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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第四章
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散りゆく命

 香織は月女神の弓(アルテミスボウ)による最大攻撃奥義の月女神の矢(アルテミスアロー)を放とうとしている。

 御門の姿をしたジジイは、斬り刻まれた身体で俺達を順に視線を移す。

 その先はすいか、めろん、香織、俺とゆっくりと見ていた。

 

 「これを食らえば、少しは傷ぐらいつくでしょ?」

 「きひひひひ。そうだといいなぁ!」

 

 香織は躊躇わずに弓の弦を離した。

 矢は熱光線となり、御門=ジジイに迫る。

 凄まじい轟音とともに、周りにあった民家は破壊される。

 月女神の矢によるコンクリートとの摩擦で、地面には煙が上がる。

 俺らは衝撃に吹き飛ばされないようにするのに精いっぱいだった。香織の最強奥義は、見ないうちに随分と力を増していたのが分かる。

 電池消費五十パーセントの力は伊達じゃない。

 

 「……やったか!?」

 「これで終わればいんだけど……」


 俺は香織に近づき、煙の中を伺うようにして見る。

 あれだけのダメージを生身で受けたならば、無事では済まされなさそうだ。

 すいかとめろんも、俺達の元へと走り寄ってくる。

 

 「建物……壊しちゃいましたね」

 「にーちゃんが弁償すんの?」

 「な、俺が払えるか!」


 そんなやりとりをしてると、俺らの足元が大きく揺れ始める。この揺れは体感で現実世界の震度七レベル。立っているのがやっとだ。

 俺はこの攻撃を食らって、脳内にとある光景が過る。それは、この世界で初めて御門と出会ったときの事。あのとき、御門は鈴木 健太に地震的ダメージを与えたかと思うと、地震の揺れを対象者の身体の内部にまで移動させた。そして、人内地震を起こした対象者は身体全身が揺れ、意識がなくなる。

 このままではマズイ。そう感じた俺は全員に向け大声を上げる。

 

 「ここから違う建物に飛び移れ!」


 俺がそう叫ぶと、三人は一斉に近くの建物へと避難を開始する。

 だが、俺だけは動かずに一人、地面に手をかざし叫ぶ。

 

 「次元破壊ディメイション・ディストラクション!!」


 俺の手から、ガラスを割ったかのような地割れが発生し、大地の揺れは収まる。そして、煙の中から、高速移動をしながら俺に立ち向かってくる御門=ジジイ。

 俺は咄嗟に左掌をかざし、御門=ジジイからの直接攻撃を防ごうとする。

 

 「まずは貴様からだ!!」

 「俺はそんなんで、やられたりしない!」


 御門の顔面を俺の左手が掴む。

 高速移動による衝撃を俺は生身で実感する。これは、高速移動による余波だ。それが攻撃になるというのは、恐らく並み大抵の俊敏力ではない証だ。

 吹き荒れる余波に俺は逆らいながら、右拳を作りだす。このまま、女を殴れないなんて言っていたら、死んでしまう。今だけは神様に許してもらいたい。なんたって中身は男であるジジイだ。

  

 「うぉおおおおおおお!!」

 

 俺の拳は余波を力づくで破り、御門の顔面に拳をヒットさせる。

 力の上がった俺の攻撃は、異能の効果で相手の防御力をゼロ数値に戻すことができる。そのおかげで、今、御門は遠くまで吹っ飛んだ。

 再び煙が立ち込める。


 「クソっ! 俺を殺れるもんなら殺ってみろ!!」

 

 俺は右拳を作ったまま、煙の中にいるであろう御門=ジジイに宣戦布告をする。

 煙が上がっている所から、不気味な笑い声が発生しだし、やがて女子高生のシルエットが鮮明に浮き出る。

 やはり、俺の攻撃程度では倒せない。そう頭では分かってても、歯痒いものがある。

 御門=ジジイは首を左右に振り、骨の音を響かせる。

 

 「随分と成長したようだな。やはり、あのときの力のせいか?」

 「どうだろうな。お前の意識がこの世から消えれば、分かるかもしれない」

 「戯言を……だが、貴様は強い。認めてやろう」

 「それは、ありがたい」

 「だから、わしは――こうするのだ!」

 

 御門の姿をしたジジイの右手から杖が現れる。

 そして、魔術を詠唱するジジイ。コイツの魔術詠唱は高速。それに加えて使用する魔術は高位系統の物ばかりだ。

 ならば、俺が突っ込んで止めればいい!

 俺は足に全神経を降り注ぎ、地面から爆発的なスピードでジジイに迫る。

 その間に、素早く左拳と右拳を作り、奴の魔術を破壊し、もう一度ダメージを与えるつもりだ。


 「極氷の――」

 「黙れ!!!」

 

 俺の一喝と共に吹き飛ぶ御門。

 御門が元に戻れれば、後で何回でも土下座くらいしてやるつもりだ。

 魔術を詠唱し損ねた御門=ジジイは口端から赤い鮮血を垂らしている。その瞳には、俺は映っていなかった。

 

 「貴様、気付いていないのか?」

 「何にだ」

 「わしの杖は、今どこにあるのかな?」

 

 いつの間にか、杖はジジイの元になかった。

 どういう事だ!?


 「さて、まずは一人、確実に殺すとしよう」


 ジジイの瞳の先には、すいかがいた。

 すいかは呆然とした様子で俺の戦いを見ていた。

 

 「すいか! そこから離れろ!!」

 「え、にーちゃ」

 

 その瞬間。すいかの腹部を杖の切っ先が貫いていた。

 すいかは口から血を吐きだし、身体は地面へと落ちる。

 ま、まさか……。


 「すいかっ!!!」

 「ッ!!」


 めろんが急いで、すいかに駆け寄る。

 香織の表情も青ざめている。

 俺は歯を食いしばりながら、目の前の御門=ジジイに音速で詰める。

 

 「テメェええええええええええええ!!!」

 「まずは一人! ひひひひひ!!!」


 俺は御門=ジジイの頬を思いっきり殴り飛ばした。

 それでも、殴り足らず吹っ飛ばした所から更に、ジジイに迫り何度も殴り飛ばす。今、ジジイが御門の身体を借りている事など、すっかり忘れていた。

 御門の口からは血が微かににじむ程度にしか出ていない。

 

 何度殴ったのか、カウントできなかったが、何度目かで御門=ジジイは立ち上がり、地面に血を唾を吐くかのごとく吐いた。

 そして、再び笑いだした。

 

 「ひひひひ。そうやって我を忘れるたびに、仲間が一人消えていくのだぞ」

 「きゃあああああああああああ!!」

 「め、めろん!?」


 俺が振り返ると、雷の竜巻によってボロボロになった、めろんの姿が目に入った。

 そして、めろんはそのまま、遠くのほうへと身体を投げ飛ばされてしまった。

 雷の竜巻は消え、香織は腰を抜かしていた。


 香織は立ち上がり、氷翼の剣(アイスウィング)を握り締め、ジジイに向かって走り出した。

 御門の姿をしたジジイは、後方に距離をとり魔術を詠唱し始める。

 俺も香織と共に、ジジイに再び殴りにかかる。

 

 「うぉおおおおおおおおお!!」

 「こんのぉおおおおおおお!!」


 俺と香織が発狂しながら、ジジイに殴りにかかる。

 ジジイは魔術の詠唱を完了させ、香織に人差し指を向けた。


 「極炎の竜巻(フレイガ・ハリケーン)!」

 

 俺と香織の目の前に炎の竜巻が浮き出る。

 俺は右拳で、火柱に渾身の一撃を繰り出す。

 炎の渦は消え、香織は先へと突撃する。

 

 「めろんとすいかの仇イイイイイイ!!」

 「寒いんだよ。地上人ごときがああ!!」


 香織の剣は御門=ジジイには届かず、ジジイの杖によって止められている。付与効果、物理攻撃完全防御。

 杖の所持者であるジジイには絶対にダメージは届かない。俺だけがダメージを与えられる。ならば、俺も駆けている足を止めるわけにはいかない!!

 

 「かかったな! 地雷爆発(ボム・マイン)!!!」


 俺の足元に魔法陣が浮き出る。

 光る足元。そして、鮮明に蘇るダメージ。

 怒り狂っていた俺の招いたミスだ。

 この先数秒は死しか待っていない。俺は二人の仇をとってやれないのか?

 このまま死ぬのか?

 二人の女の子を死なせておいて、こんな簡単な罠で死んでいいのか?

 よくない。

 今、発動しないで、いつ出るんだ! 暴性!!


 「こんな所で死ねるかあああああああ!!」

 「終わりだ!」


 俺の周囲を爆発が取り囲む。

 こんな爆発ダメージを受ければ、間違いなく状態異常、部位欠損だ。

 だが――。


 「な、貴様、また――!」

 「お前を殺すまで、俺は死なない!!」


 『暴性が発動しました』


 今の俺の格好は前回と同じく、レベル最大の新世界への防具(ザ・ニューワールド)シリーズ装備。

 加えて、限界突破(リミット・エクシード)

 全てが数値化されたこの世界で、俺は最強となる。

 

 ふと視線を移すと、すいかの死体に光のスポットライトがかけられている。

 残念ながら、完全にすいかは死んだ。

 遠くの方でも、同じく光のライトが当てられている。めろんが飛ばされた方向だ。

 俺は瞳を閉じ、めろんとすいかに誓う。

 

 俺はお前らの仇を……今、ここで討つ!!


 瞳を開け、俺は超瞬間的な移動で御門=ジジイの後に立つ。

 そのまま、右拳にありったけの力を滾らせ、そのまま御門の身体へと走らせる。

 俺の拳は御門の背中にヒットし、御門は身体の関節をぐしゃぐしゃにしながら、吹き飛ぶ。

 俺はホルスターから、魔銃を取り出す。 

 香織はただ、呆然と俺の姿を見ていた。


 「氷坂。そこでじっとしていろ。俺がお前を守る」

 「う、うん……」


 俺は魔銃に自分の異能――次元破壊を全てつぎ込むイメージで溜める。

 ジジイの腕は関節を間違えながら、立ちあがる。


 「き、貴様は仲間の身体をここまでにして平気なのか!?」

 「今は土浦じゃない。今はジジイ、貴様だ。なら、俺はお前の存在ごと土浦を殺す」

 

 ジジイは、呪術特有の禍々しく黒々しいオーラを解き放つ。

 全ての関節が元に戻り、傷も修復していく。

 その姿は、もう――土浦 御門ではなく、怪人だ。

 だから、何だ。全てを打ち消す俺の銃の前には今。呪術など何の意味も持たない。


 「貴様ぁあああああああ!! わしらの念願の計画を邪魔するなぁあああああああ!」

 「計画? 娘一人救えないで何を言っている」

 「貴様に言えた事かあああああ!!」

 「そうだな。じゃあ、今出来ることをすればいい。それは――仇を討つ事だ」


 俺は何の躊躇いもなく、魔銃のトリガーを引く。

 見えない弾道は御門の姿をしたジジイに命中する。

 御門の身体を穿ち、大量の血が俺らの前に降り注がれる。

 

 「こ、これで……終わり……だと、お、思うなよ……」

 「何を言ってる。これで終わりだ」

 「残念だったな……最後の魔術を詠唱し終えた所だ」

 

 空を見上げると、隕石とほぼ同格の大きさのマグマが落ちてきた。

 まさか、最後の最後で詠唱を見逃すとは……。

 やはり、ヘッドショットを決めるべきだったかもしれない。

 御門=ジジイの口はそれ以上動くことなく、倒れている。


 降り注がれるマグマに、俺は魔銃を向けた。

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