年間10万!? 一人あたり!? 5人で50万じゃん!! こんな高いの!?
坂本が買っているゴール裏が年3万ぐらいだから、物凄い席じゃないか。
美咲やすみれの友達って、金持ち!?
放課後、すみれが美咲と1人の女子生徒を連れて、俺たちの教室にやってきた。
「ヒロちゃん、坂本君から聞いてくれた?」
「あ…ああ」
「で、どう? ゴールデンウィークの最終日なんだけど大丈夫?」
「特に用事はない」
「よかった! 彩夏ちゃん、大丈夫だって」
すみれは後ろにいた女子生徒に笑顔を見せた。美咲も「よかったね!」と喜んでいる。
彩夏と呼ばれた女子生徒は黒縁メガネにおさげスタイルのいかにも優等生という雰囲気だった。まあ、モブキャラだなって感じ。
「あの、ごめんなさい。突然誘って迷惑だったでしょ?」
どの声優とも似つかないか細い声でその彩夏は謝ってきた。
「いやいや、こんな高価な席に招待してくれてオレは嬉しいよ!」
坂本のテンションが上がっている。
まあ、坂本は隣町のチームを小さい頃から応援している。テンションが上がるのも無理ない。
「でも、こんな高い席、年間で買えるなんてすごいね」
「あ…それは……父が創設当時からサポーターをしていて、今は少額だけど出資しているんです。今の社長さんとも仲が良くって、母が経営している喫茶店に選手たちも立ち寄ってくれるから…」
コネかよ! スポンサー席かよ!
そう突っ込みたかったが、坂本が「選手って誰が来ているの!? サインとかある!? いつ行けば会える!?」とマシンガンのように突っ込んでいったので、俺は黙ってその光景を見ていた。
「でも、困ったね、すみれちゃん。わたしたち、クッズは持っていないよ」
「そうだね。やっぱりユニフォームとか揃えた方がいいかな?」
美咲とすみれは当日着ていく服で悩んでいる。
俺も正直迷っている。隣町のチームはサックスブルーという色のユニを着ている。俺のクローゼットにはその色も、その色に近い物もない。小遣いもないし、買うこともできない。
だって、席の値段調べるついでにグッズも調べた。レプリカユニフォームは二万円近い値段で、Tシャツも四千円近い。画像をいくつか拾って見たが、タオルマフラーを振り回している。ってことは、このタオルマフラーも買わなくてはならない。一体いくらかかるんだよ!
「あ、ユニとかタオマフは心配しないでください。こっちで用意します。ご飯も広場にスタグルが出ていますし、近くにコンビニもあるので手ぶらでも大丈夫です」
なんだろう、その略語。いくらサッカー部に所属していても、現実世界の俺はサッカーとは無縁だ。日本代表の試合をテレビで見るぐらいで、選手とかも全く知らない。攻略サイトでこのゲームに登場する選手の苗字を知ったぐらいで、顔と名前も一致しない。
「そんじゃ、当日の事を色々と決めようぜ。何時にどこに集合する?」
スタジアムに通い慣れている坂本を中心に話は進められた。
5月7日の日曜日、午前10時にスタジアムに近い駅に集まることになった。そこからはシャトルバスを使う話になったが、彩夏の兄がスタジアムまで車で送ってくれるらしい。
「その日はスタジアムで大切なお仕事があるので、早めで良ければ乗せてくれるそうです」
そういう彩夏の言葉に、坂本が目を輝かせた。
スタジアムでの大切な仕事が気になったらしい。
そして時間は流れ、観戦当日。
駅前にやってくると、スタジアムに向かうシャトルバスには長蛇の列が出来ていた。サックスブルーのユニフォームを着た人や、対戦相手であるチームのユニフォームを着た人たちで溢れ返っていた。
バスターミナルの隣に送迎レーンがある。そこにワンボックスカーが止まっていた。
その車の前には背の高いイケメンと、サックスブルーの10番のユニフォームを着たポニーテールの可愛い女の子が立っていた。
「おはよ~」
美咲がその女の子に声を掛けた。
「あ、おはようございます、美咲ちゃん、すみれちゃん」
その声に聞き覚えがある。
声優にも似つかないか細い声。
俺の頭の中に黒縁メガネのおさげスタイルの女子生徒の顔がポンと浮かんだ。
「晴れてよかったね」
「絶好の観戦日和だね」
普通に話をする美咲とすみれ。
え? ちょ…ちょっとまって!
このポニーテールの可愛い女の子、もしかしてあの彩夏!?
坂本も目の前にいる女の子が彩夏と気づいたらしく、ポカーンと口を開けていた。
そりゃそうだろ。普段はいかにも【The!優等生!!】という雰囲気の彼女が、モデル雑誌に載っているんじゃないかってほど変貌しているんだから。おまけに黒縁の眼鏡をしていない。コンタクトか?
立ち尽くす俺たちを車に乗せ、スタジアムに向かった。
スタジアムは住宅街の中にある。近くには大きな企業会社があり、その会社のサッカー部が今のこのチームの前身らしい。
スタジアム前の広場は沢山の人で溢れ返っていた。
「じゃ、試合が終わったらここで待っていてくれよ」
彩夏の兄が運転席から声を掛けた。
そういえば彼女の兄はスタジアムで大切な仕事があると言っていた。今から現場に向かうのか?
「ねえ、彩夏ちゃんのお兄さんの仕事って何?」
走り去る車を見送りながらすみれが訊ねた。
「今日の前座試合に出場するサッカースクールのコーチをしてます。いまから子供たちを迎えに行くんです」
「どっかの小学校のコーチ?」
「いいえ、このチームのジュニアチームのコーチです。今日は子供たちと一緒に見るので、いつもの席のチケットが余ってしまったんです」
「え? じゃあ、家族全員コーチなの?」
「父と母、姉は今日は試合前に選手や審判団へ花束を渡す係りに選ばれましたので、他の席で見ます」
「マジで!? 羨ましーーーーー!!!!」
坂本が叫んだ。
彼が叫ぶほどだから、大きな仕事なんだろう。
「と…とりあえず、開門までには時間があるから広場でスタグルでも食べましょうか」
迫りくる坂本を避けるように、彩夏はテントが建ち並ぶ広場と呼ばれる場所に向かった。
広場には沢山の店が建ち並び、ユニフォームを着た人たちで溢れ返っていた。
「スタグルを買う前に、ユニフォームを渡しますね」
彩夏が大きなカバンの中から3枚のユニフォームを出し、俺たちの前に差し出した。坂本はすでに自分のユニフォームを持っているから用意はしなかったらしい。
渡されたユニフォームは背番号が10番だった。
「あれ? 今年のユニじゃん。わざわざ買ったの?」
坂本は俺たちに行き渡ったユニフォームを見て驚いていた。坂本如く、昔のユニフォームを持ってくると思っていたらしい。
「これは貰った物です。いつも母の経営する喫茶店を利用してくれて、練習場にも足を運んでいるので、よかったらどうぞってくれたんです」
「チームから?」
「いいえ、選手ご本人からです。ユニは毎年買っているので貰えないって断ったんですが、友達にあげてくださいってサインまで貰っちゃって…」
「羨ましいーーーーーーー!! だって、サインしない事で有名じゃん!! 価値あるよ、これ!!」
「坂本君も欲しかったですか?」
「いや、俺は推しの選手が違うから大丈夫!! 俺はこの選手推しだから!!」
坂本は背中を向けて、俺たちに背番号を見せた。彼が来ているユニフォームは3番だった。
正直、サッカーに詳しくないので背番号を見せられても誰だかわからない。選手名が番号の下にプリントされてあってもピンと来ない。
「誰?」
俺は小さな声で彩夏に聞いた。
「チームのキャプテンです。若い頃、このチームにいたのですが、一時期他のチームに移籍して、去年戻ってきたんです。とても頼れるキャプテンなんです」
「へぇ~。じゃあ、この10番も有名人?」
「はい。元日本代表の選手です。今年からこのチームに移籍してきて、とても素晴らしいゲームコントロールをしてくれるんです」
彩夏からその10番の選手の名前を聞いて、俺はやっと思い出した。
その名前なら俺も知っている。サッカー部の入部テストの時、この選手のFKをイメージして挑んだぐらいだ。よくネットの動画で見ていた。
だけどこの選手、たしか結構な年だと思ったんだけど?
現実の俺が小さい頃に日本代表だった気がする。
「彩夏ちゃんって、本当に詳しいね。試合中も色々と教えてくれる?」
感心した表情を見せる美咲とすみれに、彩夏は笑顔で「はい!」と元気に答えた。
……なんだろう、この彩夏って人、ちょっと違和感がある。
ゲームに登場しないモブキャラってこともあるんだけど、なんとなくだけど美咲やすみれとは違う雰囲気がある。
まあ、モブキャラだし、ゲームの世界の美咲たちとは違うことは分かるんだけど……なにが違うんだろう?
広場で食べ物を堪能し、このチームのマスコットだという青い鳥と戯れ、楽しい時間を過ごしていると、ゲートの前に長蛇の列が出来た。
「もう入場時間?」
「いえ、わたし達は指定席なのでまだです。今からシーズンチケットを持っている人たちの先行入場です」
「今から戦いが始まるんだよ。いかに狙っていた席を獲得できるかの戦いが…」
腕を組みながらゲートを見上げる坂本の目が遠くを見ていた。
そういえば、広場で食べ物を買っていると、坂本の仲間らしき人達が「裏切りやがったな!!」「次回、絶対にいい番号を引き当てろよ!!」と悔しそうな表情で話しかけてきた。その度に坂本は勝ち誇った顔を見せていた。
その疑問にこれまた彩夏が答えを出してくれた。
「今から入場する方たちは自由席なので、席が決まっていないんです。前日に入場する順番の抽選会が行われて、いかに早く入る為に、仲間で番号を交換し合うんです。ゴール裏は人気のエリアなので、一種の戦いと言えます」
「そうそう。試合開始前に行われるサポーターの戦いは2つあって、1つはいかに早く入場できるか、もう一つは狙った席が確保できるか……なんだよね。彩夏ちゃんもサポーターだけあって解るね~」
もう「ちゃん」呼びかよ。坂本のコミュニケーション力は凄すぎる。
「彩夏ちゃんは観戦歴何年目? オレは小さい頃から通っているんだ。なんだったらゴール裏デビューしてみる? オレたちのグループに入れば一緒に観戦できるよ」
坂本の猛アタックは、彼女を気に入った様子ではなく、たぶん彼女の母親が経営する喫茶店に来る選手目当てなんだろうな。
あ~~、いまからでもお前の未来を教えてあげたいよ。
「彩夏ちゃん、困っているね」
「助けてあげたいけど、あの勢いには敵わない」
「まるで生徒会長さんみたい」
美咲とすみれは、彩夏に迫る坂本をウザ男…もとい【自称:校内一のモテ男】の生徒会長に重ねて見ていた。
たしかにウザ男に似ている。だが、坂本はサッカーに関する事になるとウザいんだよ。普段はいい奴なんだ。どうか耐えてくれ。
彩夏はしつこい坂本を上手く交わしながら、その後を過ごした。
試合開始の一時間前になると、グラウンドに選手たちがウォーミングアップの為に現れた。
選手が現れると、ゴール裏の大旗が大きき揺れ、集まったサポーターたちから大きな歓声が生まれた。
ボックス席は真ん中に小さなテーブルがあり、それを囲むように五つの席がコの字に配置されている。両サイドは背もたれのない椅子の為、体の向きは自由に変えられる。
俺たちは時計回りに俺、すみれ、美咲、彩夏、坂本と座り、広場で追加で買った食べ物をテーブルに広げながらウォーミングアップを眺めた。
「こんなに近いんだね!」
「凄いね!!」
ボックス席二列目の席に座った美咲もすみれも、グラウンドー坂本如くピッチと言え!-に近いことに感動していた。
正直、俺も感動している。近いだけでなく、今、ウォーミングアップしている選手の中に小さい頃に見た有名人が沢山いるからだ。テレビのニュースや新聞でしか見たことはないが、これだけ多くの有名人がいることに驚いている。
「俺が小さい頃に見た有名人が多い…」
「当ったり前だろ! 皆、今の監督を慕ってやってきたんだ! それだけ監督を慕っているんだよ!」
いやいや、いくら監督を慕っていても、こんなに集まらないだろ。
「選手だけではありませんよ。サポーターも監督を慕っています。どんなに苦しい状況でも、サポーターは監督を信じてついて行っています。もし、監督を慕っていなければ、これだけ多くのサポーターは集まりません」
「彩夏ちゃんも監督を慕っているの?」
「はい! 監督が現役時代の頃から知っていますから!」
「え? 今の監督、そんなに若いの?」
「え!? あ…あの、父が昔の試合の映像を持っているので、それで見ていたんです。それに母の喫茶店にも現役時代から通っていたそうなので…」
「つまり彩夏ちゃんが小さい頃から、このチームの選手とは知り合いってこと?」
「そうです!そうです!」
彩夏の目が一瞬泳いでいたのを、俺は見逃さなかった。
ホッとした表情を見せる彼女にやはり違和感がある。何か秘密を隠してるような様子だ。
俺は気づかない振りをして、目をグラウンドーだからピッチ!!(by坂本)ーに目を移した。
目に飛び込んできたのは、背番号10の選手。俺がサッカー部の入部テストで参考にしたFKの名手だ。
さすがサッカー協会とのコラボ。選手も本物だ。
ゲームでは坂本とのWデートなどでサッカー観戦をするが、選手の苗字しか出てこない。興味がなければ特に気にすることはない。
だけど、今は俺の目の前で動いている。
俺の目の前でFKの練習をしている。
俺の目の前でボールと戯れている。
なんだろう、サッカーに興味なかったのに感動してきた!!
「ヒロちゃん、よかったね」
すみれが唐突に言ってきた。
「え? なにが?」
「だって、ヒロちゃん、あの選手のファンって言っていたでしょ? あの選手のように上手くなりたいって、小さい頃から言っていたの、覚えているよ」
「そ…そうだったっけ?」
おいおい、そういう設定かよ…。
「あれ? すみれちゃん、サッカーに詳しいの?」
「ヒロちゃんがしつこく言うから覚えちゃったの!! ヒロちゃん、小さい頃からサッカーの話しかしなかったんだもん」
ますます冷や汗が垂れてくる。
現実の俺はサッカーなんか詳しくないぞ? ここで何か知識を披露したくても何も知らないぞ?
「でも、ヒロキ君、部活を掛け持ちしているよね? なんでサッカーと関係ない演劇部に入ったの?」
「体力作りの一環だよ。演劇部に男児部員が少ないから、手伝っているだけ」
言えない…本当は文化祭の学園演劇で主役をやりたいだなんて……。
「美咲ちゃん、ヒロちゃんは小学校の学芸会で三年連続主役をやっているんだよ」
「本当に!?」
「4年生の時に『シンデレラ』の王子様、5年生の時に『かぐや姫』の帝、6年生の時に『ロミオとジュリエット』のロミオをやっているの」
そんな設定、俺は知らない!!!!
俺、どれだけ偉大な過去を持っているんだ~~!!??
「で、その時のお相手はすみれちゃんなんだね?」
「それがね……一度も相手役には選ばれなかったの。大人しかったし、人前に出るのも苦手で、舞台袖からヒロちゃんをずっと見ているだけだったの。クジ運も悪かったし…」
「クジ?」
「ヒロちゃんはクラスの人気者だったから、すぐに主役に選ばれたの。でも相手役を希望する女の子が多すぎて、最終的にはクジで決めたんだけど、わたし、いつも外れだったの。一度ぐらい相手役に選ばれたかったな」
おいおいおいおいおい!! 俺の子供時代ってどんな子供だったんだよ!!!
しかも大きなフラグが立っているし!!
2年後の文化祭の学園演劇、美咲とは『シンデレラ』、すみれとは『ロミオとジュリエット』を演じることになっているんだよ!! さすがに『かぐや姫』はまだ出てきていない恋愛対象キャラとの演目だから回避できそうだけど、そんな大きなフラグを立てないでくれ~~~!!!
「ヒロちゃんと同じ演劇部に入っていたら、相手役になれたかな?」
すみれはそのままチアに専念してくれ。でなければすみれとの恋愛イベントが発生しなくなる。すみれのイベントは全部チア関係なんだから!!
「じゃあ、2年後の文化祭を狙ったらどう?」
「文化祭?」
「3年生の有志による学園演劇があるのよ。それに選ばれるように今から頑張れば、もしかするかもね」
美咲様、余計な事を言わないでください。俺はあなた様が大本命なんです。あなた様との恋愛イベントを発生させてください。
まあ、ゲームでも美咲はすみれの恋を応援しながら、主人公の事が好きになっていくキャラなんだよね。序盤はお友達、後半は親友に遠慮して、自分の本当の心に素直になれない可愛いキャラ。
だからこそ! あの美しいエンディングが生まれるんだよ!!!!
あの美しいエンディングを見てみたい!!!
……そういえば、すみれとのエンディング、覚えてない……。
恋愛イベントは覚えているんだけど、エンディングを思い出せない……。
試合は2-1で勝った。
でも、すみれとのエンディングのことが気になりすぎて、試合内容は覚えていない。
坂本がかなり興奮していたから、2ゴールとも素晴らしいゴールだったんだろう。
でも、覚えていない……。
こうしてゴールデンウィークは終わってしまった……。
<つづく>
2020年4月20日 彩夏の口調を変更しました。