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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第四章
32/40

土浦 御門の謎は解かれる

 黒い球体を飲まされた俺は、身体が言う事を聞かず、倒れ込んだ。

 地面へと身体が倒れて行くときに見える光景は、スローモーションのようだった。

 洋子は腹部を貫かれ、苦しそうにしている。

 ――まさか、御門に不意打ちをされるとは思っていなかった。世界ランカーも身体を貫かれれば倒れるのか。


 「よ、洋子……ねえちゃ……」


 俺の無意識の呟きに、洋子は振り返る。

 その瞳には、絶望と後悔の色が浮かんでいた。きっと、自分が警戒を解かなければ、事は済んでいたのだと悔やんでいるだろう。

 最後に見えたのは御門の顔。

 俺と洋子を出し抜いた人物は嬉しそうに、笑っている。


 ダメだ……これが呪術ジャミング・インストールなのか……?

 

 俺の意識はブラックアウトした。




 目が覚め、俺は身体を起こす。

 薄暗い鍾乳洞にいるようだ。手錠がしっかりとされてるのに、ご丁寧にベットで寝かされていた。

 俺のすぐ横には呪術の根源――魔宝玉(エクス・ジュエル)があった。

 呪術に関して、謎が多い。

 まず、呪術は異能だと判明した。

 そして、かけられた人達はすいかの洗脳術ブレイン・インストールと変わらない状態に陥る。強いて言えば、洗脳術の強化版が呪術なのだろう。推測の域は出ないが。

 呪術をかけられた人間が攻撃すると呪術が上乗せされる。

 俺の次元破壊ディメイション・ディストラクションは、洗脳術をかけられた人間には触れれば、効果は消える。だが、呪術は違う。対象者に触れても効果は消えない。

 解除方法は、魔宝玉を吐きださせる事。

 ではなぜ、呪術を感染的に移された人間達が魔宝玉を吐くのか。それが一番の謎である。

 今のところ考えられるのは、攻撃時には呪術は液状、又は空気体になるのだろう。その後、対象の身体に入って行くと魔宝玉になって感染が完了する。

 この原理でなら、俺の異能が届かない事もあり得る。なぜなら、異能は体内にあるのだから、届く筈もない。

 よって魔宝玉を壊さなければ、呪術は解除されない。それを知らずに俺は毎回、魔宝玉を壊していたわけだが。

 ――そして、呪術が感情などの高鳴りに反応した際は魔宝玉の隠された力が、湧きだすって所なのか。 

 魔宝玉の力全てが体内に転移した場合のみ、触れる事で俺でも呪術を無効化することができるのだ。

 

 さて、俺の意識は正常だ。

 端末を見れないので、ステータス確認はできない。それでも分かる。

 意識が無くなる寸前には、俺も呪術がかけられたかと思った。なぜなら俺の異能は両手からしか発動できないからだ。飲まされれば呪術は発動していたかもしれない。

 ただ、状況を確認するに俺は呪術の魔宝玉ではなく、睡眠系の魔宝玉を飲まされた確率のが大きいだろう。

 

 遠くから靴で床を踏む音が聞こえる。軽快にリズムよく鳴る音は、近づくにつれ大きくなる。俺の部屋に近づいてる証拠だ。

 やがて、扉が開かれる。

 

 「起きたのね」


 俺はベットにて、両手に手錠をかけられたまま、侵入者を睨む。

 侵入者――御門は腰に手を当てて、俺を見下すかのように見る。

 

 「……お前、俺を拉致して何をしようとしたんだ」

 「それは知らない」


 知らないだと!? 何言ってんだこの女は。

 今まで散々俺らを振りまわしてきたくせに惚けるつもりなのだろうか。

 だが、今の御門の雰囲気は、先ほど一悶着したときとは違った。ようは精神異常者ではないってことだ。今の御門は――学校にいる彼女みたいだ。

 

 「さっきまで、俺を好きとか言って殺そうとしたよな」

 「な、何言ってんのよ!」


 顔を赤くさせる御門。

 この反応と言い、数々の御門との接触……。色々と謎が深まる。

 俺を殺そうとしたり、好きとか言ったり、それに毎回毎回性格が入れ替わってるんじゃないかと思えてくる。

 御門は一度空気を盛大に吸ってから、大袈裟に溜息を吐いた。

 

 「……火ヶ崎君。実は私には謝らなきゃいけない事があるの」

 「……なんだ」

 「実はね。私、この世界に来てからまだ数回しか表に出てこれてないの」


 数回しか表に出てこれてない?

 いや、御門は俺が見ただけでも外に結構いるぞ? 何言ってんだ? まさか、狂い過ぎで頭が逝っちゃったか?

 

 「そんなアホヅラしないでよ。まぁ、そんな事をいきなり言われたら、誰だってそんな顔をするわよね」

 「アホヅラは否定したいけどな」


 御門は呆れて俺を見ている。この感じ香織にそっくりだ。

 

 「引かないでよ?」

 「内容次第だ」

 

 御門は一度瞳を閉じ、胸に片手を当てた。

 

 「私はこの世界に来てから数日間。何も食べてなくて、お腹が空いて死にそうだったの」

 

 腹が減ってって……。まぁ、俺も京介に食わして貰ったけどさ。毒飯。

 御門は髪の毛をいじりながら恥ずかしそうに俺を見た。 

 

 「で、そんなときに私の異能――呪術ジャミング・インストールが、突然スキルアップしてね。試しに誰もいない所で使ったら、異能が魔宝玉になって……」


 スキルアップ? 異能がって事だよな?

 これは聞いた事がなかったな。香織達の最強武器もこうして技を覚えていくのかな? 今は関係ないか。


 「それを食べちゃったの」

 「……」


 あー……コイツはバカなんですね。

 学級委員のイメージが完全になくなったわ。もう、小学校――いや幼稚園からやり直せよ。

 御門は恥ずかしそうに俺を上目使いで見てきた。

 

 「で、食べたらあまりにも美味しかったから、つい食べすぎちゃって……」

 「誰もゲテモノ食いしん坊の話は聞きたくないんだが」

 「ち、違うわよ!」

 

 魔宝玉って本来食べる物じゃないんだろうが……十字郎に聞いたけど、異能がない人間も使えるアイテムキットだって聞いたんだけど。

 

 「食べた直後は平気だったんだけど、少ししたら意識が朦朧としちゃって……。それから軽く意識はあったんだけど、いつの間にか知らない誰かが私の身体を動かしてたの。気付いたら、私は多重人格になってしまったの」

 

 多重人格? その線は考えてなかった。 

 つまり、狂気に包まれた御門もヤンデレになった御門も別人格だったって事か?

 

 「んなもん信じるわけねーだろうが」

 「普通はそう言うのが当たり前よね。じゃあ、今から見てなさい」

 

 御門はそう呟くと、俺のベットから少し離れた。

 そして、顔を両手で覆う。


 「林檎君……あなたと二人になれて嬉しいわ! 早くこの世界を変えちゃいましょう!」

 「は!?」

 「殺したい殺したい殺したい……何でもいいから殺したい!!!」

 「ちょ……」


 音声のみだが、聞き間違えはいない。

 今までの御門だ!

 

 「も、もしかして本当に……」

 「だから、言ってるじゃないの。誰が本当の私か、火ヶ崎君なら分かるよね?」

 

 顔を覆っていた手を外し、俺のよく知る表情の御門がそこにはいた。

 ということは一連の呪術が関わっていた事件は全部別人格の御門によって起こされていたのか!?


 「なぁ……一応別人格がお前を動かしてた時って、俺らを見てたんだよな?」

 「ええそうよ」

 「もしかしてさ、幼女や幻獣、皆殺しとかって別々の人格が起こした事なのか?」

 「……そういう事になるわ」

 

 ということは全部が全部一つの人格が意図してやったわけではないのか。ヤンデレ御門は世界を作り変える為にやったなどと言っていたが、それは勘違いだったのか。

 きっと、別の人格が適合者を大量に殺害していたのを見て、都合がいいように解釈したに違いない。

 

 「……で、今は本物の、俺が知ってる土浦 御門なんだよな?」

 「ええ、そうよ」

 「証拠がないよな……」

 「火ヶ崎君のクラス番号は十七番」

 「正解だな」


 でも待てよ。ヤンデレは俺が学校でプリントを運ぶのを手伝ってくれたから好きになったと言っていたな。なら、人格同士が記憶を共有していても可笑しくはない。

 証拠と呼べる証拠が今はないんじゃないか?

 

 「……お前の人格が学校での俺に惚れたとか言ってたし信じられないな……」

 「そ、それは……」

 「やっぱり人格なんてなくて演技か?」

 「違うわよ! もう察しなさいよこの鈍感童貞!」

 「まだ中学生だっての!」


 中学生の時点で童貞じゃないってある意味重症だろうが。 


 「はぁ……。証拠ね……なら、クラス全員の名前を言えば信じてもらえるかしら?」

 「クラスの名前か……。学校の行事や先生の名前、靴の色とか……まぁ全部言ってみろ」

 

 恐らく記憶共有してるのなら、細かい事は記憶という棚の中から引き出さねばならない。これを全てスムーズに言えるようならば、彼女は本物だろう。

 そして、御門は全てを寸分違わずに超高速で喋った。早口言葉ゲームでもやってるのかと一瞬思った。

 

 「……本物か!?」

 「やっと信じてくれたのね」


 溜息を盛大に吐く御門。こめかみを抑えている。

 俺は悪くないぞ?


 「……で、その土浦さんは何をしに来た。謝りに来ただけじゃないだろう?」

 「そうよ。火ヶ崎君。あなたに聞きたい事があって」

 「知っている限りなら」

 「呪術ジャミング・インストールって効果時間どうやって調べるの?」

 

 効果時間? 何でそんな事を調べるんだ?

 意味が分からないな。確か前に十字郎が一日だとか……あれ?

 待てよ。色々可笑しくないか? だって一日しか効果がないって事は、すいかにしろ幻獣にしろ、御門本人にしろ呪術の効果は消える筈だ。

 十字郎は治療方法を知っていたから、効果時間も知っていたのだろう。

 それに一日で解ける程度の異能ならば、皆放置するだろう。ましてや、地底国の総本部は動かない筈。

 十字郎や洋子が本部から派遣された理由の真髄って、もしかして長過ぎる効果時間を調べるためなのか?


 「……異能の詳細説明をタップしてみてくれ」

 「わかったわ」


 御門は端末を取り出し弄りだす。

 カバーが着けられている為、端末が何なのかは分からない。

 数分した後、御門が声を震わせる。


 「な、何これ……」

 「どうした」


 俺も御門の端末を覗いた。

 

 異能:呪術ジャミング・インストール

 効果:一時的に対象者の感情を退かし、自分の意のままに操る事ができる。(コア)が全てを制御します。核を壊されない限りは効果時間がきれるまでは、効果は続きます。効果が切れた場合は核は生物の体内中の胃液に解かされてなくなります。相手には状態異常として効果が出ます。


 スキルレベル2:呪術の核が魔宝玉になりました。よって感染させることもできますが、効果時間は最初にかけた者が切れた場合は、派生した核(魔宝玉)は全て解けます。

 

 効果時間:????


 「これは……」

 

 詳細説明は俺の予測が当たったようだ。

 しかし、効果時間がバグっている。例えるなら、俺が謎のシステム【暴性(ぼうせい)】を発動したときみたいだ。

 一体何でバグっているんだ?


 すると、俺の部屋にいつの間にか三人目の来客があった。

 

 「神様。さぁそいつにも私と力を合わせて、永続式呪術ジャミング・インストールをさっさとかけましょうよ」

 

 来客は怪しいジジイだった。

 そのジジイの瞳に、俺と御門は鳥肌を立てた。

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