10
正好はタオルと着替えを持って、脱衣所に来ていた。
サリーが汗を搔いたからシャワーを浴びたいと言ったからだ。
洗濯機の上には脱ぎ捨てたられた下着、チェック柄のスカート、パーカーが置かれていた。
正好の目はついついパーカーへと向けられてしまう。
それはボロボロになっていた。彼女が今まで味わった苦労が、苦難が、苦痛が滲み出ている。
見続けることを躊躇われ、横を向けば、浴槽のドアが映った。
ドアには薄くシルエットが浮かんでおり、それが正好の方へと近づいてくる。
ガチャリと音がして、ドアから裸姿の少女が現れた。
濡れた銀色の髪は艶めかしく、肩口から水が滴り落ちる。パーカーを着ていたから分からなかったが、膨らんだ双丘は女の子のそれだった。身体のラインは細く、陶磁器のように白い柔肌が赤く蒸気していた。
「ど、どうしているの……?」
同じく顔を赤くしているサリーは、上目遣いでそう言った。
「タオルとか着替えないかと思って、用意してきたんだ」
「そ、そう。ありがとう。じゃあそれらを洗濯機の上に置いておいてくれないかな?」
「分かった」
正好は脱ぎ捨てられた服の上に、タオルと着替えを重ねた。それから何事もなかったかのように洗面所を出る。遅れて、サリーの甲高い悲鳴が上がったのだった。