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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第四章
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天翔る馬

 俺らは鍾乳洞を後にして、ジジイを追う為に帝都に向かう事にした。

 帝都までは距離が長く、とてもじゃないが歩きで行くのには時間がかかる。そのため、めろんの召喚獣である幻獣ことくーちゃんに乗って急ぐことにした。

 

 「何時ぞやは林檎殿に迷惑をかけてしまって、すまない事をした」


 白い鱗に、蒼玉を思わせる瞳の竜は頭をぺこりと下げた。動作が重々しいのは言うまでもないのだが、改めて謝れると何だが俺が悪いのかと思えてくる。

 くーちゃんには、めろんが後日召喚したときに叱っていたらしい。

 

 「あんときはいきなりで、びっくりしたよ」

 「我はこう見えて勘違いが激しいものでな」

 「うん。見れば分かる」


 俺は親指を立てて、くーちゃんに微笑んだ。皆が苦笑いで俺とくーちゃんのやりとりを見守る。

 そんな中、くーちゃんはめろんに視線を預け、俺達の脳内に言葉を吹き込んだ。


 「主、林檎殿に言わなくていいのか?」

 「い、いいんです……! 今は言わないでください……」

 「む、了解した」

 

 めろんが顔をトマトのように真っ赤にさせていた。

 何の話なのかは当然知る由もない。俺が首を傾げていると、皆は深い溜息を吐いて、やれやれと言った様子で見てきた。

 俺は悪い事はしてないんだがな。


 そして、俺達はくーちゃんに乗る。

 俺の両手で触れてしまえば、くーちゃんは消えてしまうので手を使えない。その為、俺は失礼ながら手を使わずに登らせてもらった。

 

 「あちしより大きいな!」

 

 ミフィーユはくーちゃんの頭に乗ると、先ほどまでいた地面を眺めている。そのまま、くーちゃんの全長も計っているようだ。

 くーちゃんは眉根を吊り上げて、ミフィーユを睨む。お互い幻獣同士仲良くしてほしいものだが、幻獣には幻獣なりの社会があるのだろう。

 

 やがて、俺らを乗せた白い竜は茜色の大地を飛ぶ。

 高度が上がっても、呼吸困難にならないのは、きっとここが地底国だからであろう。地上でこの高度では息ができるかすら怪しい。

 空の景色を眺めていると、ミフィーユは文句を呟いていた。

 

 「くーちゃんって弱そうだな……」


 くーちゃんはミフィーユの言葉に青筋を立てる。

 その事を知ってか知らずか、ミフィーユは竜の瞳の前まで行き、話しかけようとしていた。

 くーちゃんは虫でも見るかのように、ミフィーユを煙たがっている。

 

 「お主、邪魔なのだが」

 「ええ~! 別に平気でしょ? あちしの御母さんは平気だって言ってたもん!」

 「お主の種族は平気だろうが、我はダメなのだ」

 「え~やっぱり弱っちい竜なんだな!」

 

 俺も含め、全員黙って幻獣同士のやりとりを見ていたが、さすがに止めた方がいいだろう。十字郎が席を立とうとする。

 

 「弱いだと? 私は以前、バハムートと呼ばれ、人々の間ではそれはもう災厄とまで言われていたのだぞ?」

 「ふ~ん。そんなのあちし知らない。自分で自分の事凄いって言う奴は大抵しょぼいって御母さん言ってたよ!」

 「……」


 くーちゃんは黙ってしまった。精神的ダメージが強いのか、それとも早く退かせと言ってるのか。まぁ後者だとは思うが、このやりとりは以外と面白い。

 くーちゃんが不機嫌っぽいが。


 「ならば、今度聞いてみよ! 我は凄いのかと!」

 「ううん。聞いた事あるよ! 御母さんが求婚を迫られた白い竜がいたけど、返り討ちにしてやったって!」

 「……」

 

 くーちゃんストーカー疑惑。

 そもそも、お前ミフィーユの御母さんに負けたのかよ。どうしようもない幻獣だな。ストーカー疑惑は初見のときの印象で確信に近いな。

 というか、今はめろんに求婚行為をしないか心配ではある。一応人間と幻獣も結婚できて、子供も作れるそうだしな。ミフィーユが良い例だ。


 そんな感じで空の旅は、くーちゃんが武勇伝を語ろうとして、ミフィーユの親の武勇伝で口を閉ざされる。という流れが随分続いた。

 現在のくーちゃんの精神力は、香織にフルぼっこにされた俺並みと言っても過言ではないだろう。

 やがて、帝都に近くなってきたと報告を受けたあたりは、ミフィーユは疲れて眠っていた。すいかと一緒に寝ている姿が可愛い。

 そんな二人を見ていたら、微妙な表情で香織と洋子が見ていた。

 俺は幼女至上主義者(ロリコン)ではないって言った筈なんだが。

 

 くーちゃんから報告を受けた数分後。

 この大地に雲なんてない筈なのに、黒雲が空を埋め尽くし始めた。幼女二人も起き、皆が空を眺める。

 地上人ならば、このまま雨が降りそうだなと思うのは必然的だろう。

 やがて、くーちゃんの進行方向に雷が落ちた。

 水色の落雷は、激しさを増す。帝都に落ちてないかが心配である。


 「なんだなんだ!?」

 「ひぇ!? 雷魔法!?」


 すいかとミフィーユが慌てて前方をみやる。

 俺らも、ただ事ではないと直感し前方を睨む。

 落ちた所からやってきたのは、白く輝く何かだった。

 こちらに近づくにつれ姿が、正確に捉えられる。

 

 白い毛並み。何の汚れもない純白の翼。蒼い双眸。黄金に煌めく一本の逞しい角。そして、馬のフォルム。

 ――これはペガサスだ。主に童話などで出てくる天駆ける馬。一つ違う点を上げるとするならば、全長がくーちゃんと同等か、それ以上のクラスだ。

 途轍もなくデカイ。

 ミフィーユがくーちゃんに向け「くーちゃんより強そうだね!」と純粋な瞳で言われていたのが、不憫でたまらない。

 やがて、くーちゃんは進行を止め、目の前に立ちはだかるペガサスと相対した。


 『汝、ここから先への進行は許可出来ない』

 

 ペガサスの言葉が俺らの脳内に伝達される。どうやら、ここから先は進むなと言ってるようだ。逆に俺らはここから先に行かなければ、ジジイを止める事ができないのだが。

 

 『邪魔をするな。我は白銀の竜――バハムートであるぞ!』

 『我はペガサス。汝如き弱者がバハムートを名乗る出ない!』


 ペガサスに言いくるめられるくーちゃん。これは予想以上に酷い。ミフィーユにバカにされる辺りから、可哀相だとは思っていた。でも、同族のもしかしたら、同じくらいの年齢の幻獣に下に見られるってどうなんだ?

 もしかしたら、くーちゃんは最弱の幻獣なんじゃ……。

 

 「ここを通れないと、困るのよね。何とかならないかな? ペガサスさん」


 十字郎が説得を試みる為に、くーちゃんの頭部の先端まで歩く。

 ペガサスは十字郎を見るなり、鼻息を荒くするだけで、驚きとかの類のものは見られなかった。


 『汝、もしや元世界ランカーの谷戸門 十字郎殿ではないか?』

 「そうだよぉ! 俺様の事覚えててくれるのは嬉しいんだけど、どうせなら女の子が良かったかな!」

 『……我、一応雌であるぞ……』

 「……」

 

 十字郎の顔が固まった。これは酷い。

 もはや、幻獣に対する侮辱じゃないか? くーちゃんだって黙ってしまったじゃないか。いや、こいつが黙ってるのは弱いからか。

 それにしたって、退く気あるのか?

 

 『十字郎殿が何故そこにいる。我らと共に戦はないのか?』

 「何の事かね……。俺様は寧ろ、この世界を救うために今いるんだが」

 「そうね。私もその一人よ」

 

 十字郎に続き、洋子も相対し始める。

 今の洋子は鎧などを着用している、半武装状態だ。そして、ペガサスはその洋子の姿を視界に入れると、さすがに驚いた。

 

 『汝もそちらにつくとは……我々の計画に協力してくれないのか?』

 「計画や戦いって言っても、私達はあなたが通せんぼしてる先にいる筈の呪術ジャミング・インストールの根源を断つ為に動いてるのだけれど」

 『ふむ……何も聞いてはおらぬか……それもしょうがない事か』


 コイツは何か知ってるような口ぶりなんだが。

 そもそも、コイツが道の障害をしてるせいで、この世界がなくなったらどうする気だよ。

 

 『だが、我の主の敵というのならば、我も退くわけには行かぬ。早々に立ち去りを願いたい』

 「そういうわけにも行かないのよ。俺様達はアンタを倒してでも、この先に行かなきゃならないんでね」

 「そうよ、私達の障害になるというのなら、それ相応の覚悟があると見ていいのかしら?」

 

 十字郎と洋子は端末を片手で、ディスプレイを見ずに操作して武器を具現化させる。二人とも、武器を構え、ペガサスを見据える。

 ペガサスは鼻息を深く吐き、やがてコチラを睨む。

 香織とめろんとすいかも、遅れて武器を具現化させる。

 香織は月女神の弓(アルテミスボウ)氷翼の剣(アイスウィング)

 めろんは杖。すいかは暗殺双剣(デュアル・アサルト)を具現化させる。ミフィーユはただ威嚇してるだけだ。犬みたい。

 

 『我も退く事はできぬ! 世界ランカーのお主達には申し訳ないが、ここで倒れてもらうぞ!!』


 脳内に激しく言葉をぶつけるペガサス。

 そのペガサスの鼻の先には魔法陣が浮かんでいる。これは魔術を詠唱している証拠だ。ならば、俺が先頭に出るまでだ!


 『激光の蜘蛛巣(ホーリー・ネット)

 「次元破壊ディメイション・ディストラクション!!」


 光の網が俺らに迫るが、俺の右手によって魔術は雪のように溶ける。

 それを合図と見た、皆は駆けだし、それぞれの行動に移す。

 まず十字郎がくーちゃんから、ペガサスへと乗り移るために跳び、槍回しながら突き刺そうとする。

 

 「食らいな! 激光の高速槍(ホーリーランス)!!」


 ペガサスにヒットさせるも、さりとてダメージは少ない見たいだ。十字郎が顔をしかめながら、ペガサスからくーちゃんへと戻ってくる。


 「甘いわね、オジサン。私ならそんな優しい事はしないわよ! 薔薇光線剣(ローザーソード)!!」


 洋子の薔薇色の刀身の剣から、刀身の色の光線がペガサスめがけて走る。

 光線はペガサスの頭部を狙っている。銃などではヘッドショットと呼ばれるあれである。一番難しい所を狙う辺り、さすが世界ランカー第一位の姉だ。

 光線はペガサスの身体には触れずに、黄金の角に触れる。黄金に煌めいていた角は、容易く折れてしまう。

 ペガサスが悲鳴を上げながら、徐々に高度を落としていく。

 

 「早く退きなさい! あたしたちの邪魔をしないで! 金翼の鷲(ゴールデン・イーグル)!!」


 香織の放った矢は、金色の鷲。

 ペガサスの脇腹めがけて、矢は走り出す。そのまま、金色の鷲はペガサスを貫通し、ペガサスの腹からは大量の血が吹き出る。

 バランスを失ったペガサスは大地に向かって、ゆっくりと身体が降下する。


 「ごめんな……さい! 極炎の竜巻(フレイガ・ハリケーン)!!」


 めろんが杖を掲げ、魔術を詠唱する。

 ペガサスの身体、全てを炎の竜巻が覆う。やがて、こちらの方にまで炎の火柱が届いてくる。この暑さに覆われているペガサスの体力消耗は激しいだろう。

 やがて、炎が止むと黒焦げになり横たわるペガサスが見受けられる。

 そこに、ミフィーユとすいかが突撃をかける。

 

 「終わりだ! 暗殺高速六連撃アサルト・ハイスピード・シックス!!」

 「ギガントハイキック!!」


 すいかの双剣は、紫のエフェクトを描く。すいかは今の俺の目にも止まらぬ早さで、ペガサスを無残にも切り刻んでいく。

 最後に、ミフィーユによる軽い蹴りがペガサスに当たる。

 蹴りがペガサスの顔に触れると、凄まじい轟音を大地に響かせ、ペガサスの身体が数十メートルに渡って吹き飛ばされる。

 ミフィーユの力半端ない……。


 ボコボコになったペガサスに俺らは近づいた。

 これだけボロボロになったペガサスってのも、見れるもんじゃないな。というか、見たくても見れない。

 やり過ぎた感を全員抱きながらも、ペガサスを見上げる。


 『汝ら……そうまでして、この先へ行きたいか』

 「ああ、俺らはこの世界を救う義務があると思ったからな」

 「腐敗物が偉そうにリーダー面してんじゃないわよ!」

 「す、すいません……」


 香織に言いくるめられてしまった俺。

 しかし、ペガサスもこれだけでは終わらなかった。

 あれだけボロボロになったペガサスは立ち上がり、俺らを見降ろす。

 

 『我もここを通すわけにはいかないのでな! 貴様らを殺す!!』


 俺らの脳内に言葉を響かせると、ペガサスは黒々としたオーラを纏い、傷がみるみると埋まって行く。毛並みは黒。翼も黒。角は復元され黄金の煌めきを戻す。そして、瞳が赤くなる。

 ペガサスの言葉はもう俺らの脳内には届かなかった。代わりに、低く竜の咆哮にも似た叫びが俺らの耳に入る。

 この状態は、呪術の魔宝玉(エクスジュエル)を飲み込んだ者が、追い詰められた時に発するオーラそのものだった。

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