部長が私より乙女な件について
4年前の作品で、今回初めての投稿です。
拙いですが楽しんでいただければ幸いです。
私は頬杖をつきながら部長をじっと見つめた。
部長は私の視線に気付き眉間に皺を寄せながら私を見る。
「なんか用か?」
暫く黙っていた私だが部長がずっと私の返答を待っているようなので口を開いた。
「いや…可愛いなと思いまして」
私の返答に部長が深く溜め息を吐く。
「部長…」
「なんだ」
「幸せが逃げますよ?」
「誰のせいだと思ってやがる!!」
部長は半泣き状態でデスクを叩き立ち上がる。
…可愛いなやっぱり。
「私のせいっすか?」
「他に誰か居るか?オイ?」
煙草の煙を深く吸い込み、窓から大きく吐いた部長。
煙草独特の臭いがした。
「だって部長、外見おっさんなのに中身乙女なんですもん。萌えるんですよ」
「誰が乙女だコラッ」
「お前だよ。ぬいぐるみ机にめっちゃ置いてる乙女部長!!」
ビシッと机の上を指差す。
部長は言葉を詰まらせ後ろに一歩後退した。
私はニヤリと笑いじりじりと部長に近付く。
「っ!?こっち来るんじゃねぇよっ!!」
「…来るなと言われたら行きたくなるのが人ってもんですよ部長」
「お前が人を語るな!!」
うっわ、酷い。
人だからね?人以外の何者でもないからね?
多少は腐っているが。
部長の後ろはもう壁だ。
追い詰めた。
私は部長の腕を掴み動きを制限させる。
力が強い部長だが、アドレナリンの出まくっている私には適わない。
私の腕から逃れようと必死にもがく部長がまた可愛くて私は部長をそのまま美味しくいただこうとしたのだが…
「ところでお前…仕事は終わったのか?」
部長の言葉にピタッと動きを止めた。しまった。だらだらと冷や汗が流れる。
「いえっ…あの…そのぅ…」
「…終わってないんだな?」
うわっ、めっちゃいい笑顔。
私は仕方なく部長を解放した。
「会社で盛ってんじゃねぇよ馬鹿野郎が」
「……(あと少しだったのにっ!!)」
私は心の中で盛大に舌打ちをした。
こんなチャンスは無いと思ったのに。
部長を見れば顔を真っ赤にし、私に目を合わせず頬を掻きながら口を開いた。
「だからな…仕事が終わってからにしろ」
私は驚いて目を見開いたが、直ぐに笑って、「はいっ!」と返事をした。
あぁ、この人には適わない。
―end―
おまけ
「(どうでもいいけど会社でいちゃつくの止めてくんねぇかな)」
一部始終見ていた社員達はハモるように溜め息を吐いたのだった。
これいつかちゃんと書きたいなあ