イケメン登場!
山本の言う通り、振り向くと今話題にしていた、イケメン2人が立っていた。先程目線で挨拶した2人だ。
「うわ!びっくりした!」
俺は、驚いたふりをする。
「ど、どうしたんですか?」
俺は、少しイケメンにおどおどした雰囲気を出す。多分、モブだったらこんな風にビビるだろう。まあ、俺はならないけど。
「よお、桜木。さっき目があってびっくりしたぜ。同じ中学のやつがいるとは思わなかった。また、3年間よろしく!」
背が高い方のイケメンが言う。
「ぼ、僕も、まさか雨宮くんがいるとは思わなかったよ。3年間よろしくお願いします」
やっぱり、モブはイケメンに対して丁寧語で話さないと!
「俺は、初めましてやな。春斗、あ、春斗ってこいつのことな、の親友の神山逹樹や。よろしく」
関西人なのか、関西弁だ。
「は、初めまして。桜木俊と言います。よろしく」
初めてのイケメンにはさらに萎縮した感じを出して挨拶をする。そんな風に挨拶をしていると、さっきまで口をポカーンと開けていた山本が会話に加わってきた。
「俊、お前、イケメンと友達だったのか?」
「と、友達じゃないよ!中学が一緒だったってだけで!」
俺は焦って言う。これは大切なことだから、言っておかなければならない。イケメンと友達なんてことになったら、モブじゃなくなる!
「そ、そうか、分かった。俺は、山本聡だ。さっき、俊と友達になった。よろしく」
「俺は、雨宮春斗。桜木と同じ中学だった。よろしく」
「よろしくな、聡」
2人はそう言ってニコッと笑った。おう、眩しい。隣の山本も少し苦笑いしている。
まぁ、こんな茶番は置いておいて。
おい!なんでお前ら入学式初日に話しかけてんだ!辞めろって言っただろうか!知り合いってなったら俺のモブ的立場が終わるぞ!どうしてくれんだ!まだ、俺のことをいつもの通り俊って呼んでなかっただけマシだが……いや!そもそも、話しかけてくるなって言ったのに、何で話しかけてきてるんだよ!
何となく察してはいるだろうが、こいつらは俺の親友たちだ。春斗が小学校からの親友で、逹樹は中学からの親友だ。
雨宮春斗。身長は182センチととても高い。成績も良く、運動神経も抜群で中学のときはバスケットボールでエースをしていた。もちろん部長だった。シュートを決めれば女子から歓声が上がるのは必然という男だ。もちろんモテる。
神山達樹。中学校の時、イケメン同士で意気投合した。逹樹はバレーボール部だ。身長は俺と同じくらいで175センチ前後にも関わらず、中学ではエースだった。ジャンプ力がすごい。メートルジャンパーっていうやつだ。関西出身でなまっている。ちなみに俺も春斗も関西出身だがなまっていない。関西出身で関東育ちだ。もちろんこいつもモテる。
2人には、自分の悩みについて相談し、協力してくれるはずだった。はずだったのに……。なんでお前らがここにいるんだ!
俺は、そんなことを思いながら、キッと2人を睨んだが、2人は俺のことなんかどこ吹く風とニコッと笑っていた。
おい!その、ニコッっていうの辞めろ!なんか腹たつ!
俺が内心イライラしているのが伝わったのか、
「じゃあ、また。入学式頑張ってな」
「またな。入学式楽しみにしてんで」
2人はやっべみたいな顔をしながらも、俺のことを煽りながら、ニヨニヨして帰っていった。
ふざけるなよ!あいつら本当に俺に協力する気あるのか!
そんなことを考えているとも知らない山本は、呑気に俺に聞いてきた。
「お前、まさか、イケメンと知り合いだったとは。驚きだぜ。そういや、俊、入学式で何かするのか?」
そんな山本に、イラッとしながらも、山本は何も知らないんだから抑えろと、自分の心のなかで、叫びたい衝動と戦っていた。入学式始まる前からそうそう疲れるわ……
でも、やっぱり入学式の挨拶に緊張していたのか、2人と話したことで少し楽になっていたことに気がついた俺は、2人にそっと感謝していた。