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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第四章
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ジジイの武器

 ジジイは両手を擦りながら、俺たちへと近づいてくる。

 いつもは閉じられている瞳が、鋭く俺と御門を射抜く。

 

 「永続式呪術ジャミング・インストール?」

 「そろそろ、そいつが目覚めるのではないかと思いまして」


 御門の背筋が張っているのが分かる。

 俺を殺しに来たって事か?

 それとも、また別の……。


 「一体何しに来た」

 「黙ってくださいませんかね? レベル1の火ヶ崎 林檎さん」

 「お前何で俺のレベルを……」


 ジジイは俺へと視線を移す。

 その際に放たれた眼光は、俺を貫くのなど簡単と言っている。

 御門は俺とジジイの間を、遮るかのように入ってきた。


 「あなた、誰かの命令で動いてるの?」

 

 御門もジジイを睨む。その視線はジジイの物よりも強く、またジジイ自体をこの部屋から退出させようとしている。

 ジジイも御門が間に入ってきた事により、立場の分をわきまえたのか、半歩下がる。

 

 「神様……」

 「何よ。文句でもあるのかしら」

 「いえ……そいつが目覚め次第、神様が儀式をすると言っていた筈でしたので……私少々戸惑っております」


 恐らく、御門の別人格が俺を捉えたときに、その永続式呪術とやらをかけるよう指示したのだろう。

 今の御門は主人格であるから、別人格の下した命令を撤回するであろう。

 

 「とりあえず、永続式呪術は不問にします。コイツとも話したいから、一回部屋を出てくれるかしら?」


 御門は腰に手を当てて、ジジイに命令する。

 ジジイは戸惑いながらも、口端を吊り上げ不気味に笑った。

 

 「あなたは神様ではありませんねぇ……。私は『神様』が言う事にのみ従います。今のあなたは神様ではないっ!」


 ジジイは目にも止まらぬ速さで、端末を取り出し高速操作でナイフを具現化させる。

 このジジイの端末の使用っぷりをCMで流せば、携帯電話会社も売り上げが伸ばせるのではないかと不本意ながら思ってしまった。

 ジジイの指の間にナイフが、それぞれ握られている。全部で八本だ。

 御門も端末を取り出すが、その前にジジイがナイフを御門に向け投擲する。

 

 「くそっ!」


 御門はそれだけ呟き、ナイフを両手で弾く。

 異能を使ったわけでも、魔術を使ったわけでもなく、生身の両腕で弾いた。


 「さすがは神様の身体を使うだけあって、ステータス数値は高いですねぇ」

 「そりゃあ今の私は限界突破(リミット・エクシード)を着けてるからね!」


 ジジイは不敵に笑う。

 今度のジジイは端末を片手に、魔術を詠唱する。

 

 「極炎の大爆発(フレイガ・ラージボム)!!」


 加えての高速詠唱に両手を手錠で抑えつけられてる俺は、ベットから転がり落ちる。

 目の前の御門は、炎系の魔術を食らっても平然としている。

 この鍾乳洞が炎に包まれている中、御門は口を開く。

 

 「驚いたわ。まさか、あなたが最高位系の属性魔術を使えるなんて」


 最高位魔術……魔術の属性には小・中・高とある。

 分類的に無印・激印・極印と別れている。

 風属性で例えるならば、風・激風・極風だ。

 

 俺の位置からでは、ジジイの姿は見えない。

 猛り狂う炎の中、ジジイが御門に対して突っ込んできた。


 「そっちがその気なら、私だって!!」


 御門は端末を操作して、金色に輝く大木槌を具現化させる。

 それを肩に担ぐと、正面突破してくるジジイに叩きつけようと振りかぶる。

 ジジイは腰に忍ばせていたナイフを一本取り出す。

 御門はなんの躊躇いもなしに、ジジイに大木槌を叩きるける。

 

 「えりゃあああああああ!!」

 「なんのこれしきっ!」


 ナイフと大木槌が交差する。

 その瞬間に、辺り一帯が再び爆発にも似た光が照らす。

 煙が巻き起こり、二人の姿は見えない。

 そんな煙の中から、大木槌が俺の顔付近に飛んできた。


 「んなっ!」


 大木槌に傷などはない。

 煙が晴れると、そこい立っていたのはジジイだけだった。


 「……まさかわし自身が、神様と戦う事になろうとはな」

 

 ジジイの目前には、御門が倒れている。

 

 「土浦ぁ!!」

 「っく……」


 御門は立ちあがろうと、必死に両手で起き上がろうとする。

 しかし、実際には力が入っておらず、生まれたばかりの馬のように立てなくなっていた。

 

 「お前……土浦に何をした!」

 「黙れ汚れた地上人が何を言う! 貴様ら地上人のせいで、我々がどんな仕打ちを受けたのか、貴様に分かるのか!」

 

 ジジイには憤怒の色が浮かんでる。

 これまでの隠居しているような印象などではなく、恨みを持った軍人のようだ。

 そのジジイの鋭い瞳に、俺は撃ち抜かれる。


 「俺らが……仕打ち?」

 

 俺は呟きながら、ジジイを見つめる。

 ジジイの瞳はまだ鋭利だ。鋭利なまま口を開く。


 「そうだ。貴様ら地上人と我々。その顔ならば知らないのだろうが、貴様らは事あるごとに我々地底人を奴隷として連れて行くのだぞ!!」

 

 奴隷……? まさか、俺らの時代にまだそんな事をしてる奴がいるのか!?

 そんな……地上は、世界は、一体どこまで醜いんだ!?

 その為に……京介やアリス、十字郎に姉の洋子は戦ったのか!?

 俺の顔は絶望の色が、浮かんでいるだろう。ジジイは俺の表情を見て、ナイフを新たに具現化させる。

 

 「わしの娘も……地上人に連れて行かれた一人だ。貴様に利用価値があったならば殺さないでおいても良かったが、幸いと言うべきか、レベルが1ではこの世界ではどうしようもないクズだ。雑魚だ。わしの娘の仇を……」


 ナイフを力強く握るジジイには、俺を殺す躊躇いは一切ない。

 殺人鬼などが振るうナイフではなく、また俺個人に対して、当てられた瞳でもない。

 その瞳には俺は映ってない。映ってるのは純粋なる地上人への復讐だけだ。


 俺へとナイフを思いっきり振りかぶり――そのまま、寝転んでいる俺へナイフを一閃させる。

 瞬間、ジジイが轢かれる音がする。

 抵抗する事もできなかった俺の視線に映ったのは、大木槌を振るった御門の姿だ。倒れていた御門の頭部には血が垂れていた。


 「ふん、私がこの程度で拘束できると思ったら、大間違いよ!」


 御門は俺を見ながら、ジジイに叫んだ。

 ジジイは吹き飛ばされ、壁に減り込んでいる。

 顔を上げると、ジジイの口からは大量の血が出ていた。

 御門の一撃を食らった事によるダメージは思いのほかデカイ。ならば、ジジイのステータス自身も左程強くはない筈だ。

 

 「小娘が……黙って言う事を聞いてれば、この世界のシステムを教えたわしを殺そうとするか」

 「黙りなさい! あんたこそどっちが上の人間か、忘れたとは言わせないわよ!」

 

 ジジイと御門の視線が交差し、ジジイは減り込んでいた壁から立ち上がる。


 「何を言っている。初めからお前など利用して、殺す予定だったに過ぎなかった玩具に決まっているだろう……」

 「その玩具が今から、殺してあげるわ!!」


 ジジイは御門を睨んだまま、端末を操作する。

 今度はナイフなどではなく、木の杖だった。

 浮いている杖を掴む。

 

 「な、まさかコイツまさか武器の所持を二つ!?」

 「違うわ。コイツのナイフはただの投擲道具。本命はあっちの杖よ」


 俺の問いに御門が答える。

 御門は大木槌を拾い上げ、回転させながら肩に担ぐ。

 

 「さぁ、かかってきなさい。老害」

 「どっちが害だが、教えてくれるわ!!」


 ジジイは杖を片手に御門に突っ込んでいく。

 御門も大木槌を棍のように振りまわしながら、ジジイを迎える。

 ジジイは杖を逆に持ち、鋭利な方を御門を突き刺しに向かう。どちらかというと、今の杖の役割は槍のようだ。


 「死ね!」

 

 ジジイの突き刺す杖は、御門には届かなかった。

 御門は片手で杖を受け止めていた。

 

 「あんた、根本的に勘違いしてるわね? 私はレベルの最高到達点の1000よ? 舐めてもらっちゃ――困るわ!!」


 御門は片手で大木槌をジジイめがけて振るう。

 ジジイの顔に大木槌が減り込もうとする――が、大木槌がジジイに触れていない!?

 

 「たかが物理攻撃。わしに届くと思ってるのか?」

 「な、さっきは効いたんじゃ……」

 「杖の付与効果……物理攻撃完全防御だ!」


 ジジイは杖の切っ先を御門に向け、刺そうとする。

 御門は後方に飛び退き、回避する。

 

 「付与効果……だと……!?」

 

 以前、めろんの幻獣こと、くーちゃんと対峙するときに香織の月女神の弓(アルテミスボウ)に飛ぶ機能があると言っていた。

 俺は武器を所持していないから、分からない。

 ジジイのような特殊効果は、反則的に近い!


 「ふん、杖は魔術攻撃に特化した武器だ。だから、大体の杖には付与効果が二つある」


 ならば武器自体に付与効果が基本はある事になる。

 それだけで、結構チートなのでは?


 「そう。教えてくれてありがとう。それなら魔術を使えば良いだけの事よ!」

 「貴様が魔術? 笑わせるなよ!!」

 

 ジジイは大笑いしながら、魔術を高速詠唱する。

 御門は端末の魔術詠唱表をちらちら見ながら詠唱する。

 

 「極氷の鋭結晶(アイシガ・スピアクル)

 「炎激(フレイム・バースト)!」

 

 御門の詠唱完了したのは、低位魔術。それに対して放たれたのは高位魔術。

 ジジイの高速詠唱と、御門の訥弁な詠唱は同時に完了する。

 魔術は相対するが、相殺はされない。

 一瞬で決着が着き、御門はジジイの魔術に吹き飛ばされる。

 

 「笑わせるなよ? まさか、低位魔術で抵抗するとは思わなかったよ」

 「グッ……」

 

 悔しそうに表情を歪ませる御門に、ジジイは片腹痛いようだ。

 俺もこのままでは、マズイ。

 なんとかしなければ、御門はジジイに勝つなんてできない。

 しかし、依然として俺の手には鉄製の手錠がかけられている。

 

 そんな事を気にしているうちに、次の魔術の詠唱に入る。

 御門の身体はボロボロである。

 俺の中学のセーラー服も、よく見れば破けている所もある。


 御門は倒れそうになりながらも、次の魔術の詠唱に入る。

 ジジイも高速詠唱を始める。

 

 俺はいつだってそうだ。偉そうなことを言っておきながら、誰も守れない。

 このデスサバイバルだってそうだ。


 香織を守れず。

 めろんを守れず。

 すいかを守れず。

 十字郎を守れず。

 ミフィーユを守れず。

 洋子を守れず。

 そして……御門も守れないのか?

 何も出来ない――レベル1だからという理由で、この世界で何も出来ない俺が、自分で一番最弱だと認めているんじゃないのか?

 力が欲しい。皆を守れる力を!!


 『暴性が発動しました』

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