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6 能力判明後


「…………………さて」


「商人」と「刀鍛冶」……


能力が判明したした直後、俺はゆっくりと振り返ってみる。


そこには冷めた目で俺を見やり、そしてガウエィンに目くばせをするフランチェスカの姿があった。


そしてその時、彼女がガウェインに対し「落とし前をつけろ」と口を動かしたのが見えた。


ふむ…… 折角だから英雄職種と呼ばれる者の実力がどれ程のもか、直に見ておくとしよう。


「…………いきます」


そう、ガウェインが囁いた瞬間。


彼の姿が目の前から消える。


そして次の瞬間には俺の前顔に来ていた。


……早いなんてもんじゃないな。


てか、そんな見えない速度で動けるんなら背後に回っておけば良い物を……


視線を俺と合わせたのは失敗だったな。


視線でお前の狙いが良く読める。


「ぐうぇああああああ!?」


俺はかなりオーバーな声を上げて、ガウェインの掌底を顔面に食らう。


その際に、軽く後ろに飛んで威力をそらす。


力を逃がし過ぎると、向こうに避けられた事が悟られてしまうので、ある程度はダメージを喰らうように、半飛び半受けくらいで攻撃を食らう。


鼻血が出る程度には喰らって、血で過剰ダメ―ジを演出するくらいが望ましい。


「ぐわぁぁあああああ!! 痛いいたいよぉぉぉ!!?? 鼻の骨が折れたぁぁああああ!!??」


そして痛みに転げ回る。


追撃を免れる為には相手が引くくらい醜く情けなくするのがポイントである。


しかし…… 「ヒーロー」の攻撃速度は本当に凄まじかったな。


だが、俺の頭の回転速度だって負けてないぜ。


「見苦しい…… 本当に見苦しいわ、ガウェイン、奴の頭を踏みなさい」


「は、はい」


転げ回る俺を見下しながら近寄り、そしてガウエィンにそう命じるフランチェスカ。


「ぎゃあ!? ぐぇぇぇ!! いたいよぉ!!」


「ご…… ごめんなさい」


その直後ガウェインは俺の頭を、躊躇しながらも踏みつける。


「いい? これに懲りたら二度と、私に舐めた口を利かない事ね」


そして踏みつけられた俺の事を思い切り見下して、フランチェスカはそう言い捨てるのだった。


「ぐ……… ず、ずるいぞぉぉ」


俺は、ガウェインに踏まれながら涙を流し、そしてフランチェスカを睨みつける。


「こ、この男はヒーローって奴なんだろう!! な、なんの対策も取らずに倒せる訳がないじゃないか!? こ、こんなのは不公平だ!! やり直しだ、やり直しを要求するぅぅぅぅぅぅううう!!!!」


そして、鼻水と涙をだばだばと流しながら、僕はそんな意義申し立てをするのだった。


そう…… 誰かこの話を拾ってくれと、願いながら。


俺の観察した限り、ハルバトスとかフランチェスカとかこういうの拾ってくれそうだよなぁ……


とか思いながら大泣きしてみる。


まぁ、拾ってくれなかったらくれなかったで、別に手はあるのだが。


…………と、思っていたら。


「ほぅ…… 面白い、では来るべき聖王采の模擬戦と言うのはどうだ? 私たちの勇士をそれぞれ一人ずつ出して、殺害は無しのルールでバトルロイヤルをするのだ」


まさかのクレアティルトが拾ってくれたのであった。


「そうだな、おいそこの愚民…… 何日あれば必要な策を練れるのだ? 10日で足りるか?」


ふむ…… 


まぁ多分こいつがこんな事を言いだすのは十中八九、他の王族の戦力を知る事と、自分の戦力を知る為なんだろうか…… まぁそれは俺も同じだ。


他の奴の戦力と、自分がこの能力ハンデでどこまでやれるのかを知りたい。


そして…… 


この状況下から逆転をされる、こいつらのほえ面が見たいのだ。


くくく……


「十分だ! お、俺が本気になればお前等なんて10日もあれば十分勝てるにきまってるんだぁぁ!!」


本音を言えば一カ月は欲しい。


だけど、俺はあくまで「うわぁ…… こいつ頭わるっ」ってとこから逆転したい。


その方が圧倒的に燃えるし、愉しいからだ。


何より他の奴に、「これは遊びだ」感を意識させたい。


馬鹿な俺が馬鹿な事を言って、馬鹿に馬鹿だって事を分からせるために、遊び気分で参加する。


そんな気軽な感じで全員を参加させたいのだ。


そして。


それを。


俺が。


全力でたたき潰す。


それが正義。


それがエクスタシー。


だから、俺の馬鹿っぽさを引き立てる為にも「何も考えて無い」感を出すために即答の方がいいだろう。


まぁ、俺なら10日もあれば十分さ。


「なんだ本当に10日で良いのか? 大した度胸だ…… よし、どうだ皆よ、兄妹同士、軽い腕試しでもしようではないか」


本当に…… このタイミングでクレアティルトが乗ってくれて良かった。


何故ならクレアティルトの発言力はこの兄弟の中で一番強く。


そして……


「ま…… いいですがね」


「俺は別に構わないぜ」


「私も良いですわ」


「シン君がいいなら、私もいいよ」


いつらは基本的に負けず嫌いの様だからだ。


トップを行くクレアティルトが勝負を仕掛けてきたなら、乗らないはずはない。


「…………ふん、カラス、今日の所はこのくらいで許してあげるわ」


俺を一通り見下したあと、踵を返すフランチェスカ。


「10日後にもっと酷い事をしてあげる。 大丈夫、殺しはしない、ただその一歩手前くらいまでは覚悟しなさい」


そして振り向いたまま、俺にそう吐き捨てるのだった。


「行くわよ、ガウェイン」


「は、はい!!」


そしてフランチェスカは立ち去るのだった。


「じゃ、精々頑張ってくれたまえよ…… 商人と刀鍛冶でどう戦うのかはしらないけどね。 まぁ…… 笑わせてもらうとするよ、ぐふふふ」


続いて、ジークフリートも立ち去る。


「お前見たいのを何て言うかしってるか? 身の程知らずっていうんだよ、ばーか。 ぎゃははははッ!!」


ハルバトスもそれに続く。


「しかしお前は本当に妾の子だな、アベル…… こんなクズしか呼び出せないなんて、所詮はお前もクズか」


「ふふ、すみません」


去り際に、ジークフリートはアベルに一言つぶやいて部屋を出ていく。


そして……


「あんな馬鹿も御せないのか? お前は本当に無能だな。 お前みたいな使えない奴を見てるとイライラするんだよな俺」


その後に、ハルバトスがそう言って立ち止まる。


嫌みたらしく、憎たらしく、そしてうざったらしくしてそう言う。


「あはは、ごめんなさい」


それににっこり笑顔で返すアベル。


「ぅ……… ぐぐぅ」


そして歯を食いしばって、睨むシャーリー。


「っち…… へらへらしやがって気に食わねぇな」


しかし、そこでハルバトスが思いがけない行動に出る。


「きゃ!?」


「姫様!?」


突然ハルバトスがアベルに蹴りを入れたのだ。


アベルの太ももの辺りを蹴飛ばしたのだ。


「き、貴様ぁ!!」


いきなりのその所業に怒りをあらわにするシャーリー。


「まて……」


「貴様…… 何する気だ」


しかし、それと同時にハルバトスの勇士たちが…… 


「ぅ……」


シャーリーが動くより先に「バーサーカー」と「ベルセルク」が身構えていた。


「ぬ…… ぅ…」


そのただならぬ殺気に思わず身をすくめてしまうシャーリー。


辺りに緊張した空気が流れる。


しかし、そこで……


「あはは、へらへらしてて、ごめんなさい兄さん」


立ち上がったアベルが二人の間に入って、にこりと微笑むのだった。


「…………っち、なんか白けちまった」


そんなアベルの笑顔に、顔をしかめるハルバトス。


「まぁいい、楽しみは10日後にとって置いてやるよ」


そして最後にそう言って、ハルバトスはつまらなそうにして部屋を出ていく。


「く……そぉ……」


いつの間にかクレアティルトもいなくなっており、覚醒の間には横たわる俺と、歯噛みするシャーリー、そして微笑みを浮かべるアベルが残されたのだった。


「くそ………!!」


シャーリーが、剣を抜く。


そして俺の元へと近づいてくる。


そして……


「お前…… もう自害しろ」


俺を見下してそんな事を言ってくるのだった。


「ふむ……… なんで?」


周りに俺たち以外の気配が無くなっている事を確認してから、俺はゆっくりと立ち上がって土を払い鼻血を拭く。


「なんで? ……………なんでじゃないだろうがぁ!!」


普通に立ち上がって、シャーリーを平然と見返すと、その直後、彼女は激怒してそう返す。


「いいか!! 分かっていないのなら私が教えてやる!! お前はもう終わってるんだよ!! 商人と刀鍛冶じゃ戦えないんだよ!! お前が馬鹿な事をやって馬鹿にされれば、一緒にアベルティエ様まで馬鹿にされるんだ!! だから、頼むからもういっそ死んでくれよおおっっ!!!」


そして、俺に対して凄まじい剣幕で激怒するのだった。


「ふん………」


俺は取りあえず、うるさいシャーリーを無視して、アベルの所へと向かう。


「…………痛かったか?」


そしてアベルの服についたハルバトスの足跡を払ってやり、そう声をかけてやる。


「全然、だって後ろに倒れて力を流したからね、君と同じで」


「くく……………だよな、知ってた」


そして俺たちは微笑み合う。


「お前は無理だと思うか?」


「もう…… アベルって呼んでって言ってるじゃない」


「…………アベルは俺がもう終わってると思うか?」


「まさか…… 私の旦那様はここからでしょ? だから、私をもっと楽しませてよ」


「………もちろんだ」


俺はニヤリとし、アベルはニコリと笑う。


ああ、やっぱいいはこいつ。


「おいぃッ!! 聞いているのかお前ぇ!!」


そんな俺たちを邪魔するようにシャーリーが叫ぶ。


「うるさい黙れ…… 全部俺が何とかして見せる」


余りにも煩いので、俺はそんなシャーリーを睨みつけた。


「何とか!? 無理に決まっているだろうが!! 戦闘系スキルを持たないお前じゃ…… ステータスのジョブ補正が働かないお前じゃ、武器を装備できないお前じゃ絶対むりなんだよおおおお!! いい加減わかれよ!」


しかし当然怒りは収まらず、更に睨み返してそう叫び散らすシャーリー。


ああ、もう、うざい。


「まぁ…… お前に無理だろうな」


もう、取りあえず無視して終わらせよう。


とにかく次の行動だ。


時間が惜しい。


「だけど俺ならできる」


後、たった10日しかないのだ。


その間に、このままで戦える方法を探さなくてはならないのだ。


「絶対に無理だ! 私にだって…… いや、誰にだって無理なんだっ!!」


くくく…… 楽しみだ。


最高に楽しみだ。


「そうだな、お前には無理だろうし、他の誰にも無理だろう」


そう……


なぜなら、ここからが最高にたぎる展開なのだから。


「だけど俺は出来る、俺なら出来る。 何故なら俺は……」


そう…… 


俺ならこの状況を最高に面白い展開に出来る。


全てをひっくり返し、全てを屈服させる事が出来る。


俺は……


「俺は他の全てと違うのだから……!!」


「…………っ!?」


そう言う俺を見て、シャーリーは停止し、素になり…… 


「はぁ……… 貴様は頭がおかしい…… 貴様は可哀そうな男だな」


そして憐れむ。


激しい憐憫の目を向ける。


だが、それすらも……


「いいぞ、せいぜい俺を憐れめ、そして蔑め…… 何故ならそれすらも」


そう…… それすらも。


「俺にとっては行動原理でしか無いのだから」


人生のスパイスでしかないのだ。

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