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第2話 あの日の帰り道

一年前のあの日――

僕は、始業式を終えて帰りに寄り道をしていた。

高校生になって今までよりも活動範囲が広がったので、学校の周りを探索していたんだ。


今は学校から少し離れた所にある商店街を歩いている。

なんだかいい匂いがしてきた。

匂いにつられて歩いていくと、飯田屋と書かれたコロッケ屋を見つけた。

「へー、こんなところにコロッケ屋があるんだ!」


「せっかくだし、買ってみようかな。」

僕は初めての買い食いに少し心を躍らせながら、店に近づいて行った。

店前に着くとカウンターの奥の若い女性が僕に気づいた。


「いらっしゃい。…あれ?その制服、蒼陽ヶ丘(あおひがおか)高校の生徒だね。」

僕の制服を見て彼女がそう言った。

「はい、今日から蒼陽ヶ丘の生徒です。」

僕はブレザーに付いている胸のワッペンを見せた。


「そっか!なら、あたしの弟と同級生だね。」

そういって彼女は笑った。

「そうなんですか!?」

まさかの同級生のお姉さんだった。


「そうそう!あたしの弟、飯田啓介っていうの。見かけたら声かけてあげてよ!」

カウンターに肘をついてにっこり笑いながらそう言った。

「わかりました。見かけたら声かけますね。」

あれ?飯田って同じクラスにいたような…。


お姉さんははっとしたように、「あっ!?」と声を上げた。

「そういえばお客さんだったね。」

照れたように笑いながら頭に手をのせる。

「何か買っていく?」

カウンターから少し身を乗り出して聞いてくる。


「えっと、コロッケを1つ。」

最初はやっぱり王道だろ。そう思いながら注文した。

他の商品はまた今度来た時に買ってみよう。


「はいよ、百円ね。」

お姉さんがコロッケを包みに入れて渡してくれる。

受け取った包みからじんわり温かさが手に伝わってくる。


包みを店前の台に置いて、ポケットから財布を出す。

小銭入れから百円玉を一枚取り出し、お姉さんに渡す。

「毎度ありっ!またおいで。」

お金を受け取ったお姉さんは、そういって笑った。

明るくて元気な人だなと思いながら、僕はコロッケ屋を後にした。


少し離れた所で包みを開いてコロッケを見る。

「おいしそうだな。」

温かいコロッケを、包みから半分だして一口食べてみる。

外はサクサクで中にはごろっとしたジャガイモがしっかり入っていた。

「こういうゴロゴロ食感はたまらん!」

完全に当たりだ。

買ったコロッケを頬張りながら、学校付近の散策を続ける。

食べ終わったコロッケの包みを丸めてポケットに突っ込む。

「おいしかったなぁ、また今度行こう!」

コロッケに夢中になっていたら、見覚えのある道に出た。


「ここまで戻ってきちゃったな。」

今日の朝通った学校に続く坂道に戻ってきていた。

空を見ると日が暮れてきている。


そろそろ帰ろうかと考えていると、坂の中盤にある公園のことを思い出した。

「そういえばあそこ、展望台あったよな…。」

今なら夕焼け綺麗に見えるかも、そう思い公園に向かって歩き出す。


少し坂を上って歩いていると、先の地面で何かが光っているのが目に入る。

「なんだろう、小銭かな?」

光っている場所に歩いていくとそこにはペンダントが落ちていた。

こんなところに落ちていると踏まれそうだと思い、そっと拾い上げる。

「ペンダント?」


拾い上げると見かけの割に重く感じた。

金属の細かな装飾があって中心付近には小さな赤い石がはまっている。

空に掲げて光を当ててみる。

はまっている石が光を受けてキラキラと輝く。

「綺麗なペンダントだな。」


ペンダントにはチェーンがついていなかった。

きっと付けている時に外れて落ちてしまったんだ。

持ち主は今頃このペンダントを探しているのだろうか。


ペンダントを持ったまま少し考える。

「地面よりはどこか上に置いた方がいいよな。」

そう思いあたりを見渡すが、よさそうな場所がない。

「公園にもっていくか。」

落とさないようにペンダントを制服のポケットに入れ、公園に向かって再び歩き始めた。


公園に着くと日がさらに傾いていて、夕暮れに近づいていた。

入り口にある案内看板を確認する。

夕焼けがきれいに見えそうな展望台は奥にあるようだ。


まわりを見渡しながら公園の中を歩いていく。

ベンチや飲み物の自動販売機がちらほら見える。

遊具が沢山あるが、今は誰もいない。

自分の足音だけが聞こえる。


自分の足音を感じながら歩いていると目的の開けた展望台に着いた。

あたりを見ながら奥へと歩いていく。

「ん?誰かいる。」

視線の先には展望台の柵付近でしゃがみ込んでいる女の子を見つけた。

彼女は同じ学校の制服を着ていて、地面を手で探るように何かを探していた。

僕の足音に気づいて、彼女はこちらに振り向く。


僕は思わず足を止めた。

彼女は夕焼けの公園で一人泣いていたんだ。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

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