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5 覚醒

そして、俺以外の全ての召喚者の覚醒が終わった。


覚醒を観察する間に、他の王族達の解説をアベルがしてくれたので、人間関係も含め、敵の戦力の概要を知る事も出来た。



まず、先ほどの俺の不敵発言に無視を決め込んだ大女。


彼女の名前はクレアティルト、現王の二番目の子供。


背が高く、赤く長い髪をなびかせ、真っ赤で鋭い瞳で…… 常に周囲を見下している。


とりあえず、あのおっぱいは凄いとだけ言っておこう。


だが、おっぱいはさておき、奴の持つ雰囲気は只者ではない。


他三人には無い、「王の気質」みたいなものを感じる。


恐らく、王族の中で難敵となるとしたらこいつだけだろう。


そして…… どうやらこいつは「王性」とやらもかなり高いようで、なんと召喚に成功した人数はアベルの四倍、つまりは四人だ。


しかもその召喚者達の内訳も「勇者」、「ドラゴンライダー」、「ダークナイト」、「神官戦士」と……


所謂、高位職種のオンパレードだ。


しかも「勇者」にいたっては、高位職種の更に上、英雄職種と呼ばれる特殊な補正が盛りだくさんの職種らしい。


つまり、こいつは本気でやばい奴と言う事だ。



次に、しかめ面をして俺をみていたデブ。


現王の一人目の子供らしい。


見た目は、裕福な家庭で育ったいかにもな感じのデブで、顔にぶつぶつが大量にある大変キモイ輩である。


名前はジークハルト…… 完全な名前負けだな。


手持ちの召喚者は「パラディン」と「ソードマスター兼ガンナー」の二人である。


奴の「ソードマスター兼ガンナー」は、もし強くなった場合、近距離と遠距離を使いこなす厄介な敵になりそうなので、そこだけは注意しておこう。


後は興味ない。



3人目は俺に舌打ちをした目つき悪男だ。


こいつは現王の3人目の子供で名前はハルバトス。


我がままで自分勝手で沸点が低く、過激な行動をする、超迷惑な奴らしい。


持ち駒は「バーサーカー兼ヒーラー」と「ベルセルク」。


バーサーカーとベルセルクってそれは同じじゃないのかと突っ込みを入れたくなるが、どうやらそこは違うらしい。


どう違うのかはアベルもしらないとの事。


とにかく…… こいつは持ち駒と言い、性格といい、下手に刺激したら簡単に爆発しそうである。


こいつには、戦力がある程度確保できるまでは関わらない方が良さそうだ。


馬鹿野郎の相手はしないに限る。



そして最後は俺を睨んできていたロリだ。


釣り目でぷりぷりと怒っている、子供っぽいロリだ。


現王の4人目の子供であるアベルの下で、5人目の子供であるロリ。


名前はフランチェスカで、持ち駒はアベルと同じ一人だけ……


だが、その駒のジョブは何と「ヒーロー」。


これは「勇者」と同じく英雄職種であるようだ。


持ち駒の職種が分かるまでは言葉にはしなかったものの「自分は王性が低いのか」と大分焦っていたのに、それが「ヒーロー」と分かるや否やドヤ顔を決め込んだ、実に単純な奴である。


奴の駒は凄いようだが、今の所、こいつにはそれほど脅威を感じない。



と…… これらが俺とアベルの敵である。


俺らはこれから、こいつらと争い、人生をエンジョイしていくのだ。


ああ…… 楽しみだ。


特にあの大女を屈服させるのとか、最高にたぎりそうだぜ。


「よし……」


「じゃあ、シン君頑張ってきてね」


さて…… いよいよ俺が覚醒の魔法陣に立つ時が来た。


一体俺はどんなジョブを手に入れるのだろうか?


実に楽しみだ。


「ああ、行ってくる」


俺は、ニコニコとして手を振るアベルを一瞥して魔法陣へと向かう。


さぁ、どうなる事か。



「おい、そこのカラス」


ん……?


いざ、魔方陣に入ろうとしたところで声をかけられた為、振り向いて見れば、そこには先ほど覚醒を終えたばかりの「ヒーロー」とフランチェスカが立っていた。


「………カラスってのは俺の事か?」


「この中で卑しいカラスみたいな髪色の奴なんてあんたと、アベルしかいないでしょ? 察しが悪いわねこの低能」


…………「ヒーロー」を手に入れて、よっぽど舞い上がっているのだろう。


不躾におれをなじってくるこの糞ロリは、完全に調子に乗っていた。


「ふむ…… 礼儀をわきまえずいきなり人を挑発するのは、同じく浅はかで低能ではないのか?」


「な……!? あ、あんただってさっき私たちを挑発して来てたじゃない!」


だから、取りあえず俺も話に合わせて遊んでやる。


遊びってのは同じレベルでやってやるから面白いのだ。


「俺のさっきのは誰にあてたでも無い、完全な独り言だが? なんだ、お前は人の独り言にも腹を立てる程度の実に器小さい女なのか? 全く小さいのはそのゼロに等しい些末な乳だけにして欲しい物だ」


「な、な……っ!! な、何を貴様、王族に向かってぇぇ!!」


俺が身体的特徴を踏まえてなじってやると、フランチェスカは顔を真っ赤にして怒鳴る。


ふむ、こいつあおり耐性ゼロだな。


面白い。


「こいつ!! 絶対に許さない!! ガウェイン!! この無礼なカラスをを痛めつけてやりなさい!!」


「は…… はいぃ!!」


激高したフランチェスカはその勢いのままに、ガウエィンと言うなの「ヒーロー」に命令をする。


ふむ…… 何とも気弱な感じの「ヒーロー」だな。


どうやら人間性とジョブは基本的に関連性は無いようだ。


実力も才能も完全に運命しだい。


だが、能力を生かすも殺すも自分次第ってとこか。


ふむ…… それはさておき、今ボコされるのは不味いな。


「ちょっとまて、お前等、丸腰相手を攻撃する気か?」


「な、何よ……!」


そこで俺が手でフランチェスカを制すると、彼女は素直に停止した。


………こいつはさっき「殺せ」じゃなくて「痛めつけろ」って言ってたな。 


それに敵の言う事なのに素直に聞くし…… どうやら結構甘ちゃんのようだな。


やはり脅威にはならなさそうだ。


「俺を痛めつけたいのなら、俺が覚醒を終えてからにしろ…… それとも何か? 俺がヒーロー以上のジョブを引くんじゃないかと恐れているのか? それならしかたないな? 良いぜ、いまのうち俺を殴れよ…… いや、しかし実にせこいな、その胸と同じで実にせこい。 まったくこれだから貧乳はいやなんだ。 胸が貧しいと心まで貧しくなってしまのかね…… あぁ、やだやだ」


「がっ ぬ…ぬぅっ ぐっ…ぐぅ!!」


凄まじい形相で俺を睨むフランチェスカ。


おいおい、一応美少女なのに顔面が凄い事になってるぞ?


大丈夫か?


「上等だわ! やってやろうじゃないの!! さっさと覚醒を澄ませて来なさい!! その後でぼこぼこにしてやるわ!!」


そして、フランチェスカは怒鳴りながら俺にそう言うのだった。


「ああ、じゃあそうさせてもらう」


それに俺は嘲笑を浮かべると、そのまま魔方陣の中央へと移動をする。


魔法陣の中心に立つと、デブのジークフリートと舌打ちのハルバトスの視線がささる。


そして…… クレアティルトの不敵な笑みも向けられていた。


よし……


「さぁ、いいぜ、初めてくれ」


そして俺は合図を送り、覚醒の魔む法陣を起動してもらう。


すると次の瞬間には俺の視界を光が埋め尽くし、そして同時に体を電流が駆け巡るような感覚が俺を襲っう。


やがて……


「む…………」


それらの感覚が収まったあとに、俺は自分の体が今までにない感覚で満ちているのを感じる。


そしてその感覚こそが、魔力の感覚であると直観的に感じたのだった。


「ぁ………ぇ…? え?」


俺がその未知の感覚に酔いしれていると、覚醒の結果を伝える王宮の職員らしき人物が、激しく動揺しているのが見えた。


そしてその次の瞬間に…… 彼は俺たちにとんでも無い事を口にする。


その一言は正に晴天の霹靂。


俺の人生を変える一言。


彼は俺に……




「しょ…… 職業『商人 兼 刀鍛冶』、属性は『水と石』です」




そう言い放ったのだった。


「………………ぶ…… くくっ……くはははぁ!!」


先ほどまでの不機嫌はどこえやら、突然大爆笑を始めるハルバトス。


「ぁ……あんだけ偉そうにしておいて…… くくっ… 非戦闘職とか… ぷっ… 格好、悪いですな」


にやにやブヒブヒとしながら、俺を見下して嘲笑するジークフリート。


「……………………」


一瞬で興味をなくしたようにして視線をそらす、クレアティルト。


「……………なにそれ、クズ以下じゃない」


嫌悪感すら感じられる表情でそう罵る、フランチェスカ。


「ぁ………………?」


最早呆れ顔で、俺に対して強い失望の色を見せるリーシャ。


そして……



「…………………さすがアベル、だよな」



変わらずに楽しそうにニコニコとするアベル。


やばい、マジでこいつを好きに成りそうだ。


「最高だぜぇ……」


そうだ…… これぞ俺が求めていたもの。


どうにもならない理不尽をねじ伏せる。


それこそが俺の楽しみ…… 


これが前の世界で逆境フェチと呼ばれた俺の生き様だ。




「やはり人生…… そうこなくっちゃなぁ」


俺は全身の血がふつふつと湧き上ってゆく感覚を覚えるのだった。

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