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黄土色のヒキガエルが這い回る、この荒野で

作者: 黒実 音子

小麦粉を塗した様な

乾いた白土に覆われた

木製の十字架達の墓地・・

私達はそこに忌わしい

過去の病を埋める。


ああ、ここには様々な

血と不運な肉片達が埋まっている。


(何処からともなく声が聞こえる)

[所詮、この地に蔓延る疫病など・・]


(パンガ)で殺された親子・・

川に捨てられた動物達の臓物・・

タマリンドと混ぜた土・・

風土病・・

風土病・・

そして風土病・・


ああ、教えてくれ。

黄土色のヒキガエルが這い回る、この荒野で、

深夜に現れる

足菌腫病(マイセトーマ)の悪霊に

連れていかれぬ方法を。


[所詮、この地に蔓延る疫病など・・]


ここでは白人共の神の水も

木舌病の牛の笑いと、

マラリアの濁水によって濁ってしまう・・


だが、それはいい。

なぜなら、

それらは遠方な意味では

子供達だからだ。


[所詮、この地に蔓延る疫病など・・]


いずれにしても

白い王国の者達が、銃と鞭で

あの村の者達を撃ち殺した竜血樹(ドラセナ)の根元で、

私達の祈りは不完全なものとなった。


救いを求め縋った相手すら

夕暮れには

風土病により死者となるこの地で

見よ!!

不信と血に染まった男が、

朽ちた棺桶の木を折り、

ある種のマメ科植物の根元にだけ生まれる

死体の様な匂いを発する土を集めている。


[所詮、この地に蔓延る疫病など・・]


それが呪い・・

この土地の救いのない

したたかな呪いだ・・


宣教師よ・・

お前にはわからぬのだ。

お前も男だから・・

暴力性の持つ暴力性・・

武器を持たぬ者の

恐怖と嗚咽と卑屈・・


ああ!!

ああ!!

そうだ・・

所詮、この地に蔓延る疫病など

大したものでもなかったのだ。

私達は泣きながら

この白い土で汚れた十字架の墓地に

それを埋めた。


[疫病]と言って

葬り去るしかなかった。


もっと邪悪で醜悪な

[人間]という暴力性を・・・

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