表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

8 情報のピース


「ふむ……」


俺は読もうと思っていた最後の本の最後のページを閉じる。


本当はもう200冊ほど読みたい所だが、今は時間が無い。


取りあえず、欲していた情報のピースはそろった。


後九日で全てをひっくり返すだけのシナリオが描けた。


まぁ…… そのシナリオは基本的に奇跡を起こし続ける事が前提の、構成としては実に些末なシナリオだ。


だが、そんな些末なシナリオだって、俺が命を吹き込めばドラマに変わる。


俺が演じれば、最高のエンターテイメントへと変化する。


くく…… やってやるさ。


ここから始まる奇跡の九日間。


十日で起こされる逆転の軌跡…… 俺なら描ける。


「おい……… 無駄な抵抗は終わったのか」


俺が本を閉じて少しの間、目を閉じて瞑想していると、すぐ近くにいたシャーリーが声をかけてくる。


「もういいだろう…… 諦めろ」


一瞥をしてみれば、そこにはげんなりとして冷めた目をした金髪ツインテールの姿があった。


「もう満足しただろう………… おい、聞いているのか?」


うざいので俺は取りあえずシャーリーを無視し、俺の膝の上に頭を乗せて眠るアベルをどかす。


「おい…… 聞けよ」


かなりの苛立ちを含んだ声でそう言うシャーリーを無視し続け、俺は立ち上がって虚空へと手をかざす。


「おい!! 聞けと言っているだろう!! いいか!! お前はもういらないからどっかに行ってしまえ!! 姫様は私がぁ…… …………て………っえ!!??」


づかづかと近寄り、俺の肩を鷲掴みにして揺すろうとするシャーリーを無視して俺は……


「スキル『闇取引き』…… 発動」


俺は「商人」スキルの…… 秘匿された裏スキルを発動する。


「なんだ……!? なんだこれはぁ!!??」


周囲を包む黒いオーラに恐れをなし、その挙動を不審にするシャーリー。


こいつ…… ハルバトスのバーサーカー達に睨まれた時もそうだけど、口の割に結構ビビりだよな。


「これか? これは一部職業に存在する『裏スキル』だよ」


「裏スキル!? そんなのはただの都市伝説だろうが!?」


動揺するシャーリーに俺がそう答えてやれば、シャーリーは若干切れ気味にそう答える。


まぁ、確かに裏スキルなんて物は、巷ではただの都市伝説と言う事になっているらしい。


だが、それはブラフだ。


それに気が付いたのは、昨日俺が本を読み続けていた時の事だ……



俺が昨日、丸一日使用して読んだ本の中の504冊目に「都市伝説特集」と言う名目の本があった。


その本は取るに足らない、都市伝説が無数に掲載された書物で、風俗、娯楽、文化などをまとめたコーナーに置いてあった。


しかし、俺はそこである違和感を覚えた。


それは著者の名前だ。


その著者の名前はアビサル・ストレアと言った。


その著者の名前の何か気になったのかと言うと…… その著者の出版物の種類が気になったのだ。


娯楽系の書物である「都市伝説集」を出している、このアビサルは……


この本の他に、ジョブスキルに関しての学術書も出版していたのだ。


最も、娯楽書物と学術書では文体が違い過ぎるので、本当に同じ人物かどうかは疑問であったのだが。


だが…… 俺はどうしてもそれが気になったのだ。


学術書の方のアビサルのクオリティが他の学術書と比べ、非常に低いクオリティであった事も気になる点であった。


何せ、アビサルの学術書が余りにも稚拙過ぎて、始めは何か暗号でも隠されているのかと思ったほどだ。


でなかったら、こんな些末な書物を、王族が所有する図書室に置く意味が無い。


だが…… 


ジョブスキルと言う、言わばこの世界において核となる概念に関しての書物である為、幅広く取り入れているだけの可能性もある。


なので、特に気にする事も無いのかと、そうも思った。


だから、この疑問を飛ばして他の本を読む事に費やそうとも思った。


だが……


何か引っかかる物があったのだ。


俺の直観がそう言っていたのだ。


スキルに関しての大切な情報が何か、隠されているような気がしたのだ。


しかし……


その時すでに、スキルに関しての情報は大分そろっていた。


当然ではあるが、やはりスキルに関しての研究は非常に活発に行われているようで、ジョブスキルに関しての学術書は非常に充実していたのだ。


特に、サルビア・アレトスと言う著者の書いた学術書は非常に論理的にまとめられていて、俺ですら唸り声を上げてしまうような論述を…………’


…………と、考えた時点で俺は気づいた。


アビサル・ストレアとサルビア・アレトス。


これは名前のアナグラムだと。


この全てが同じ著者なのだと、俺は直観したのだ。


そう気づいてからは早かった。


そこから暗号解読が始まったからだ。


「都市伝説特集」に書いてある裏スキル特集の項目はいわば目次であり、「都市伝説特集」の裏スキル以外の都市伝説が全て暗号の起点。


その起点を元に、サルビアの高度な学術書に暗号の変換方がちりばめられていて……


そして裏スキルに関しての本文はアビサルの稚拙な学術書の中に隠されていたのだ。


そんな……


そんな実に回りくどい方法で秘匿されていた、裏スキルの情報。


その中の「商人」の裏スキルの情報。


残念ながら「刀鍛冶」には裏スキルは存在しなかったが、「商人」にはしっかりと裏スキルが存在したのだ。


そう、裏スキル『闇取引』の項目が……


そして、その時点で俺はもうスキル発動の為の見通しを立てた。


情報収集後、直ぐにスキル発動をするために下準備を始めたのだ。


そう…… 


スキル発動の為の基礎練習を始めたのだ。


まぁ『闇取引』は発動自体はそんなに難しい物ではないようなのだが……


だが、時間を無駄にしないように、全力で練習をした。


読書と並行しながら、基礎練習を行ったのだ。


結果、俺はスキルの基礎的な操作を完璧にした。


スキル使用の基礎となる、魔力の操作の練習を入念に行ったからだ。


魔力操作の基礎的練習法である、「スキル使用と独立した属性魔力の使用」をひたすらこなしたのだ。


これは、本来スキルに付与する形で発動するはずの「属性魔力」を、スキル発動とは別に「属性」だけを独立して発動すると言うものである。


そうする事で、より高度な「魔力感覚」を得る事が出来るのだ。


そして高度な「魔力感覚」を得ると言う事は、魔力で構築し発動するスキルの…… いわば「スキル構築」のセンスを養うのと同義であるのだ。


だから、俺は訓練をした。


俺の属性である「水属性」の訓練をひたすらにした。


より緻密なスキル構築を行う為、より細かく水分を操れるように研鑽をひたすらに詰んだのだ。


その結果、始めはミスト程度の細分操作しか出来なかったのが、現在では余裕で気化レベルの微細水分を操れる程に成長した。


部屋の湿度を調整したりする様な精密な水分操作も今やお手の物だ。


読書中、暗号を解読したりしながら、延々と訓練を続けたかいがあった。


零細な水分操作だから、魔力消費も少なく訓練出来るしな。


今ではその更に先も……



…………とにかく。


俺の丸一日の凄まじい努力のかいあって、俺はここまでたどり着いた。


逆転の第一歩となる、爆弾の一発目。


それがこのスキル『闇取引』。


その発動に俺は成功したのだ。


「お、オイ!! 成國神!! 貴様はいったい何をするつもりなのだ!?」


焦る様に怒鳴る様に、俺に突っかかてくるシャーリー。


「何って? そんなの決まってるだろ? 昔から闇の取引の相手っていったら……」


俺はそれに笑顔で返答する。


そう。


『闇取引』の相手と言えば昔から相場が決まっているのだ。


大抵はマフィアで、さもなくば、そう……



「俺の取引の相手は…… 悪魔さ」



俺の周囲を取り巻く闇が、やがて目の前に集まり、人型になって行くのが分かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ