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第7話「才女の難問と答え」

次女と狂女と皇女 

第7話「才女の難問と答え」

テスト一週間前。女学院の自習室は、いつもより静かで緊張感に満ちていた。生徒たちは参考書やノートを広げ、必死に勉強に集中している。自皆ジュンコは、自習室の隅の席で数学の問題集と格闘していた。「うう……この関数、どこで間違ってるんだろう……」ジュンコは数学が苦手だ。影の薄い自分でも、テストだけは平均点くらいは取りたい。でも、今日の微分積分はさっぱりわからない。ため息をついていると、突然後ろから大きな声。「ジュンコぉぉぉ!! 勉強なんか地味にやってんじゃねぇよ!! 私と一緒にサボろうぜ♡」共原キョウカが、深紅のリボンを揺らして乱入。自習室の静寂を一瞬で破壊する。「しーっ!」周囲の生徒たちが一斉に注意の視線を送る。キョウカは小さく舌を出して、ジュンコの隣に座った。「キョウカ……自習室だよ。テスト近いし、勉強しないと……」「ふひひ……ジュンコが困ってる顔、可愛いからいいじゃん。数学? 私、意外と得意だぜ♡」キョウカが問題集を覗き込むが、すぐに顔をしかめた。「……なんだこれ。意味わかんねぇ」そこへ、優雅な足取りで公野コウミが登場。手には高級そうなノートとペンケース。「まあ! あなたたち、自習室で騒がないでちょうだい。勉強は静かに優雅にすべきですわ」コウミはジュンコの向かいに座り、偉そうにノートを開く。「コウミさんも勉強? コウミさんは成績いいよね……」「ふん! 当然ですわ。私の家系は優秀でなければなりませんのよ。でも……数学は少しだけ苦手かも」コウミが小声で白状すると、キョウカがにやり。「おお、皇女様も苦手かよ。私らと同じじゃん♡」三人が問題集を囲んで頭を悩ませていると、自習室の入り口から静かな足音が近づいてきた。青いリボンを髪に結び、眼鏡をかけた少女――才来サイキ。学園一の才女で、成績は常に学年トップ。どんな難しい問題も解いてしまう天才で、先生からも信頼が厚い。いつも冷静で、感情があまり表に出ない。才来は三人を見て、少し首を傾げた。「……自皆さん、共原さん、公野さん。何か問題でも?」ジュンコが慌てて、「才来さん……こんにちは。この数学の問題がわからなくて……」才来はジュンコの問題集を一瞥し、すぐにノートを取り出した。「これは、合成関数の微分ですね。ここでチェインルールを適用して……」才来は淡々と説明を始める。難しい言葉を並べるが、論理的でわかりやすい。ジュンコは目を輝かせて聞き入る。キョウカが少し苛立ったように、「おい天才、もっと簡単に説明しろよ。私らバカじゃねぇけど、そんな専門用語連発されてもわかんねぇ」コウミも、「そうですわ。もっと優雅に、わかりやすく教えてちょうだい」才来は一瞬黙って、三人を見た。「……わかりました。じゃあ、例え話で」才来はペンを取り、簡単な図を描き始めた。「この関数を、箱の中の箱だと考えてください。外側の箱を開けるには、まず内側の箱の鍵が必要で……」意外なほど平易な例えに、三人が「おお……!」と声を上げる。ジュンコが特に感動して、「才来さん、すごい! こんなにわかりやすいなんて……ありがとう!」才来は少し頰を赤らめて、「……別に、特別なことじゃないです。ただ、相手に合わせて説明するだけ」キョウカが感心したように、「天才なのに、偉そうじゃねぇな。いいヤツじゃん♡」コウミも、「ふん……確かに、教え方が上手いですわ。私も、この問題解けそう」才来は三人の問題を次々と解き、丁寧に解説していく。難しい応用問題まで、すべて完璧に。一時間が過ぎ、三人はすっかり才来のファンになった。しかし、才来がふと小さなため息をついた。「……実は、私も一つ、わからない問題があるんです」三人が驚いて、「え、才来さんがわからない問題!?」才来は少し俯いて、「はい。……『友達と一緒に勉強するのは楽しいか』という問題です。私はいつも一人で勉強してきたから……みんなとこうして話すの、初めてで……」その告白に、自習室が静かになった。ジュンコが最初に微笑んで、「才来さん……楽しいよ。私たちと一緒に勉強できて、嬉しい」キョウカが肩を叩き、「天才、寂しかったのかよ。一緒に勉強しようぜ♡ 次は私が教えてやるよ(多分間違えるけど)」コウミが、「そうですわ。私も、才来さんの教え方、もっと学びたいですのよ」才来の目が、少しうるんだ。「……ありがとうございます。では、これからも……一緒に勉強、いいですか?」四人はノートを囲み、笑い合いながら問題を解き続けた。才女の難問は、意外なほど簡単な答えだった。――友達と一緒にいるのは、楽しい。テストまで、あと一週間。ジュンコの勉強机には、新しい仲間が一人増えた。自習室の灯りは、遅くまで消えなかった。

(第7話 終わり)

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