表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/32

第一部 ローウェル子爵領 平穏な?日々 01

 過去に戻って半年が過ぎた。


 朝夕のランニングはずいぶん慣れてきて、近頃は5周ずつ走っている。

 脂肪の塊だった身体もデブから少しポッチャリ気味、程度に絞られてきている。

 それでも元が元だったもので、まだまだポッチャリではあるのだけど。


 だが、確実に体力はついてきたと思う。

 たまに行う乗馬の練習も一日で暗くなる前に領内全てを回ることができるようになってきた。

 以前なら3日はかかっていた距離だ。

 馬が、とかスピードとか、技術的なものではなく、以前の俺には一日馬を駆るだけの体力も根性もなかったという理由で。

 ま、とりあえず。


「これで先に進めるかな?」


 俺は走らせていた馬を止めてじっくりと周りを見回した。

 ウチは辺境の山沿いにある土地だから、少し馬を走らせると人里一つない山の中や裾野の森に入り込むことができる。

 特に今いるような場所は大人でも一人では近づかない。

 ちゃんと来る途中に『この先獣魔出現キケン!立ち入り禁止!』って立て札もあったしね。


 獣魔っていうのは獣が魔素に侵されて魔物化したもので、ダンジョンの魔物とは根本的に別物である。

 見た目も普通の獣が二倍程大きくなったり本来角を持たない獣に角が生えてることがあるくらい。

 魔物のように魔法を使用したり個体によっては武器を使用したりなんてのもない、あくまでもただの獣だ。

 魔素の強い自然の多い場所によく現れる。

 逆に化工されたものが多い人里なんかには少ない。

 王都みたいな都会に住んでる人だと生まれて死ぬまで見たことがないなんて人もいるらしい。

 田舎者からしたら羨ましい話である。

 獣魔は普通の獣よりも寿命は短くて数ヵ月ないくらいだけど、普通の獣よりもずっと狂暴で危険だから。

 一度でも獣魔が出た場所はそれを討伐してもまた別の個体が獣魔化することが多い。

 そのためここみたいに立て札を立てたり、より危険視される場所だと完全に柵で封鎖されたりする。


 最も今の俺みたいに人目につきたくない人間には都合のいい場所だ。


 俺は過去に戻る際『アイテム』と『スキル』を一つずつ持ち帰っている。

 けど、これまで一度も使用はおろか確認すらしていない。


 何故か。


『アイテム』にせよ『スキル』にせよ発動させるにはそれなりの魔力や生命力が消費されるからだ。

 半年前の過去に戻ったばかりの俺では使用どころか発現させるだけでぶっ倒れていたのは間違いない。


 朝夕のランニングは引きこもり解消とこれらを発現させるための体力づくりであった。


「さて、まずはスキルかな?」


 俺が持ち帰ったアイテムは魔力を膨大に喰う。

 今の俺の魔力量ではまた使えない。


 馬を適当な木に繋いで、しばらく歩く。

 歩きながら頭のなかで俺が持ち帰ったスキル『鑑定』を発現させる。


 ……うぐっ!

 やっぱりまだキツいか。


『鑑定』を発現させた途端目眩と頭痛で地面に突っ伏した。

 発現だけでこれでは、発動させたら頭を抱えて転げ回るはめになりそうだ。


 スキルってのはこの世界の人間なら誰もが一つは持っている。

 ただし赤子がスキルを使用することはない。

 身体がきちんと出来上がっていない子供のうちにスキルを使用してしまうと、倒れるどころか寿命を縮めることだってある。

 そのため本来なら14才で成人の儀を教会で受けるまではスキルは発現せずに核として眠っているものなのだ。


 俺が14才で発現させたスキルは二つ。

『錬金術』『合成』

 これらはまた14才の成人の儀に発現されるはずだ。


 今俺が発現させた『鑑定』はダンジョンマスターになってから得たスキルで、まあゲームやチートもののラノベなんかでは定番だろう。ダンジョンマスターになって自身にスキルを付与できるようになってすぐに発現させたんだけど、最初は「なにこのクソスキル」な能力で。


『鑑定』


 頭のなかで発動させると、視界に入る物全てに文字が浮かび上がる。


『土』『土』『石』『草』『草』『土』『木の根』


 なんて感じだ。

 頭痛に吐き気に目眩ときているところに文字の氾濫。

 もうマジ気持ち悪い……。


 いったんスキルを解除して地面に転がった。

 久しぶりの感覚。

 前の時も初めて発動させた時はこうだったな。

 人目のない場所にしておいて良かった。

 誰かに見られたら騒ぎになってるところだ。

 子供がいきなり苦しみだして倒れたってね。


 あまり知られていないけどスキルってのは成長する。『鑑定』のスキルはそれが特に顕著でレベルの低い内はほとんど役にたたない。その分成長していけばこれナシではやっていけないというほどのお役立ちスキルに変貌する。

 けどレベルを上げるにはスキルをとにかく使い続けるしかない。


「……うぷ」


 頑張れ!

 頑張れ!俺!


 よし、やるぜ!『鑑定』!!


「$&#¥*%#&¥>¥@$#>~*」


 ダメだ。


 ……死ぬーー。













サブタイトルを間違えてたので修正しました。

失礼しました。(最初レグザリア領だったのを→ローウェルに変更したのですが、記録に残ってたのを過って使っちゃてましたん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ