価値観
あるところに、何事も効率よく行動する男がいた。
男は無駄なことを好まず、普段のちょっとしたことでも
テキパキこなしていた。
周りの人から見たら、いつもせわしなく動いて窮屈なヤツに見えただろう。
だが男は気にしなかった。というより、周りの人の方がおかしいと男は考えていた。
”何故そこまで無駄な行動をしたがるのだ”
”時間は効率よく使ってこそ価値があるというのに”
男は常々そう言っていたが、定年退職した後には少し落ち着く
だろうと周りは考えていた。
しかし、そうはならなかった。男はある程度金がたまったら
仕事を辞めてしまった。そして貯めた金でやりたいことを
しまくった。
仕事を辞めた後でも男は
何事にも効率よくこなそうとした。やりたいことも無駄なくこなしていった。
流石に周りも ”もう少し気を緩めたほうが
いいのでは?” といったが男は聞く耳を持たなかった。
そして一通りやりたいことをやり終えた男は
ぽっくり死んでしまった。
周りは ”もっと親身になって話し合えば、
こんな早く死ぬこともなかったかもしれないのでは” と心を痛めたが
男の満足そうな死に顔を見て、少しは周りも救われた。
が、中には男のその死に顔に嫉妬した者もいた。