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箸休め系男子の恋愛事情〜学校一の美少女が俺に告白してきた〜

作者: ながシート

突発的に書いた無茶苦茶なラブ(?)コメです


なあ、お前。そう、お前に聞いてる。『モテる』の基準はなんだと思う?たくさんの異性から告白されることか?それとも自分の狙っている相手を漏れなく落とせることか?


いきなりこんな質問してごめん。俺としては、モテるとは、不特定多数の相手から『付き合ってもいいかな』と思われる存在であることだと思う。その基準で言うならば、俺は結構モテるほうだと自負している。

とあるクラスのボス女子曰く。

「自分から告白しようとは思わないけどぉー、あっちが告ってきたら付き合ってもいいよぉ?2番目だけど」。

これまたとある人気の高い先輩曰く。

「んー。まー可愛い後輩かなあ。ありっちゃあり。キープってとこ」。


…なかなかにひどい言われようである。だが妥当といえば妥当だ。身だしなみには気を使っているが特別イケメンというわけでもなし。細身ではあるがスタイル抜群なわけでもなし。勉強は出来なくないがそれなりに進学校であるこの高校で言えばよくて中の上。運動神経はそこそこ。彼女らのような目立つ人々から特別好かれるような特筆すべき点はない。


しかし、重要なのはそこでは無い。光栄なことに『俺がその気なら遊んでやっても構わない』という評価は貰っているのだ。それを利用しないテは無い。


どうやって利用するか。それは、彼女らが何となく寂しい時や、次の彼氏ができるまでの間。好きな人に振られた時の慰めになる人物が欲しい時や、パーッと遊びたい時。そんなタイミングを利用して自ら『箸休め』になるのだ。お陰で生まれてこの方女性に不自由したことは無い。頭が回る訳では無いが、口がうまいのも理由の一つだろう。


我ながらゲスいやり方だとは思う。要するに自分から進んでキープもしくはセフレになりに行くということである。褒められたやり方ではないし、一部の男子からは僻み半分で貶されることもある。実際俺も彼女らもそれで満足しているのだから、外野にはなんとでも言わせておけばいい。


幼なじみの品川征樹が、とある人気の先輩から熱烈な告白を受けているのを教室の窓から眺めながら、俺はそんなことを考えていた。ちなみに、品川征樹は俺にたくさんの『お零れ』をくれるイケメンであり━━もちろんその事を征樹は気づいていない。なぜなら王道鈍感主人公系イケメンだから━━、人気の先輩はかれこれ俺のオトモダチ歴2年になる女性である。

彼女の恥じらうように身をくねらせる様子からすると、

━━━

「告白成功したみたいだね」

あとに続く言葉を引きとったのは、かの先輩や幼なじみさえ凌駕する勢いでモテている、学校一の美少女だった。彼女のような真正の『モテ人間』にとって俺の出番は必要ないだろうと思って俺は彼女の名前すら知らないが。クラスも違うし。そんな彼女がいきなり俺に声をかけてきたことに驚きながらも、俺はそれを表に出さなかった。

「そうだね。征樹も今度は長続きすればいいな」

僅かに微笑みながら返すと、彼女らは驚いたように

目を大きくした。

「澤野くんはそれでいいわけ?」

どうやら彼女は俺の名前をご存知らしい。学校一の美少女にまで俺のクズい話は出回っているのだろうか。それとも、同じ学年の人間の名前は直ぐにおぼてえしまうタイプの頭の出来がよろしい人間なのだろうか。

後者であることを切に願う。

「…なにが?」

「いや、綾坂先輩って、澤野くんの彼女なんじゃないの」

どこでどう間違ったのか分からないが、彼女は勘違いをしているようだった。というか、そもそも表向き清純派の先輩とクズとして知られる俺に関わりがあるのを知っている人間は、居ないはずだ。

全く、どういうことか。

「ごめん、なんでそんな勘違いしてるのかは分からないけど、先輩は俺の彼女じゃないよ。彼氏がいるのにふつう他の男に告白しないでしょ」

俺がそう言うと、彼女は少し考えるように1度目線を伏せると、また視線をこちらに戻して、言った。


「つまり、澤野くんは彼女でもない人とヤっちゃう人ってことなの?」

「は?」

「月曜、放課後、旧館三階歴史準備室」

そこは、4日前に俺が先輩と致した場所だった。そういえばあの時は近くに足音が聞こえていたかもしれない。

「……そういうことになるかな」


どこまでも無垢そうな彼女の唇から『ヤっちゃう』なんて言葉が出てきたことに軽く狼狽している間、彼女はなぜか、うんうんと相槌を打っていた。

「澤野くんは軽い人なんだね。でもまあいっか。わたし、澤野くんのことが好きです。良ければ付き合ってください」



……どうしてこうなった?





「……今の話の流れで付き合おうってなる?あと、俺君の名前も知らないんだけど」

「あっ、自己紹介もせずにごめんね。わたしは8組の飯野紗良です。好きな物は澤野くんとチョコミントです。部活は帰宅部で、趣味は…なんだろ、舞台鑑賞かなあ」

「…えーと。いきなりどうして俺に告白したの?」

「いきなりじゃないよ!っていうか放課後にクラス違う人間がわざわざ澤野くん1人しか居ない教室に来てることに違和感持ちなよ。絶対告白の流れでしょ」

「そもそも話しかけられるまで飯野さんに気づいてなかったんだけど」

「ええ!澤野くんの後ろの席に座って10分以上澤野くんの背中を見つめてたのに?5分間耳に息をふきかけ続けてたのに?気づいてなかったの?!しかもココ最近毎日澤野くんのこと放課後つけてたのに!ほんとに分かってなかったの?!鈍っ!」

「そんなことしてたの?!」

やばい。いくら美少女といえどこんなやばいやつと付き合うなんて考えられない。

「ごめん、そんな変t…いや、ストーカーみたいな人とは付き合えないかな」

「うん?なにも言い直せてないけどね?むしろ悪化してるよ?…まあいいよ、変態的なストーカー行為をしてることは重々わかってるならね」

神妙そうな顔でツッコミを入れ、そして勝手に納得している飯野さん。本当に変な人かもしれない。


「まあでも、それくらい澤野くんが綾坂先輩に夢中だったってことか」

妬けるなー、と口をとがらせて彼女は続ける。

「この高校に入学してからの4ヶ月間、弛まず澤野くんを観察してきたわけで、澤野くんは彼女が沢山いるモテる人ってのは分かってた……まあそれもただのセフレの方々だったわけだけど。でも、澤野くんは綾坂先輩とする日だけはいつも忠犬ハチ公よろしく待ち合わせ場所でずっと待ってるし。ドタキャンの連絡が来るまでずっと。他の子との予定はテキトーなのにさぁっ…」


不意に言葉が途切れた彼女を不審に思って顔を向けると、なんと彼女は泣いていた。

「ううっ、がなじいよねぇ!ずぎなひどに振り向いでもらえないのっでぇぇ!ずびっ、」

「えっ?飯野さん?」

「自分は大好きなのにぃい相手には、ひっく、ただのセフレにしか思われないなんてぇ!辛すぎるよおお!健気すぎるよおおお、ずびっ」

「いや、綾坂先輩はかなり長い付き合いなだけで…別に好きなわけじゃないんだけど……大丈夫?」

「ええっ…?!でもなんが、ずびっ、いづも先生といる時はあっ、だのしそうだしぃ、ひっく、それに!」

「…それに?」

「綾坂先輩にだけはキスするじゃん!!」

ひっく、と赤くなった目で見つめてくる彼女はかなり扇情的で、変態ストーカーだというのに不覚にもときめいてしまった。しかし、彼女の言った言葉は看過出来ないものがある。

「ちょっと待って。飯野さん、俺らがしてるとこ、覗いてたの?」

飯野さんはピシリと効果音が付きそうなほど硬直した。

「ぁ、ひっく、い、いやぁ!なんてゆーかぁ!見るづもりはながっだんだげどぉ!すごしくらいいいかなっていうか〜、ひっく、目に入ってしまったような気がしなくもないどいうか……ずびっ」

「つまり見たんだ?」

「うっ、ごめんなざいぃっ」

一転して顔を真っ青にして謝る彼女があまりに不憫で━━俺も大概女には甘いのかもしれない━━許すことにした。

「あー、別に気にしてないからさ。でももうストーカーみたいな事しないでね?」

「ひっく、それはいやだああ!許さなくていいからつけさせてえええ」

「えぇぇ……」

もう困惑するしかない。これは、どうしたものか。

「ううっ、でも、澤野ぐんが私と付き合っでぐれるなら、ストーカーじまぜん!」

「いや、それはないかな」

「うわあああん!」

ストーカーと付き合うのはさすがに身の危険を感じるからな。別れる時とか泥沼そうだし。

それに。

「なんで俺なわけ?飯野さんならそれこそ征樹ぐらいの奴とも付き合えると思うんだけど。ストーカーしてた飯野さんなら俺のクズさわかったんじゃないの?」

俺がそう言うと、彼女はキッとこちらを睨みつけるようにして言い返した。もう泣き止んだようだ。

「澤野くんはクズじゃない!!軽そうに見えて実際軽いけど純愛な人だもん!」

「だから綾坂先輩はそんなんじゃないってば」

「嘘だ!キスするのも誕生日プレゼントを上げるのもやった後の甘々な時間をたっぷりとるのも綾坂先輩だけだった!何より目が違う!さっき綾坂先輩が告白してるのを見ていた時の自分の顔、どんだけ辛そうだったかわかってるの?!」

「……」

そう言われてみれば、確かに俺は先輩が好きな気がしてきた。思い返してみれば、俺の綾坂先輩に対する態度は『クズ』を自負する俺らしくないものばかりだった。

先輩が楽しそうだと楽しい、先輩が彼氏と別れると嬉しい、先輩が気持ちよさそうだとそれだけで満たされる━━━

今初めて気持ちを自覚した。

俺は、先輩が、好きだ。


「ちょっと、澤野くん?顔ものすごい赤くなってるよ?」

こうしちゃいられない、早く、先輩のところに行かないと。『俺は先輩が好きだ』って、言わないと…っ

「私、もしかしてすごく余計なことしちゃった…?

あっ、ちょっと待って、行かないでえええ!」


自分の教室を飛び出していそいで中庭に向かうと、そこにはまだ2人がいた。

「先輩っ!」

「あれ、きょ…澤野くん?」

「お、京介。どうしたんだよ」

「…先輩、俺、先生のことが好きです。セフレじゃ満足できないです!征樹じゃなくて、俺と付き合って…!」

「はあっ?!何いってるの?!」

「そうだぞ、京介。先輩は俺が好きだって今告白してきたばっかりなんだよ。お前の入る隙はねえよ!」

サッと前にでてきた征樹が先輩をかばうようにして立つ。

「それに、先輩がセフレなんているわけねえだろ!妄想もいい加減にしろよ!」

「そ、そうよ!せ、セフレなんて不潔だわ!」

先輩は酷く動揺して普段のクールさが失われている。初めて見る表情だ、と俺は状況も顧みずときめいていた。

「先輩っ、4日前だって…っ俺、ずっと待ってて、それで先輩が来てくれてっ」

ばしん。

それは征樹が俺の頬を平手打ちした音だった。

「いい加減にしろよ!俺、お前がこんなやつだと思わなかった!頭冷やせよ!…行こう、先輩」

「え、ええ、そうね」

征樹は先輩の腕を引いて去っていこうとした。

「っ待って……!」

追いかけようとした俺の手が、ずい、と引っ張られ、俺は盛大に転んだ。

「痛っ」

一緒に転んだのは、飯野さんだった。

「飯野さん、また、いつの間に…」

「もう!急に行かないでよ…」

眼をうるうるとさせて上目遣いに俺を見つめる飯野さん。

「普段の去るもの追わずな態度はどうしたの!ほんと、綾坂先輩のこととなると途端におかしくなる!」

「いや、飯野さんほどおかしくないよ。あと、手離して。2人を追いかけるから」

「やだ!絶対離さない!」

飯野さんは今度は抱きついてきた。

「ごめん、俺綾坂先輩が好きだから」

「私だって澤野くんが好きだもん!綾坂先輩…マナちゃんの家に澤野くんが来たのを見かけてから!ずっと!一目惚れだったの!マナちゃんの彼氏だからって諦めてたけど、そうじゃないならもう遠慮する理由ないもん!!」

「…一目惚れなんて、べつにイケメンでもないのに」

「私にとっては上の上、もはや神のレベルでタイプなの!パーツは整ってるけど華がない顔立ちとか!中性的でおっとりした雰囲気とか!思春期男子そのままって感じのテノールボイスとか!もう!タイプなの!あとその卑屈だけど周りを舐め腐ったような性格もツボなの!」

「いや、全く好かれてる感じがしないんだけど」

「好きなの!澤野くんは私の事好きじゃなくてもいいから!澤野くんが他の子女の子にしてきたみたいに、利用していいから!付き合ってよ…っ!」

しかしさすがに自分の気持ちを自覚してまもない今、「じゃあ付き合おう」と言える程に器用でもない。

俺、実は青かったんだなあ。

「付き合えないよ。もう女の子たちのことを今までみたいに利用したりしないし、俺は先輩が好きだから」

「っっ!やだあ!」

一層きつく抱きしめてくる飯野さん。

「いい加減、しつこいよ」

「このまま追いかけようとしてる澤野くんに言われたくない!!」

おっと、今度は俺がブーメランだった。


「あっ、そうだ!」

飯野さんは必死に俺にしがみつきながら片手でスマホを操作し始めた。

指の動きからすると、電話かもしれない。

「あ、もしもし、マナちゃん?!」

「え、飯野さん、先輩に電話してんの?!ちょ、変わってよ」

しかし彼女はこちらの言うことは全く聞いていないようだ。

「ねえ、マナちゃん、今澤野くんがマナちゃんに告白してきたでしょ?!それね、間違いだから!澤野くん私の彼氏だから!ごめんね私たちのことで迷惑かけて!…うん、ほんとごめっ…っ」

飯野さんの口を封じながら彼女が落としたスマホを拾おうとすると、彼女はなんと自分の足でスマホを蹴飛ばした。校舎の壁に強打したスマホは、バキャリと音を立てて画面を暗くした。

「よしっ!」

「いやっ?!良くないよね?!スマホ大破したよ?!」

「スマホの安否より澤野くんとマナちゃんとの会話を繋がずに済んだことが大事なの!」

「いや、スマホでしょ?!スマホ壊したらダメでしょ?!」

「現代の学生にとっての生命線であるスマホを無くしてでも澤野くんを手に入れたいの!」

「飯野さんのスマホが無くなっても俺は飯野さんをすきにはならないよ?!」

そう言うと、またじわじわと彼女の涙腺が崩壊し始めた。

「ああぁっ…飯野さん泣かないでっ」

「ひっく、やだあ、澤野くんが付き合ってくれるって言うまで泣くもん!!」

駄々をこねて縋り付く彼女は可愛い。が、それとこれとは別である。


その時、中庭に現れたのは、俺の担任、山下かずこだった。かずこは、そんな押し問答を繰り返している俺たちを見つめていた。そして彼女は顔を激しくゆがませた。


「澤野!あんたね!男なら女に恥かかせんじゃないわよ!さっさと付き合いなさい!」

「んな、横暴な」

「こっちはねえっ!どんだけ男と会おうが見合いをしようが結婚しても良さそうな男なんか見つかんないのよ!たまにいても結婚詐欺師だったわよ!飯野さんみたいな超優良物件に好かれてるうちにどうにかしないとあたしみたいに売れのこんのよ!いい加減にしないと評定下げるわよ!」

「ええぇぇっ…」

「ね、付き合ってよお!」

「付き合いなさいよお!」

「澤野くん~!!」

「澤野おぉ!」

「好きなのおおおおおおおおおおおお」



「もうやだああああああああぁぁぁ」


いくら俺がクズだからって、この仕打ちはひどすぎません?()




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