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第10話「淑女の完璧な委員会」

次女と狂女と皇女 

第10話「淑女の完璧な委員会」

女学院の生徒会室前は、今日も静かで整然としていた。放課後のチャイムが鳴ってから三十分。ほとんどの生徒が部活動や帰宅に移る中、自皆ジュンコは少し緊張した面持ちで廊下に立っていた。手には一枚の紙――「文化祭実行委員募集」のチラシ。「はあ……どうして私が実行委員に立候補しちゃったんだろう……」理由は簡単だ。クラスで誰もやりたがらず、影の薄いジュンコが「じゃあ、私が……」と手を挙げてしまったのだ。苦労人の性分がまた出てしまった。そこへ、いつもの乱入。「ジュンコぉぉぉ!! 実行委員だって!? すげーじゃん!! 私も手伝うぜ!!」共原キョウカが、深紅のリボンを揺らして駆け寄ってきた。ジュンコの肩に腕を回し、にやりと笑う。「き、キョウカ……手伝ってくれるの? ありがとう……でも、実行委員はちゃんとルール守らないと……」「ふひひ……ジュンコと一緒に仕事できるなら、何でもやるよ♡ 夜遅くまで二人きりで残業とか最高だろ!」過激な発言にジュンコが顔を赤くしていると、金色の髪が優雅に揺れて公野コウミが現れた。「まあ! 実行委員ですって? ジュンコ、それは立派ですわ! 私ももちろん協力します。私の家でパトロンを出してもらえるように、お父様に頼んであげるわ!」コウミは偉そうに胸を張りながら、ジュンコの反対側に立つ。「コウミさんも……ありがとう。でも、実行委員は大変だよ……」三人が生徒会室の扉を開けると、中にはすでに一人の少女がいた。淑元シュクモト――生徒会の副会長で、礼儀正しく品行方正な委員長タイプ。髪は黒くストレートにまとめられ、姿勢はいつも背筋が伸びている。学園のルールを誰よりも守り、完璧主義で知られている。淑元は書類を整理しながら、静かに立ち上がった。「遅くなりましたね。自皆さん、共原さん、公野さん。実行委員への立候補、ありがとうございます」丁寧なお辞儀に、ジュンコは慌てて頭を下げる。「あ、こんにちは! よろしくお願いします……」キョウカは少しだるそうに手を挙げ、「よー、委員長。よろしくな」コウミも、負けじと優雅にお辞儀を返す。「淑元副会長、よろしくお願いしますわ。私のような高貴な身分ですが、ジュンコのためなら協力します」淑元は三人を見て、穏やかだが少し厳しい笑みを浮かべた。「では早速始めましょう。文化祭の実行委員は、学園全体の秩序を守る重要な役割です。ルールは厳守、時間は守り、計画は完璧に。まずはスケジュールの確認から」淑元はホワイトボードにびっしりと書かれたタイムテーブルを指す。分単位で細かく区切られた完璧な計画表だ。ジュンコは感心して、「すごい……全部決まってるんですね」キョウカはそれを見て、顔をしかめた。「おいおい……こんな細かく決められてたら、面白くねぇよ。ジュンコと自由に遊べねぇじゃん」コウミも、少し不満げに、「確かに……私のアイデアで豪華なステージを追加したいんですけど、予定にないですわ」淑元は静かに、しかしきっぱりと言った。「予定外のことは認めません。文化祭は全員が楽しめるよう、公平で秩序正しくあるべきです」その言葉に、キョウカが少しイラついたように、「堅ぇなあ、委員長。もっと自由にやらせろよ」コウミも、「そうですわ! 少しは柔軟性があってもいいんじゃない?」淑元は一瞬、目を細めたが、すぐに穏やかな笑顔に戻った。「自由は大切ですが、無秩序は混乱を招きます。……でも、あなたたちの意見も聞きます。まずはこの計画通りに進めて、問題があれば修正しましょう」会議は進み、ジュンコが必死にメモを取る中、キョウカは机に足を乗せそうになり、コウミは高級なお菓子を勝手に広げそうになり――そのたびに淑元が静かに注意する。「共原さん、足を下ろしてください」「公野さん、飲食物は持ち込み禁止です」キョウカがぼそっと、「うぜぇ……完璧すぎんだよ」コウミも、「確かに、少し窮屈ですわ……」ジュンコは二人をなだめながら、淑元に頭を下げた。「淑元さん、ごめんなさい……二人とも、悪気はないんです」淑元はジュンコを見て、少し表情を和らげた。「自皆さんは本当に優しいですね。……実は、私も昔はもっと自由にやりたいと思っていました。でも、ルールを守ることで、みんなが安心して楽しめることを知ったんです」その言葉に、三人が少し黙った。会議の終わり、淑元がスケジュール表を配りながら言った。「今日はここまで。明日から本格的に動き始めます。……共原さん、公野さん。自皆さんのためにも、協力をお願いします」キョウカが少し照れくさそうに、「……まあ、ジュンコのためなら、ちょっとくらい我慢してやるよ」コウミも、「ふん……ジュンコのためですわ。淑元副会長、明日もよろしくお願いします」淑元は小さく微笑み、「ありがとうございます。私も、皆さんと一緒に、素敵な文化祭にしたいと思います」生徒会室を出た後、ジュンコは三人を見てほっと胸を撫で下ろした。「淑元さん、厳しいけど優しい人だね。みんな、ありがとう」キョウカがジュンコの肩を抱き、「ジュンコが喜ぶなら、私も頑張るぜ♡」コウミが、「私だって、完璧な文化祭にして、ジュンコを誇らしく思わせてあげるわ」文化祭の準備は、まだ始まったばかり。淑元の完璧な計画と、三人の少し自由な気持ちが、どう混ざり合うのか。ジュンコの新しい役割は、きっと騒がしくて、でも少しだけ成長できる日々になるだろう。

(第10話 終わり)

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