第13話「文化祭の奇跡」
次女と狂女と皇女
第13話「文化祭の奇跡」
文化祭当日。女学院は朝から大賑わい。来場者で校舎は埋め尽くされ、笑い声と音楽と甘い匂いがあちこちに満ちている。開会式の時間。体育館のステージに、自皆ジュンコが一人で立っていた。手にはマイク。影の薄い自分が、数百人の前で挨拶するなんて――昨日の夜まで夢にも思わなかった。「え、えっと……みなさん、おはようございます。実行委員の自皆ジュンコです……」声が震える。膝も震える。でも、客席の一番前にいる聖灯が、静かに手を合わせて祈ってくれている。隣の席でキョウカとコウミが大きく手を振っている。ジュンコは深呼吸して、続けた。「今日は、みんなで作った文化祭です。たくさんの笑顔が見られますように……楽しんでください!」拍手が鳴り響く。ジュンコはほっと胸を撫で下ろし、ステージを降りた。――文化祭が始まった。まずはジュンコのクラス――お化け屋敷+カフェのハイブリッド。暗い通路を進むと、突然共原キョウカが血まみれ(偽物)の姿で飛び出してくる。「ジュンコぉぉぉ!! 一緒に死のうぜ!!」来場者が悲鳴を上げて逃げる中、ジュンコは苦笑いしながら案内役。その奥のカフェエリアでは、公野コウミが金色の髪を優雅に揺らし、高級紅茶を注いでいる。「いらっしゃいませ。お嬢様気分で優雅にティータイムをどうぞ」隣では扶宮フウカが、こっそりBL同人誌(お化け屋敷のキョウカ×ジュンコ×コウミネタ)を売りさばいている。「限定版ですよ~! 今日だけの修羅場シーン満載!」美麗のクラスは学園一の人気――アイドルライブステージ。オレンジ色の髪を輝かせ、美麗がセンターで歌い踊る。客席は満員。鬼嵐は体育館でバスケ体験コーナー。赤い顔で大声を上げながらも、子供たちに優しくシュートを教えている。「もっと腰を落とせ!! お前ら、弱っちいな!!」魔道は校庭のテントで「魔法薬屋さん」。紫色のポーションを並べ、来場者に売りつける。「恋が叶う薬! 友情強化薬! ……効きすぎたらごめんね♪」悪井は情報コーナーで、ゲスい笑みを浮かべて学園の噂話を売りさばく。「皇女様の秘密、100円で教えますよ~」子山は国際交流ブースで、多言語で来場者を案内。帰国子女の語学力が大活躍。「Welcome! Bienvenue! いらっしゃいませ!」幼田はメイド喫茶のミニメイド。ちっちゃい体でトレイを持って走り回る。「お客様ー! オムライスできあがりー!」少見は手作りクッキー屋さん。中学生のような見た目で恥ずかしがりながらも、ジュンコの隣で頑張る。「先輩……たくさん売れてます……嬉しいです」淑元は全体の巡回。完璧な姿勢でルールを守らせ、トラブルを未然に防ぐ。「ゴミは分別でお願いします。秩序を乱さないように」才来はクイズコーナー。めっちゃ賢い問題を出して、来場者を翻弄。「正解率2%の問題です。解けたら才来特製ノートプレゼント」聖灯は礼拝室を開放。疲れた来場者に静かな休息スペースを提供し、優しくお茶を振る舞う。「神様も、今日の笑顔を喜んでおられますよ」ジュンコは実行委員として校内を走り回る。お化け屋敷でキョウカが暴走しそうになるのを止め、カフェでコウミが来場者に高額ティーセットを押し売りしそうになるのをなだめ、魔道のポーションがまた効きすぎて騒ぎになりそうになるのを仲裁し、悪井の噂話が広がりそうになるのを注意し……それでも、ジュンコは笑顔を絶やさない。みんなが楽しそうだから。午後の全体イベント――全クラス参加の「大抽選会」。ステージに、全キャラが集合した。ジュンコが司会。「それでは、特等品の発表です!」抽選箱を回すのは鬼嵐。景品提供はコウミ。演出は美麗と魔道。クイズ出題は才来。案内は子山。メイド服で補助は幼田と少見。同人誌配布はフウカ。秩序維持は淑元。祈りは聖灯。キョウカはジュンコの隣で、にやにやしながらマイクを握る。「特等品は……ジュンコとデート権!! って言ったらどうなるかな♡」会場がどっと沸く。ジュンコが真っ赤になって、「キョウカ! そんな景品ないよ!!」みんなが笑う。抽選は無事に終わり、文化祭は大成功のうちに閉幕。夕方、校庭で打ち上げ花火が上がる。全キャラがグラウンドに集まり、空を見上げる。ジュンコを中心に、キョウカとコウミが両側に。その周りに、美麗、鬼嵐、魔道、悪井、扶宮、子山、幼田、少見、淑元、才来、聖灯……みんなが、今日の思い出を語り合う。ジュンコは思う。――私、地味で影薄いのに……こんなにたくさんの友達ができた。花火が夜空を彩る。キョウカがジュンコの肩を抱き、「今日、最高だったぜ♡」コウミが、「ジュンコのおかげですわ」聖灯が、「神様も、きっと微笑んでいます」花火の光に、みんなの顔が照らされる。文化祭は終わった。でも、ジュンコの日常は、これからも続いていく。騒がしくて、優しくて、ちょっと奇跡みたいな――そんな日々が。
(第13話 終わり)




