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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第一章
9/40

最強武器:七つの神器

 「よ、400だと……!?」

 「そんな……」

 

 俺と香織は半歩下がる。

 目の前の鈴木 健太こと作業着の男は不敵な笑みを漏らしている。

 ――そうだ。まだ本当に400だと決まったわけじゃない!


 「証拠がないのにそんな事言えるわけないだろ!」

 「証拠か? そんな物が欲しいのか」


 俺は健太に抗議の声を上げる。

 健太は右拳を作り、大地に思いっきり叩きつける。

 

 その瞬間大地が激しく揺れる。

 これは震度7とかのレベルじゃない。

 

 「ぐっ……」

 「なにこれ!」


 俺と香織は何とか態勢を維持しようとするも、膝を地面につけ、しゃがみこむ事しか出来なくなっていた。

 まさか攻撃力だけで大地を揺らす程の力があるのか!?

 健太を見つめると、砂煙が上がっていた。

 どうやら殴った反動で、砂が舞ってるようだ。

 

 「ふん。俺の攻撃力は9999だ。何の事か分からないか? 俺はこの世界で絶対的な力を手に入れたのだ!」

 

 健太は大笑いしながら俺と香織の両者を交互に見る。

 その瞳に、俺らは殺害人形にしか映ってないのだろう。電動大剣(エレキ・ブレード)は放置されたままだ。

 ならば、奴は俺らを御自慢の攻撃力で素手のまま襲いかかってくるだろう。

 俺らに勝ち目があるのか……?

そもそも、俺が攻撃を喰らえば即死だぞ?

 隣にいる香織が立ち上がる。


 「攻撃力が高いから何よ。当たらなければ意味がないわ!」

 「ふん。攻撃力もなければ防御力もない人間がそこに一人いるだろうが」

 

 どうやら俺の事だ。

 まったく舐めやがって。

 だが、対策すら俺には浮かばない。

 

 「だからって、可能性がゼロなわけじゃない」


 俺も立ち上がる。そして、目の前にいる健太に人差し指を向ける。

 

 健太は俺の顔をまじまじと見つめる。

 苛々してきたのか殺気が立っている。

 

 「おいおい。いい加減に死んでくれよ。俺ぁレベル1のクソガキになんか興味ねーんだよ」

 「やってみなきゃ分からない事がこの世界には沢山ある!」 

 「やってみなきゃ? バカかお前! 完全にここは異世界だろうが!!」

 「異世界ねぇ……バカはどこまでいってもバカなんだな」

 「……なんだとクソガキ」

 

 俺は健太を睨みながら口を開く。

 健太も負けじと、俺に歯向かってくる。

 香織は挙動不審に俺と健太をテニスのボールを追うかの如く、視線を移動させている。


 「全て知ったような口聞きやがって!! お前の身体からミンチにしてやる!」

 「できるならやってみろ!!」


 健太は地面に凄まじい勢いでかかと落としを放つ。

 赤褐色の大地はひび割れ、俺と香織の方にまで地割れが進む。

 香織は自らの武器の力で空を跳躍する。

 俺は、迷わずに前に走る。


 「ちょっ林檎! やめなさい!!」

 「女は黙ってろ!!」


 俺は地割れの中進む。

 やがて目の前に尖った岩が俺に迫る。

 右手を振りかぶり、俺は岩を思いっきり殴る。

 

 「どらあああああああああ!!!」


 俺は岩を殴ったものの、力負けして後方に吹っ飛んだ。

 香織はそんな俺を見て溜息を吐いていた。

 

 「クソガキ。お前から素手で殺してやる!」

 

 健太は高く跳び、俺にめがけて両手を合わせて固め、頭の真後ろまで振りかぶった。 

 俺は急いで飛び起き、左拳を固める。

 

 「死ねええええええええ!!!」

 「黙れ!」


 健太の両拳と俺の左拳が激突する。

 次元破壊ディメイション・ディストラクションが発動したのか、今度は太刀打ちできている。ステータス数値も、異能とみなしているのなら、俺の異能はそれを無効化できるのかもしれない。

 力は互角。いや、俺のほうが今は少し上だ。

 俺と健太の拳のぶつかり合いで周囲の砂が余波で砂埃をあげる。

 三つの拳が混じり合うその位置を中心として、竜巻が起こる。


 「何やってんのよバカ!!」

 

 どこかで香織の叫んでる声がする。

 しかし、今はそれどころではない。

 目の前の殺人鬼をなんとかして倒さねばならないのだ。

 俺がやらねば――コイツはまた誰かを殺す。

 

 「クソガキ風情があああああああ!!」


 俺の力に勝てないのが不思議そうだ。 

 そして苛立ってるのか、表情が悪魔のようだ。

 

 「殺人鬼はそこで寝てろおおおおおお!!」

 

 叫びが俺の力になる。

 俺の拳が光だす。

次元破壊ディメイション・ディストラクションのおかげだ。この力のおかげで俺はレベル400で攻撃力9999の健太を無効化していると確信する。

 俺は腹を括り、息を吸う。


 「ここで寝てろぉおおおおおおおおお!!!」


 ついに俺の拳は健太の力に勝つ。

 俺の左手は健太の両手を押し退き、右手を再び固める。

 

 「でりゃあああああああ!!」

 

 固められた右拳は、健太の顎に直撃する。

 アッパーを受けた健太は口から微量の血液を噴く。

 しかし、これでは勝てないのだ。

 俺だけでは……。


 宙に舞う健太。

 俺と健太を覆う竜巻は晴れる。

 すぐに香織に視線を移す。

 

 「氷坂! 今だ!!」

 

 俺は香織に向かって叫ぶ。

 香織も縦に頷いてくれた。

 香織は弓を右手に構え、左手で弓を引く。

 矢は先ほどと同じく、光り始める。

 

 「これで……チェックメイトよ!!」

 

 弓を引く凄まじい轟音がする。

 この技は一体……?


 「覚えておきなさい、バカ二人! あたしの弓は地球上最強武器である神器の一つ! 月女神の弓(アルテミスボウ)よ!!!」

 

 香織の周りの砂埃が粗ぶる。

 上空に吹き飛ばされている健太を狙う。 

 香織は宙に浮きながら、矢に高密度の力を流しこんでいる。

 

 「行くわよ!!! 月女神の矢(アルテミスアロー)!!!」


 香織が高らかに叫ぶ。

 矢はどこまでも眩しい太陽の光に似ている。

 放たれた瞬間に、それは眩過ぎて目を閉じたくなるほどだ。

 放たれた先に存在するのは作業着を着た男――鈴木 健太。

 

 俺に上空へと飛ばされた事に今さら気付いたのか。

 挙動不審に周囲に視線を泳がしてる。

 だが、恐らく気付いたのだろう。

 自分の目前に広がる太陽の如き、光を放つ矢――月女神の矢(アルテミスアロー)に。

 

 「な、ふざけんな! 俺はこの世界でもっと人を殺――」

 

 矢は健太と重なると同時に太い光線となり、健太の身体を溶かしていく。

 血や、身体の部位欠損などはない。

 全てが地に帰る。

 やがて光は落ち着きを取り戻し、上空から消えた。

 

 「ふぅ~~」

 

 香織は地面に腰を抜かす。

 俺も緊張の糸が解れ、片膝を地面につける。

 これで、ストーカーの作業着姿の男――健太を倒せたのだ。

 結果的には殺してしまったかもしれない。

 だが、誰かが殺らねばいけないのだ。

 

 「ありがとう氷坂。つか、あの月女神の矢(アルテミスアロー)って技、最初に使っとけば勝てたんじゃないのか?」

 「何言ってんのよ。バカなあんたに分かりやすく教えてあげるわ。まず、私の具現化されてる弓・月女神の弓(アルテミスボウ)は顕現させるのに電池を10%使うの。あともう一つの剣・氷翼の剣(アイスウィング)は5%減るの。加えて金翼の鷲(ゴールデン・イーグル)は5%。竜の翼(ドラゴン・バード)も5%。最後にあたしが放った月女神の矢(アルテミスアロー)。あれは50%も減る最終奥義みたいな技なの」


 道理で凄いわけだ。

 レベル400も最強武器には勝てないようだ。


 「というか本当に最強武器なのか?」

 「しょうがないわね。ほら」

 

 香織は俺に向けて端末を渡す。その表情が俺をバカにしてるのが手に取るように分かる。だけど今は言わないでおこう。

 まず目に入ったのは電池の残り。残量:15%

 ヘルプを凝視する。

 

 『ヘルプ:最強武器について。おめでとうございます。あなたが具現化できる武器はこの世界に七つある最強武器です。そのうちの一つである弓です。最強ではありますが消耗が激しい武器になりますので使用にはご注意を』

 

 本当のようだ。

 まさにゲームのようだ。

 だが、武器はこの世界には売ってない。 

 具現化させるしかないのだ。

 という事はこの女――氷坂 香織は相当の運を持っている事になる。


 「凄まじいな!」

 「だから言ったじゃない。あんたバカ? 人の事信用しなさすぎでしょ」

 「普通に信用できないからな、お前」

 「ああ? 何か言ったかな? あたしの武器の餌になりたいのならどうぞ~?」


 俺と香織は倒した事に安堵して喧嘩をしていた。

 だが、終わる筈なかった。

 レベル400と言う事は生命力も高いと言う事。

 防御力・俊敏力は大した事はなかった。恐らく完ストには届いてない筈だ。


 「……おいおい。何殺した気になってんだよ!!」

 

 俺と香織は同時に声のする方へと視線を移す。

 

 視線の先にいたのは、ボロボロになった作業着。

 血に染められて赤くなったタンクトップ。

 狂気に満ちた顔。

 ――もはや瀕死状態の鈴木 健太だ。


 さすがはレベル400。

 あれだけやって死なないとは。


 だが、悠長な事も言ってられなかった。

 

 「氷坂。最後だ。いけるか?」

 「誰に聞いてんのよ異臭物」


 俺は香織に視線を移し、縦に頷く。

 再び両手の拳を固める。

 香織は弓を手放し、氷翼の剣を手にする。


 「この分の利子はデカイゼ? クソガキ二匹は大人しくしろってんだああああああ!!」


 健太からドス黒いオーラが噴き荒れる。

 本物のゾンビと遜色はない。

 これは執念なのか……?

 それとも――


 「余所見してんじゃねーぞ!!」

 

 気付けば俺の目前に手の平が開かれている。

 

 まずい!! コイツの移動速度が上がってる! しかも格段に!!

 

 「風激(エア・バースト)ぉおおおおおおおお!!!」


 魔術と発声魔術のダブルコンボを俺は顔面に見事に食らった。

 どれくらい飛んだのかは分からない。

 頭を打った痛みがある。

 触れてみると微かに血が出ていた。

右ポケットは凄まじいバイブレーションとアラーム音。

 手元には俺が先ほど壊した電動大剣の刃破片がそこかしこにあった。

 

 香織は何とか回避したようだ。

 俺の名前を呼んでいるようだが、なんだか眠くなってきた。

 やっぱりダメだ。

 俺は死ぬ運命だったのだ。

 俺を殺すのは京介でも、健太でもどっちでも同じだろう。

 まったく神様って本当にこの世にいるのかな。

 この世界に招集されて約五日間。

 レベル1のままとか終わってるよ……。


 『お知らせ:暴性が解放されました』


 携帯が何か言ってる。

 知らねーよ。だって俺もう死ぬんだろう?

 こんなの携帯見なくたってわかるっつの。


 『メール:起きろバカ from:氷坂 香織』


 携帯がいきなり音声を発してメールの文を喋る。

 俺のアドレス知ってたっけ?

 まぁもうどうでもいいか……。

 

 『メール:たすけて』


 助けて?

 助けて……。

 俺はまだ死ねないのか。


 俺の心の中で何かが芽生えた気がした。

 いや心ではない。

 瞳の中でだ。

 赤い花びら、黒い茎。

 蕾が華を咲かす。


 俺の視界が晴れる。

 近くに香織がボロボロになって倒れてる姿が見える。

 身体を起こす。

 全てが軽い。 

 身体も、頭も、意識でさえも。

 全てがクリーンだ。ランナーズハイってこういう気分なのかな。

 

 俺は携帯を無意識に高速で操作する。

 

 『暴性の発動を確認いたしました』

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