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錬金術師と人魚姫 3

 港町マリンシェル。 

わたしが滞在している、この町の名前だ。

 セイントベル王国の西方に位置する小さな港町で、新鮮な魚が漁れるのが売りだった。


 わざわざ「だった」なんて付けているのは、もちろん今はそうじゃないからだ。

 この小さな港町では、半年以上も前から不漁が続いている。

 マリンシェルの近海で漁れる魚は特に新鮮で美味しいと評判が高く、小さな港町ながらセイントベル王国にとっては中々の収入源だった……らしい。


 そんなわけで、港町マリンシェルがあるフォイアロート領を治める領主様に、国からお達しがあったそうだ。


『即効、不漁の原因を突き止め解決せよ。あるいは魚に代わる特産品を作るように』


 この難題に領主様は頭を抱えたみたいだけど、問題解決に名乗りを上げる人物がいた。

 それは領主様の娘、ロゼリア・フォイアロートだ。ロゼリアは、さっそくマリンシェルに赴いて調査をしたみたいだけど、不漁の原因はわからなかった。


 そこでロゼリアは友人の錬金術師……つまり、わたしに協力を求めてきたのである。

 ロゼリアからの要請を受けたわたしは、王都から馬車に揺られて港町マリンシェルへとやってきた。


 で、調査を開始して今に至る。

 不漁の原因は、まだ判明していない。というわけで、わたしは別方向からもマリンシェルの窮状を救うべく模索していた。

 国からの通達にもあったように、魚に代わる新たな特産品を作り出す、というやつ。

 さっきエミリーさんからの依頼で錬成した『おいでませ☆清浄なる楽園クリーンアイランドへ』も、その過程で生み出した物だ。

 汚れがよく落ちるからと評判が良かったんだけど、それも最初のうちだけだった。

 どこかの誰かが洗剤の成分を解析して、簡単に複製できるようになってしまったのである。品質は、わたしの『おいでませ☆清浄なる楽園クリーンアイランドへ』がぜんぜん上だけど……


 なんにせよ、わたしが作った『おいでませ☆清浄なる楽園クリーンアイランドへ』は、マリンシェルの特産品にはなれなかったのだった。町の人たちからは、今日みたいによく錬成を頼まれるけれど。

 なにかまた新しい物を考え出さないとな……不漁の原因も解明しなきゃだし……

 白いレンガ造りの家が軒を連ねる通りを、わたしはあれこれ思考しながらエミリーさんの家に向かって歩いていく。町には今日も潮の香りが流れていた。

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港町ってなんか良いよね
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