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おみくじ

掲載日:2026/10/03

男は生きる意味を見失っていた。


ようやく見つけた"得意"。

だがそれも世界は「お前には向いていない。」と言った。


男は自棄になっていた。

このまま消えて無くなりたい、時間を遡って自分が生まれるキッカケを消し去りたい。

・・・このまま自らを終わらせるか?

男にそんな度胸は無かった。


男は自棄になる前は神社に通っていた。

この酷く醜いグロテスクな世界を何とかしてほしいと思っていたのだろうか。

その神社は特にその”得意”を伸ばせる様なご利益は無かったが

それでも通い続けて何年にもなる。


自棄になった男は自らを終わらせる事も出来ず途方に暮れる。

ふとあの神社に行ってみようかなと思った。

終わらせる事が出来ないなら続ける他ない。

だからと言って世界を変えろと神に懇願しに行く訳ではない。

た(・)だ(・)の(・)気(・)分(・)転(・)換(・)。(・)

それだけの理由で神社に向かった。


バイクに跨りエンジンをかけて出発する。

バイクの挙動がいつもより重い。

長く続いた雨で乗らずに放置してたのが仇となったか。

少し肌寒い空気、済んだ空気を通して見えるいつもの通り道。

いつもの景色が何故か今日はやたら美しく見えた。


神社に到着する。

拝殿前のお賽銭箱に硬貨を入れて二礼二拍手一礼をする。


(俺を何処か別の世界へ連れて行ってください。)


男もこんな願いは叶うはずがないとわかりきっていた。

だが願わずにはいられなかった。


社務所の前のおみくじの紙が入っている箱の前に来た。

(どうせ悪い事が書かれてる。)

男は箱に書かれている金額分の硬貨を

お金を入れる部分に入れておみくじの紙を1つ取る。

その紙には要約するとこう書かれていた。



「自棄になるな。」


こんな紙切れにまで慰められるのか。

男は急に自棄になっていた理由が

どうしようもないくらいしょうもない物に思えて来た。


男は鳥居の前で一礼をして神社を後にした。

帰り道の愛車の挙動は軽く、快調だった。



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