第二部 王立学校魔法科 冒険者ギルド
「……おおお!」
とある建物の前で俺は感動にうち震えている。
前世ではゲームや小説のなかでおなじみだった。
けど異世界で記憶を取り戻してからもこれまで来る機械がなかった、冒険者ギルドである。
周りと比べて一回り大きい煉瓦造りの三階建ての建物。
この世界は重機がない。
その上鉄はあっても鉄筋コンクリートなんてものもないから、三階建ての建物というのは珍しい。
ローウェル子爵領にはもちろんなかったし、フォルテの街でも学校の校舎と寮、その二つしか見かけていない。
貴族科の校舎も朝のランニング途中に多分あれだろうなって建物は見かけたけど、そちらは敷地の広さは魔法科の倍以上ではあるが建物自体は二階建てのものだった。
俺は高鳴る胸を押さえながら開かれた両開きのドアの中へ足を踏み入れた。
まんまイメージ通りだ!
もしかしたら日本で最初にギルドという組織を登場させた人間は異世界転移してまた日本に戻っていたのではないか。
そう思えるほど、ギルドの中はゲームや小説のなかに描かれているものそのままだ。
壁には一面の依頼書。
奥のカウンターには美人な受付嬢たちが並ぶ。
そこに並ぶ大勢の冒険者たち。
俺はおのぼりさんよろしくきょろきょろ辺りを見回しては小さく感動の声を上げた。
そんな俺の様子に近くにいた二人連れの冒険者がくすくす笑い声を上げる。
その声に俺はハッ!となった。
ヤバイ。
初めてのギルド訪問っていうとちょいチンピラな先輩冒険者に絡まれるのがテンプレではないか。
が、こちらを見て笑っているのはなかなか美人なお姉さん二人組みだ。
剣士らしい背中に大刀を背負った簡素な鎧の黒髪美人。
魔法師らしい灰色のマントに何故か下はホットパンツの赤毛美人。
これならちょっと絡まれてもいいかなあ、とか思う。
「坊や登録に来たのかい?」
剣士のお姉さんが身を屈めて問いかけるのに、俺はコクコクと頷いた。
目は屈んだおかげでふにゅっと軽くつぶれたでかすぎる胸の谷間にクギズケだ。
一応鎧を着てるけどその中が胸元の開いたインナーなもんだから胸当ての隙間から丸見えなのである。
「ふふ、可愛い。登録は二階のカウンターだよ。ほら、あっちの階段を上がってすぐ」
お姉さんは向かって右手にある階段を指差して言った。
なんていい人だ!
美人で親切とか素敵すぎるよ!
惚れちゃうよ?
「サーニャはまた初物喰いする気か?ホントに好きだよな!」
なんですと!
近くにいたオッサンのセリフにピーンと背筋が伸びた。
是非!
是非お願いします!?
「ばか、さすがに子供すぎるよ。また、二、三年経ってお互いまだ生きてたら楽しもうね、坊や」
ふふ、と意味深に笑いながらサーニャさんと魔法師のお姉さんがカウンターに向かっていく。
俺はちょっぴり残念でガックリ肩を落としながらも心に誓った。
ーー何がなんでもあと二年生き延びてみせる!
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冒険者登録は拍子抜けするほどアッサリとわずか10分ほどで終わった。
冒険者証になる銅製のブレスレットを左手首に嵌め、ギルドで渡された冊子を読みながら人の多い大通りをぶらぶら歩いている。
えーと、冒険者ランクはFからSSまであってFからDまでは銅製のブレスレット。CからAまでは銀製、Sは金、SSは黒金か。
冒険者初心者である俺は当然ながらFである。
ギルドの依頼を達成したり、ダンジョンの魔物を討伐したりすることでランクが上がる。
これもよくあるギルドの定番な設定だな。
DからC、あるいはAからS以上に上がるには試験があって、SSとなると世界でも数えるほどしかいない。
この国だとノエルのお祖母ちゃんシェリル・グランドを入れてたしか三人。
うーむ、やっぱりノエルのお祖母ちゃんはスゴい。
何故そのSS級冒険者の孫がああなるのか。
世の中摩訶不思議で溢れている。
そんなことをつらつら考えながらも俺の足はまっすぐに街の中心、ダンジョン入り口に向かっている。
ダンジョンには冒険者証を提示するか、兵士証を提示しないと入ることができない。
俺が冒険者証を得たのはその為だ。
といってもF級冒険者が入れるのはわずか三階層まで。
金を稼ごうと思えばさっさとランクを上げてより下層に潜っていかないといけない。
俺の場合、金もまあ欲しいことは欲しいけど、それ以上に『ブラック・カーテン』による魔物喰いが目的。
魔物を喰らって力をつけることが最優先事項だ。
なので、しばらくは上層で充分かな。
より強い魔物を喰らった方が確かにステータスは上がるが、魔物は同じ種類のモノでも個体によってスキルや魔力量が違っていたりするから、とにかくまずは数を稼ぎたい。
『ブラック・カーテン』を他人に見られるのもマズイし。
皆が大挙して押しかける三階層以降より、初心者がちょろちょろしてるだけの上層の方が都合がいいだろう。
「とりあえずどんな感じか確認だな」
今日のところは一階層を軽くブラブラする程度。
なんだけど。
ーー緊張するなー。
そういえばダンジョンマスターとして冒険者を魔物に撃退させることはあっても、俺が冒険者としてダンジョンに入るのは初めてなんだった。
俺はドキドキしながらダンジョン入り口の前で警備と受付をする兵士たちの前に足を向けた。




