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地底国の魔銃師  作者: 大岸 みのる
第一章
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初めて携帯電話という端末を買ってもらった日

 八月某日。

 蝉が激しい曲を演奏するオーケストラのように、激しく鳴いてる。

 空を見上げれば、海のように綺麗な蒼色。

 そのど真ん中に位置する熱線を放つ丸い発光体。

 どれもが、体感温度を上げるのに充分過ぎる程、条件は満たしている。


 普段の俺からしたら、鬱陶しくて堪らない。

 だが、今日だけは猛然とした暑さを忘れるほど、俺のテンションは高かった。


 俺は初めて、携帯電話を買ってもらったのだ。


 日本国民は十代のうちに手に入れる代物。これを手中に収める嬉しさと言ったら、全国民が語れるのではないだろうか。


 そんな訳で携帯電話を手に入れた俺――火ヶ崎(ひがさき) 林檎(りんご)は、早く家に帰って携帯電話を弄りたい欲求に晒されているのだ。


 鞄の中にある携帯電話は、スマートフォンというタイプの物だ。機種はナップル社のナフォーン6。この夏最新機種だ。


 早く友人に自慢したい。


 携帯電話を購入の際、親の承認が必要だ。俺の母親は昼は働いてるのだが、この為だけに遅番にしてもらい、俺の端末を購入し終えたらすぐに会社へと向かった。

 母親など、家族の連絡先をいずれ登録しなければいけないが、それすら今は喜びに感じる。


 俺の学校のクラスでは、携帯電話を所持してる奴が半数程いる。その半数の人間は、携帯電話を所持してない連中からすると勝ち組だと言われてるのだ。

 俺も勝ち組にランクアップだ。


 色々と脳内で思うところがあるが、とりあえず早く家に帰って、とにかく弄くりまわしたいのだ。


 近所の携帯電話ショップから家までの距離、約二キロメートル。


 俺の足取りはきっと周囲から見れば、競歩に近かっただろう。





 「ただいま」




 誰もいないと知りつつも、癖なのか俺は必ず口にする。


 今はこの家に住んでいない姉が原因なのだ。


 小学生の頃から、家に帰れば「帰ってきた挨拶くらいはしなさい!」とよく怒られたものだ。


 しんっと静まり返ってる家内での俺の声は良く響いた。


 俺は靴を玄関に履き捨てる。


 二階にある自分の部屋を目指し、階段を颯爽と駆ける。


 自分の部屋まで到達し、勢いよく扉を開ける。


 とりあえず、準備だ。


 エアコンのスイッチを入れ、鞄を床に置き、ベットに腰掛ける。


 腰掛けたところで、喉が渇いてるのに気付き、一度ベットから腰を浮かせる。


 目指すは冷えた麦茶がある台所だ。


 ペットボトルに入ってる麦茶を全部飲み干し、空になったペットボトルを洗う。


 これで、俺自身の携帯を扱う準備は万端になった。


 再び自室まで行き、腰掛ける。


 「はぁ~念願の携帯電話~」


 俺は鞄から、まだ新品のナフォーンを取り出す。


 やはり、造形・性能・軽量・ディスプレイの大きさ。全てがメディアで騒いでる通り、完璧な物だ。


 電源を入れる。


 それから、俺は一時間程弄った。



 

 「ふぅ~」



 

 とりあえず、携帯の操作の仕方は記憶した。


 後はテレビのCMなどで取り上げてるアプリをダウンロードして、実行に移すだけだ。


 一度スリープモードにして、一階のリビングに降りた。冷蔵庫にある牛乳を飲み干す。


 喉を再度潤した後、いよいよゲーム開始だ。


 俺がベットに一度放置した携帯に触れるとディスプレイが光り出す。


 「なんだ?」


 ディスプレイには『緊急招集』と表示されている。まるで電話が鳴っているかのような激しく鼓動を放つ、バイブレーション。一応マナーモード状態だ。


 『緊急招集』の下に表示されているボタンは二つ。『応答』か『拒否』だ。


 もちろん、これから念願の携帯ゲームをダウンロードし、開始する予定だった俺は『拒否』をタッチする。


 しかし、『拒否』と表示される位置を触ってもフリーズしたわけでもないのに反応がない。


 「買って初日で壊れた? いや、不良品……?」


 店に対する文句が脳裏に浮かぶ。


 このまま放置しても、バイブレーションがうるさいだけなので、『拒否』を人差し指で連打した。


 何十回か突いたところ、バイブレーションは鳴り止んだ。


 「なんだったのだろう……」


 独り言を、安堵の溜息の如く漏らす。

 すると、ディスプレイが太陽の光のように俺の部屋全体を包み込む。 


 「ま、眩しい……っ!」


 驚きもあったが、この光り方は明らかにおかしい。

 庶民に発売してる、たかが携帯電話にこれだけの力はない筈だ。


 やがて、ディスプレイの光の濃度は増し、視界が白一色になる。


 「ちょ、俺失明するってこれ!!!」


 俺の思考がそのまま言葉となる。


 鬱陶しく思いながらも、目を頑張って開ける。


 「く、いい加減にしろよ」


 携帯に手を頑張って伸ばす。

 何なんだ一体!


 手を伸ばし、やっとの思いで携帯を掴む。


 「よし! 裏返しに……」


 携帯を掴めた! と思った瞬間。いきなり眠気が誘ってくる。


 「な……ん……だと……」


 俺の意識は、ホワイトアウトした。

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