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ファミレスで食事を取り終えると、三島から〝アンアビリティキャンディ〟が売られている場所を教えてもらった。
三島が言うには、アンアビリティキャンディを売っている店は闇市にあるらしい。しかも店主が一癖も二癖変わっていて、用心しろと言われた。
だが、肝心の何に用心すればいいのかは聞かされていない。
数分して、正好たちは闇市の入り口へと来る。
二人はバイクから降ると、正好はそれを路上に止めた。闇市の前だ、用心に超したことはないので、鎖のチェーンでタイヤとガードレールを結んだ。
「ここって、わたしが追われてたところだよね……?」
「怖いか?」
「ちょっとだけ。服の袖を掴んだら、怖くなくなるかも」
特に断る理由も無かったので「いいよ」と言うと、サリーは嬉しそうな顔をして服の袖を掴んできた。
「それじゃあ、行くぞ」
闇市は路地裏を活用している。なので、余程注意深く見ていないと気づかれ難い。しかも、道が狭いのでわざわざ入ろうという人間は少ない。
そのため、警察や管理者の目を盗んで悪さをする輩が多い。
今回はその悪さを利用するので、正好は何とも言えない気持ちになった。
能力者を取り締まる正義の存在であるのにも関わらず、犯罪に手を染めている。
正好は、ちらりとサリーを見る。彼女が救われるのであればそれでいいと思った。
「ここか……?」
スマホで調べた地図の場所と店とを見比べながら正好はぽつりと呟く。
「そうっぽいね……。何だかとっても怪しい外観なんだけど」
黒い幕が垂れている中で、目的の店はピンク色の幕が垂れていた。しかも、その垂れ幕にはハート型の模様が描かれている。
「ここで立ち止まっていても仕方がないから、入ってみるか」
「うん……」
サリーが乗り気のない返事をする。服の袖を掴む手に力が入っていた。怖いのかも知れない。
「大丈夫だ。何かあった時は必ず僕が守る」
そう言うと、「分かった」と言った。
正好は携帯をジャンパーのポケットにしまい、サリーを引っ張って、垂れ幕を潜った。