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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第一章
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策略

 京介は俺の端末を握っている。


 「そ、それは俺の……」

 「そうだね。これが君の端末みたいだね」


 京介がニッコリと笑う。

 しかし、俺には嫌な予感しかしなかった。

 俺を助けてくれた京介が何故端末を握ってるのか疑問だった。


 「さて、見せてもらってもいいかな?」


 改めて確認してくる京介。

 

 「端末なら京介も持ってるんじゃないのか?」 


 京介は一旦間を置いて、口を開いた。


 「持ってるよ。君たちのように地上の端末じゃなくて、ちゃんと地底国の端末をね」

 「なら、俺の見る必要なんてないんじゃないのか!?」

 「いやあるよ。君たちを全員殺すためにね」


 俺は京介の言葉に驚愕した。

 京介の口から漏れる言葉に何の躊躇いもなく、復讐心に満ちていた。


 「こ、殺す……? 冗談だよな?」


 京介は先ほどまで放っていた微笑みをやめる。


 「冗談? それはこっちが聞きたいよ。何で僕の仲間を殺した地上人を簡単に生かしておかなければならないんだい? 君のご飯に毒を混ぜたけど、何故か効果はないしね」


 俺のハンバーガーに毒が入っていた?

 どうゆうことだ?

 毒が入ってるのなら今頃俺は死んでるのでは?


 「で、でも、毒なんか入ってなかったじゃないか。それに魔物からも助けてもらったし……」


 俺は立ち上がり京介の真意を知るために瞳を見つめる。

 さっきまでは、優しそうな人だなと思っていた。

 しかし、今の京介の瞳から感じるのは計り知れない憎悪。


 「魔物から助けたのは、地上人が魔物に倒されるのは癪だっただけ。ご飯に毒を混ぜたのは君を殺すため。もういいだろう?」

  

 京介は種明かしはお終いと言わんばかりに、ホルスターから一丁のロングバレル式の白いハンドガンを右手で握る。


 「な、なんの冗談だよ……」

 「冗談じゃない。本気だ。僕は地上から追放された人間のうちの一人。君たちのように地底国に適合者として招集された者。――そして、僕の仲間を殺し、追放した地上人を許せない人間の一人でもある」


 銃がこちらに向けられてる。

 生唾を飲む。 

 京介の瞳には俺は虫けらのようにしか映ってない。

 こうなれば仕方ない。


 京介は引き金を何の躊躇いもなく引いた。


 緑色の光線がこちらに飛んでくる。

 普通の銃に光線なんて撃てない。

 恐らく魔術の類の速度重視にした物だ。


 俺は左手を前に出して、光線を食い止める。

 魔術が俺の手によって溶けていく。

 辺りからは煙が漂う。


 「まさかこの距離で防がれるとは思ってなかったよ」


 京介は冷たい笑みを浮かべながら俺のいる煙が上がってる方を見つめる。


 俺は京介の後に回り込む。


 「でも、君がそこから出てくる事は容易に想像できたよ」

 

 京介は再び魔銃をこちらに向ける。


 「京介!」


 俺は殴りかかった。

 京介は躊躇わずに引き金を再び引いた。


 光線は俺に命中せずに木目の屋内を貫く。

 俺は京介を殴るフリをして、端末を取り返す。


 そして、そのまま数歩下がる。

 

 「なんだ。それが返して欲しければ返したのに」

 「でも、返してくれそうな雰囲気は出てないぞ」

 「そうかい? まぁ返す前に殺してしまおうと思ってたけど」

 

 京介の背中に魔術の翼が生える。

 

 「さて、林檎君。こんな事をした僕を憎くはないのかい?」

 「どうでもいい」

 「そうか。でもいずれ気付く。君が生き残ろうが地底国(ここ)で死のうが日本という世界の屑さが分かるよ」


 京介は魔銃をホルスターにしまい、二対の刀を取り出す。

 刀身に赤いオーラが纏わりついてる。

 

 俺は構えを取る。

 

 「素手の君に刀を使うのは少し心もとないけど。今は気にしていられない。君をこの世から救済しなければいけないからね」


 京介の笑みがどこまでも冷たい。

 このままでは俺は殺される。

 先ほどの偽タヌキを殺した力を見れば容易に想像できる。


 煙を上げる京介の木目調の家の中で俺と京介は見つめ合う。


 ふっと京介が消える。

 俺の背後に刀を振り下ろす京介の姿が見える。

 

 これは腕を切り落とされる!?

反射運動で俺は避けていた。

 咄嗟に判断した俺は後方に飛ぶ。


 俺がいたところは京介の手によって崩れ落ちていた。

 内心こんな奴相手にどうやって勝つのか分からなかった。

 

 「よく避けたね。君レベル1だろ? なのにその速度は尋常じゃないね」

 「あんたもレベル1の俺を殺すのなんて簡単だろ?」

 「そうだね」


 背後に再び京介が襲いかかる。

 

 これは見切っている!

 後に避ければ――


 「空竜派二刀流二の型――桜!!」


 京介が淡々と剣技の名前を呼ぶ。

 京介の刀は、赤いオーラからピンク色に変わる。

 辺りが無数に斬りつけられる。


 背後に飛ぼうとした俺も斬りつけられる。

 何回斬りつけられたなんて、わからない。

 これは京介による連続剣の攻撃なのだろう。

 しかし、あまりにも速すぎて京介の身体の動きが見えない。


 家は倒壊する。

 崩れ落ちた外の景色は相変わらずの茜色。

 目の前に立っているのは、憎悪に包まれた美青年――京介。

 

 「さて、林檎君。何故まだ立っていられるのかな? レベル1の防御力なら死ぬのが普通なんだけど」

 「俺は……まだ教わったばかりで何も教えてない」 

 

 京介は俺を哀れな生物を見るような目つきで睨む。

 二対の刀を握る力がギュッっと更に増している気がする。

 

 俺は立っているのがやっとだった。

 洋服は斬りつけられ、ところどころが破れ、血が染みついてシャツは真っ赤だ。

 

 だが倒れるわけにはいかない。


 「お前の仲間は俺らに復讐しろって言ったのか!!」


 京介に叫び問いかける。

 

 「そんな事言うわけないじゃないか。彼ら――アリスも、僕に最後の言葉を伝える前に死んだよ」

 

 京介の表情は当時の事を思い出してるのだろうか。苦痛が浮かんでる様子だ。

 刀身を包むオーラがピンクから禍々しい黒に変わる。


 「なら、最後まで戦い抜けばよかったんじゃないのか!!!」

 「最後? ああ戦ったよ。僕は戦ったよ。地上の上層部を倒すために。でも、気付いたら僕以外には皆いなかった。この孤独が君に分かるかい?」

 「知るわけねーだろ!!」

 「だよね。なら君にそんな事を言われる資格は――」

 「だが、俺なら違う事をする。確かに京介が何をされたのかは知らないし、俺が同じ事をされたら憎むと思う。けどな、俺がもし死んでしまったら、かつての仲間に仇打ちなんて頼まない。それは絶対だ!」


 俺が叫ぶと京介の表情がみるみる変わる。

 青ざめ初め、二対の刀からはオーラが抜ける。


 「そ、それは君の事だろう?」

 「京介! 逃げるな!! 復讐していたほうが心が楽になるからって逃げるな!!」


 京介は俯いた。

 理解したのかしてないのかは分からない。

 けど、心に俺の意見が届いてくれたらいいなと思ってる。

 

 京介は顔を上げ、俺を見つめる。


 「戯言を言うなぁあああああ!!!」


 京介は狂ったように声を上げ、二対の刀にはどす黒いオーラが再び纏われる。

 そして、俺のほうへと飛んでくる。

 

 もういい加減に、俺も戦わなければいけない。


 京介の為に。京介のかつての仲間の為に。


 右拳を大きく振りかぶる。


 京介の刀が迫る。

 

 京介の刀と俺の右手が交差する。


 「次元破壊ディメイション・ディストラクション!!」

 「空竜派二刀流一の型――雪!!」


 俺の拳と二対の刀は激しく交差する。


 次元破壊は異能を打ち砕く力。

 きっと京介の刀にも効くのだろう。

 

正面衝突した俺の拳と京介の刀。

 木目の床が吹き飛ぶ。

 砂埃が大きく舞う。

 俺の右拳もミシミシと軋む音がする。

 京介の顔にも苦痛の表情が浮かんでる。

 刀も震えている。


 俺と京介は後方に吹っ飛ぶ。


 「ぐぁああああああ!!」

 「くっ!!」


 俺は地面に尻もちをつく。

 京介は何とか足で着地したようだ。

 

 再び起き上がり、拳を構える。

 京介も刀を構える。


 「僕の決意を踏みにじる気か君は?」


 京介は刀を俺に向ける。

 

 ――そうだ。俺はあんたが間違ってると伝える。

 

 「あんたは間違ってる!!」


 俺は叫び、走り出す。

 

 「うぉおおおおおおおおおおおお!!」


 京介は具現化していた翼で宙を舞う。

 俺の拳は空を殴る。


 「もういい。君のような世界の良いところしか知らない人間には一度、僕らが味わった絶望を与えるべきだね」


 京介は二対の刀を鞘にしまい、ホルスターから二対の魔銃を取り出す。

 蒼い翼から水色のオーラが纏っている。


 「ぐっ!」

 

 俺は歯をかみしめる。

 これはきっと、俺が耐えるか、京介の端末の電池が切れるかで勝負はつく。


 京介の翼の蒼い翼が限界まで広がる。

 蒼い翼は世界のエネルギーを吸う。

 京介はボソボソと魔術を唱える。


 詠唱し終えたのか、京介は俺を睨む。

 

 「終わりだ。地上人――火ヶ崎 林檎!!! 魔術総攻撃(フル・バースト)!!!」


 京介が高らかに叫ぶ。


 熱光線が樹木のような太さで俺に迫る。

 二対の魔銃からは風光線がところどころから発射されている。

 一体幾つもの光線を受けてるのだろうか。

 

 視界が真っ白になる。

 

 頭は痛みを刻み始め、身体からは血が出るのがわかる。


 




 「もう終わりだ。この攻撃を単体で食らって生き残る方が難しいんだよ」


 ゆっくり京介は降りてくる。


 地面に足をつける。


 「……そうか。じゃあ俺ぁ珍しい人間のうちに入るのか」


 京介の顔に焦りが見える。

 

 「な、何でレベル1が生きて……」


 レベル1? ああそうだった。俺はまだレベル1の弱者だった。

 だが、そんなの関係ない。

 俺は一度、京介を殴らなければいけない。

 

 「京介。俺はお前を夢から覚まさなきゃいけない」

 「夢ならとっくに冷めてる!!!」

 「寝言は寝てから言え」

 

 俺は京介に足をふらつかせながらも、近づく。

 

 教えてやる。


 俺は復讐とかで逃げる奴が一番嫌いなんだ。

 ゲームでも、ラノベでも、アニメでも。

 だからこそ、現実でそんなにウジウジしてる奴を見ると吐き気がしてくる。

 京介。俺はお前が本当はどんな人間なのか知ってみたい。

 

 だからこそ、お前を……お前の作られたその人格を……。


 「俺が壊す!!」


 俺は思いっきり右拳を振りかぶり、京介の顔面を狙う。


 「くっ! 林檎ぉおおおおおお!!!!」


 京介も電池がないのか、それとも咄嗟の判断なのか知らないけど、拳を繰り出す。


 「うぉおおおおおおおおお!!」

 「林檎おおおおおおおおお!!」


 俺と京介の叫びは重なる。

 やがて拳も重なる。


 磁石のように重なる両者の拳。

 俺は空いてる左手で拳を作る。


 「京介の歪んだ心は俺が壊すんだぁああああ!!!」


 俺の左拳は京介の頬に炸裂する。

 

 「次元破壊ディメイション・ディストラクションぉおおおおおん!!!」


 そして、京介は遠くまで吹っ飛んだ。

 

 恐らく十メートルほど飛んだと思う。

 俺にあんなに人を飛ばす力はない。

何故、俺の拳で吹っ飛んだんだ?


 血だらけの身体で、最後まで立ちつくす。

 京介を見つめる。

 

 俺の飛ばした方角に京介はいなかった。


 「なっ! どこに……ッ!!」


 俺が京介を探していると、禍々しいオーラに刀身を包んだ刀が胸を貫いていた。

 

 口から吐血し、胸からは大量の血が流れる。

 俺の脚は限界に到達し、膝をつく。

 

 俺は後を振りかえる。


 「きょ……京介……」


 京介の表情は分からない。

 

 「残念だったね。僕は元からこういう性格なんだ」


 京介の頬には俺の殴った後はない。

 つまりわざと、吹っ飛ばされたフリをしていた……!?


 「さようなら。火ヶ崎 林檎君」

 

 俺の視界は真っ黒になり、地面に前のめりになって倒れた。

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