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歴史改変戦記 「信長、中国を攻めるってよ」  作者: 高木一優
第一部 信長様の大陸侵攻なり
19/98

19、南北朝

 上杉景勝が北京に入城し、徳川家康と合流した。ここに退却してきた島津・伊達の兵が加わった。

 徳川家康を総大将とする軍団は海王朝の旗を掲げて進軍した。

 「しん」と「はい」、二つの王朝の決戦である。

 この時の家康には驕りがあった。なにしろ朝鮮半島以来、連戦連勝だったのだから仕方がないのかもしれない。島津義弘や伊達政宗が満州騎兵の恐ろしさを説いても、聞こうとしなかった。

 「島津殿、この度は大軍ぞ、安心召されよ。」

 「伊達殿、そこもとはまだお若い、ここはこの家康の采配、とくと御覧じろ。」

 くらいのことは言ったかもしれない。

 また、家康と上杉景勝の間には軋轢があった。

 信長に心服する景勝は、北京において家康が謀反企んでいるのではないかとの疑いをもっていたのだ。


 家康が率いる軍の足並みが揃わない。軍団に精彩がない。

 軍事には素人の私にもそれが分かった。

 戸部典子もうすうす感じていたのか、不安げな顔をしている。


 上杉景勝は不満げな顔をしている。島津・長曾我部両軍の救援に来たはずなのに、いつの間にか家康の軍団に従って行軍していることが気に入らないのだ。この男は生来の口下手くちべたである。家康に丸め込まれたとの忸怩じくじたる思いがある。

 島津義弘は泰然たいぜんとしている。この男の胸中は読めない。

 伊達政宗は満州騎兵に一矢報いたいと、いきりたっている。

 徳川家康。この男は無能ではない。ただ、あまりにも日本人的なのだ。家康のスケールは日本列島を出ることがない。大陸の巨大な状況が読めていない


 それみたことか、満州騎兵の登場だ。鶴翼の陣形から神速の騎馬軍団が徳川軍を取り囲んでいく。しまった、と思った時にはすでに遅しだった。満州騎兵が一本の槍と化して突入している。

 「それは島津義弘君の戦法なりぃ。」

 ヌルハチは島津戦法を取り入れていたのだ。戸部典子が実に悔しそうな顔をしている。

 徳川家康の本陣が破られた。逃げまどう家康の姿は無様だった。

 戦闘の趨勢は決した。

 島津義弘は、上杉軍と伊達軍を糾合し再び突破の陣形をとった。

 前回の島津軍の突破力の恐ろしさを経験していたヌルハチは、包囲網の一角を解いた。島津の死を恐れぬ猛攻で、無駄に兵を失うものではない。

 島津、上杉、伊達の三隊は戦場を離脱した。


 「ヌルハチ、分かっとるやんけ。島津義弘君はおっとろしいなりよ。」

 戸部典子の関西弁だった。おまえ関西の出身だったのか。

 「生まれも育ちも、京女きょうおんななり。」

 やめろ、京都が腐る。


 徳川家康は命からがら落ち延びた。この逃走中、家康は恐怖のあまり馬上で脱糞だっぷんしたと伝えられる。これも奇妙な歴史の復元力なのかもしれない。

 中原に勢力を拡大し、あわよくば海王朝の簒奪をも画策していた家康の野望はあっけなく潰えた。


 ヌルハチは北京入城を果たし、ここを首都に定めた。

 北に「しん」、南に「はい」。

 二つの王朝が並立する南北朝の時代となったのだ。


 このころ中国人民もようやく理解していたのだろう。中国の覇権をめぐってにらみ合う勢力は、どちらも異民族だとういことを。そしてどちらが勝っても征服王朝が建つのだということを。

 だが、中国人たちは征服王朝には慣れているのだ。異民族の支配を受けても異民族そのものを取り込んで拡大したのが偉大なる中華文明なのだ。この理解の仕方は日本人の及ばぬところだ。

 清が勝つか、海が勝つか。巷では賭けの対象にさえなっていた。


 韓国は相変わらずだった。ヌルハチを応援する「ヌルハチ・サポーターズ」なるものが結成され、いつの間にかヌルハチは満州人ではなく朝鮮人だとされた。Tシャツやフィギァなどなど、韓国ではヌルハチ・グッズが大流行し飛ぶように売れていた。

 もちろん、ヌルハチ・グッズを生産していたのは世界の工場、中国である。

 中国人たちはこのブームを予想して、ヌルハチの商標権をすべて押さえていたからだ。

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