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第9話「魔女の怪しいポーション」

次女と狂女と皇女 

第9話「魔女の怪しいポーション」

女学院の昼休み。今日は少し特別な日だった。

学園の文化祭準備期間で、各クラスが出し物を決めるための自由時間が増えている。ジュンコのクラスはまだ何も決まっておらず、教室はゆるやかな混乱状態だ。自皆ジュンコは、いつもの隅の席で静かに弁当を広げていた。「今日は……なんとか静かに食べられそう」そう思った矢先――。「ジュンコぉぉぉ!! 今日も地味に隠れてんじゃねぇよ!! 文化祭、一緒に何かやろうぜ!!」共原キョウカが、深紅のリボンを翻して乱入。机にどっかり座り、ジュンコの弁当を覗き込む。「き、キョウカ……文化祭かあ。まだ何も決まってないよね……」「ふひひ……私とジュンコでお化け屋敷やって、二人きりで暗闇に閉じ込められて……最高だろ♡」過激な妄想にジュンコが顔を赤くしていると、金色の髪が優雅に揺れて公野コウミが登場。「まあ! お化け屋敷だなんて下品すぎますわ! 私たちのクラスは優雅なカフェにすべきですのよ。高級紅茶とスイーツで、皆を魅了するの!」コウミは当然のようにジュンコの隣に座り、キョウカを睨む。「おい皇女様、カフェとか眠くなるだけだろ。ジュンコと怖い思いしてキャーキャー言いたいんだよ♡」「怖い思いだなんて、ジュンコが可哀想ですわ! ジュンコは私の隣で優雅にティーカップを持つ方がお似合いよ!」二人がいつものように火花を散らし始め、ジュンコは困った顔で間に入ろうとしたその時――。教室の扉が、ゆっくりと妖しく開いた。紫色の長い髪をなびかせ、黒いマントのようなカーディガンを羽織った少女――魔道マドウが、怪しい笑みを浮かべて入ってきた。手には小さなガラス瓶がいくつか。彼女は自称「魔女」で、いつもインチキくさい魔法薬やポーションを作っては学園内で売りさばいている(もちろん没収されることが多い)。「くすくす……いい機会ねぇ。文化祭の準備でみんな浮ついてるわ。新しいポーションのテストにぴったり……」魔道は三人組の机に近づき、甘い声で話しかけた。「あら、あなたたち。文化祭の出し物で悩んでるみたいね? だったら、私の特製ポーションを使ってみない?」ジュンコが警戒しながら、「ま、魔道さん……また変な薬作ってるの? 前に飲んだ子が一日中カエル声になってたって聞いたよ……」魔道はくすくす笑いながら、紫色の液体が入った瓶を差し出す。「それは失敗作よ。今度は完璧! これ、『友情強化ポーション』。飲んだ者同士の絆がぐーっと深まるの。文化祭で三人で何かやるなら、絶対に役立つわよ?」キョウカが目を輝かせて瓶を覗き込む。「おお! 友情強化!? ジュンコとの絆がもっと深まるなら、飲んでみたいぜ♡」コウミは眉をひそめて、「怪しいですわ……絶対に何か裏があるんですのよ! 魔道、あなたいつもインチキ薬ばっかり!」魔道は肩をすくめて、悪びれず笑う。「インチキだなんてひどいわねぇ。ただのハーブティーに少し魔法を加えただけよ。ほら、試しに一滴……」そう言って、魔道は勝手にジュンコの水筒に紫色の液体を一滴落とした。「わっ! ちょっと魔道さん!?」ジュンコが慌てるが、時すでに遅し。液体は水に溶けて、薄紫色に変わる。キョウカが面白がって、すぐに水筒を奪い取りごくごく飲んだ。「うまいじゃん! ちょっと甘いな! これでジュンコとの愛が100倍だぜ♡」コウミは渋々ながら、「ふん……キョウカが飲んだなら、私も飲まないと不公平ですわ……」と、少しだけ口をつける。ジュンコは仕方なく、自分も一口飲んだ。「……ちょっと、ベリーみたいな味がするね」魔道は満足げに笑い、「効果はすぐに現れるわ。くすくす……楽しみね」と、教室の隅に消えていった。最初は特に何も起こらなかった。三人は普通に文化祭の話を続け、結局「お化け屋敷+カフェのハイブリッド(怖いけど優雅)」という妥協案で落ち着きかけた。――ところが、5分後。キョウカが突然、ジュンコにぎゅーっと抱きついた。「ジュンコぉぉぉ!! なんか急に可愛く見えてきた!! もう離れたくない!! ずっと一緒にいようぜ!!」力が増していて、ジュンコが息を詰まらせる。「き、キョウカ……苦しいよ……」コウミも、顔を真っ赤にしながらジュンコの手を握り、「ジュンコ……あなた、本当に大切ですわ……私、ジュンコがいないと生きていけないかも……」普段の偉そうな態度が消えて、しおらしい目でじっと見つめてくる。ジュンコは二人に挟まれて、慌てふためく。「え、ええ!? 二人とも急にどうしたの!?」どうやらポーションの効果は「友情強化」ではなく、「好意増幅」だったらしい。飲んだ者同士の相手への好意が、制御不能レベルまで爆発する。キョウカはジュンコを抱きしめたまま離さず、コウミはジュンコの手を握ったまま離さない。教室の生徒たちがざわつき始める。「なんか……あの三人、いつもよりベタベタしてる?」「ポーションのせい? 魔道のやつ、またやらかしたな」ジュンコは真っ赤になりながら、必死に二人をなだめようとするが、効果はさらに強まるばかり。結局、昼休みが終わるまで、二人はジュンコから離れなかった。チャイムが鳴り、ようやく効果が薄れ始めた頃――。キョウカが照れくさそうに頭を掻き、「……なんか、急に暴走しちまったな。悪いジュンコ」コウミも、顔を赤くして、「私も……つい本音が……いえ、失礼しましたわ!」ジュンコは二人を見て、くすっと笑った。「ううん……二人にそんな風に思ってもらえて、嬉しかったよ。ポーションのせいかもしれないけど……本心もあるよね?」二人は同時に俯いて、小さく頷いた。遠くの教室の隅で、魔道が満足げに笑っている。「くすくす……ちょっと効きすぎちゃったかしら。でも、いいデータが取れたわ。次はもっと調整して……」文化祭の準備は、まだ始まったばかり。魔道のポーションがまた絡む日も、きっと遠くないだろう。ジュンコの昼休みは、今日も少しだけドキドキで終わった。

(第9話 終わり)

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