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記憶機録  作者: 遠馬その
3/5

2・【15】

【栄歴567年4月4日】


 アルは、胴体部分と上腕部と臀部と大腿部の人工皮膚がなくて、服の下では、にぶく光る銀色が剥き出しになっている。

 去年私を製作するのに使ったのだと、13(カズミ)が教えてくれた。

 だからかな、なんでだろ。

 私、私の知らないことも知ってるような気がする。


 私の身体に使われた材料は一人分を作るのには足りなくて、その影響で身長が低い。腕も短いし脚も短い。人間のこどもみたいになってしまったから、中身もそれに合わせてみたって(トライ)(セッテ)が言ってた。

 最近は少しマシになってきたけど、私を造ってたときは材料が手に入りにくくなってたって、調達係の(フィブ)(ロク)が言ってた。

 今のところ私が一番新しくて、仲間もたくさんいるけど、『4』は生まれることができなかったんだって。だから、フィブとロクは日常的に調達係ができるくらい頑丈になれたんだって。

 4のことは誰からも聞いてないけど、知ってる。多分、私がアルの皮膚を持つから。

 うーん……。そういうのは、非科学的、ってやつかな?

 でも、私も皆とおんなじ記憶機なのに、毎日の記憶がこんな風に『多分』とか『気がする』とか、妙に感情的な部分もあったりして、いいのかなぁって思う。

 そのへんはトライとセッテのせいかな。記憶容量自体は他の個体に劣ってはいないけど、こどもにされちゃったんだもん、私。何かを詳しく解析しようとするとオーバーヒートしそうになるの判るもん。


 ――それでもきっとアルは私を、仲間を増やしたかった。

 なんでだかは判らないけど、それも、……うん、知ってる。



 毎年アルは4月4日になると花を摘んで裏庭に花びらを撒くのだと(ニオ)が教えてくれた。だから手狭になってきた住処を増築するのが手間だって言ってた。「アルは裏庭を潰しちゃっても気にしないと思うよ」って言ったら、できればそれは避けたい、って。

 私は、構造的に記憶はできるけど、その記録した情報を記憶として取り出せないので仲間達がいろんなことを教えてくれる。

 私達の住む森は山の麓にあるから、この季節は花には困らないけど、どうしてアルはわざわざ花なんか集めるんだろう。アルは、花を見て綺麗だと思ったり和んだりするのかな?

 中途半端なところばっかりの私は、動植物を観察しても、風景や天候を観測しても特に何も感じない。そういうところも中途半端だ。

 さっきアルが籠を持って外出するのを見た。背の高い後姿。

 いいなぁとは思うけど、その羨望さえも、たったそれだけだ。


 帰ってきたら、アルは多分そのまま花を撒きに行くのだろう。

 その様子を記録しておくのもいいかもしれないなぁ。

 その記憶も、明日にはおぼろげにしか再生できない記憶機(わたし)だけど。

ルビが多くてごめんなさい……。

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