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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第4章 落日の哀歌
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第90話(4-6-3)

彼女の咆哮を聞いたクレッシェンドは演奏を止め目を丸くしていた。

空間がきまずい沈黙に包まれる。


それから少し経った後、クレッシェンドが不意に口角をクイっと上げた。



「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」

そして、それはそれは楽しそうにお腹を抱えて大笑いを始めた。

私ははてなと恐怖で顔を引き攣らせた。



「あははははは、あんたら、最高だよ。本当に最高。何で『魔女』と『テンプル騎士団』があんなに良い連携で共闘してるわけ?????ヤぁバイ、超インスピレーション来た!!!ムカデ芋虫ちゃん、あんた成りかけてるね、名前は?」

クレッシェンドは満面の笑みを浮かべながらムカデの彼女に向かって言った。

成りかけ?何の事だろう???



『繧上◆縺励ワ繧医ワ縺ェ、縺ゅ↑縺溘◆縺。鬲泌・ウ繧呈ョコ縺咎ュ泌・ウ』

彼女が言った。全然、何言ってるか分からないが。


「ヨハナさんね、覚えておいてあげる。それにしてもそう言うって事は、マルグリットが言ってた魔女だけを殺して回ってる魔女ってのはあんたの事だね。『魔女』だけ殺し続けて、理性を取り戻すまで成長してるなんて、本当におもしろい!!」

どうやら、『魔女』同士は言葉が通じるらしい。そして、ここで初めて彼女の名前が分かった。ヨハナさん、覚えておこう、うん。と云うか、今の話からすると、ヨハナさんは私が思ってるよりも更に更に特別なのかもしれない。こんなところでクレッシェンドが嘘をつく意味がないし、ならば、彼女は、ヨハナさんは、本当に本当の正義の味方の『魔女』じゃないか!!!



「ヨハナさん、あんたもかなりおもしろいが、エーデル、あんたはそれ以上だよ!『テンプル騎士団』のクセに何の躊躇いもなく『魔女』と共闘するなんて、あんたのやってる事は人類が長年積み上げてきた『理』を真っ向から否定する『叛逆』だ!!!決めたよ、これから作る曲はヨハナさん、エーデル、あんたら2人の曲、理を否定する『叛逆の詩』!!!!ああ、最高傑作の気配がするよ!!!あーーーあーーーきっとこれは、天国のオレガリオも喜んでくれる!!!!」

彼女は嬉しそうに、狂ったように言った。褒められてるような、そうでないような、よく分らない。でも、だからと言ってあの惨劇を指示したと自称する彼女をこのまま放っておく訳にもいかない。それに私が戦わなくてもヨハナさんは戦うだろう。



彼女は一通り語り終えると、一旦気持ちを落ち着けるように大きく深呼吸をした。



「さぁ、もっと見せて。あなた達の『叛逆』。私に負けるような弱い『叛逆の詩』はいらない。『新しい理』、『新しい世界』、その片鱗を私に示して。手加減はしない、私を越えてみてよ、叛逆者たち!!!!」


彼女は叫び、ポケットから取り出したダガーナイフで自分の首筋を真っ直ぐに切りつけた。

切り口から眩い光が溢れ出す、来るッ!!!


すかさず光に向かってヨハナさんが口から黒い液体を吹きつけ攻撃をしかけた。

判断が早い、凄い。でも、駄目だった。

彼女の前に半透明の光の壁のようなものが聳え立ち、ヨハナさんの攻撃を防いでいた。




そして、そんな光の壁を一瞬で作った彼女の姿は、まさに・・・・・・。


「ペッ、ペガサス!!!!!!」

「繝壹ぎ繧オ繧ケ!!!!!」

私とヨハナさんがほぼ同時に叫んだ。


その姿はまさにギリシア神話に登場する伝説の生物、ペガサスだった。

それはとても、神々しく、凛としていた。今まで見てきた魔女と全く違う。

こんな魔女もいるのか・・・・・いや、『敵』の姿に見惚れている場合ではない。彼女を倒さないと、彼女の音楽のためにまた誰かが犠牲になるなんて、駄目だ。1人ではできなくても、今はヨハナさんがいる。片腕でも。やるんだ!!


そう覚悟を決めた瞬間、クレッシェンドは馬らしい力強い鳴き声を上げながら前脚を上にあげ両脚の蹄を思い切り舞台に叩き付けた。半透明の光の壁が割れ、その破片が私たちに襲いかかる。


「うわあああっ!!!!あああああああっ!!!!」

私は叫びながら、片腕で光の壁の破片をなんとか防ぐ。

いや、駄目だ、片腕じゃ、防ぎきれない。身体のあちこちが引き裂かれ、あまりの痛みに蹲ってしまう。でっ、でも、ヨハナさんは、ヨハナさんは、良かった。身体を丸めて完璧に防いだみたいだ。立たないと、立たないと・・・。


『繧ィ繝シ縺ァ繝ォ!!』

ヨハナさんがそう言って、私に方に寄ってくる。


「わっ、わたしは、だっ、大丈夫、だから、敵に・・・・・しゅっ、集中、しっ」

痛みに堪えながらなんとか言う。立て、立て、こんな身体でもまだ敵の注意を引くくらいならできるはず。立つんだ、立つんだ。


『繧、繝、、繝偵ヨ繝ェ縺倥c蜍昴※縺ェ繧、』

彼女はそう言って、私の首筋に噛み付いた。

痛い、どうして!?



『縺セ縺輔°、繝ェ繝ウ繧ア繝シ繧ク!?』

舞台の上のクレッシェンドが言った。



分かった。ヨハナさんは苦しむ私にとどめを刺しに来たんじゃない。湧き上がる力の奔流。彼女は私に自分の力を分け与えてくれたのだ。この感覚、覚えがある。キノコの魔女を倒した時の感じ。あの時もきっと誰かが、魔力を貸してくれたのだ。


今、分かった。


傷口から黒い液体が染み出し、それが瘡蓋になって傷を塞ぐ。

黒い液体が左肩の穴を埋め、無理やり傷を元に戻す。

左肩が動く。これならまだ戦える!!


「ありがとう、ヨハナさん!!!!」

私は立ち上がった。



立ち上がった瞬間、クレッシェンドが再び光の破片を飛ばしてきた。

でも、今なら!!!私は、力の奔流に身を任せ、全ての破片を弾き、いくつかを飛ばした彼女自身に打ち返した。


しかし、彼女の身体は光の壁とは別の何かに守られており、全く傷がつかなかった。


今はペガサスの身体になりヴァイオリンを持っていない。でも、力強く神々しい音楽がどこからか流れている。きっと、先に戦った2人の使い魔の時と同様、この音楽が彼女自身を強化している気がする。きっと、この音楽を止めないと彼女に攻撃は通らない。


「あっ!」

そんな思考をしている間にヨハナさんが彼女の方に突進していってしまった。


「まだ駄目!」

そんな私の叫びも虚しく、彼女の巨体はクレッシェンドの金ぴかの光を纏った大きな翼に思い切り弾き飛ばされ床を抉った。やっぱり、あの金ぴかの光を纏っている間は攻撃が通じない。私より遥かに力強いヨハナさんの突進があんな風に意図も容易く弾かれると云う事は多分そういう事だろう。考えろ、どこからこの音楽が鳴っている。舞台のピアノ???? いや、でも、ピアノの音とは少し違う気が、でも、やってみる価値はある。まずは舞台の上のピアノを破壊し______そう思った瞬間、質量を持ったような重い風によって私の身体は後方に吹き飛ばされ、床に叩き付けられた。


なんだ、今の!?!?


痛みを堪え、立ち上がる際、金色のピカピカの残滓が空を舞っているのが見えた。この魔法は風にも乗s_____思考の間もなく金色の風がもう一度私に襲い掛かる。

「らああああああああああ!!!!」

私は渾身の力でその風を断ち切った。断ち切ったはいいが、一回の風を切るのにかなり消耗する。何度も防げるものではない。しかし、当然手加減などしてくれる訳もなくすぐに次の金色の風が私を襲う。


「ピアノを壊して!!!」

死ぬ思いでそれもなんとか防ぎ、どこにいるかも分からないヨハナさんに向けて私は叫んだ。

するとこちらへの攻撃が止み、クレッシェンドは翼をはためかせながらターゲットをヨハナさんに向き変えた。ごめんなさい、ヨハナさん!!!!


金色の風がヨハナさんに襲い掛かるのとほぼ同時に私は『天装』のトリガーを弾き、再びレーザービームを放ち舞台の上のピアノを木端微塵に破壊した。




・・・・・・・・音楽が止まない。


天馬が翼をはためかせるたびに大きな音が鳴り、金色の風がヨハナさんを襲う。

そんな、そんな・・・・・・ピアノが音の発信源じゃなかったなんて、じゃあ、どうすれば・・・・・。考えろ、考えろ、いや、それより先にヨハナさんを助けないと、でも、どうやって???音楽が止まない限り、彼女が纏う光の鎧で攻撃が通じない。どうすれば、どうすれば、早く考えないと、ヨハナさんが、私の恩人が、私が囮にしたせいで、そんなの駄目だ!!!駄目だ!!!何か思いつけ、思いつけ!!!


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