二人のステータス
「ここが国境か……思ってたより物々しくはないね」
「まぁ争ってるわけじゃないからね」
この世界では魔王という共通の敵が存在している。
そのため人間の国同士での戦争というのはほとんど起こらない。
ヴェーロもまた城塞都市ではあるけれど、弩の着いている場所は東ではなく北だ。
人ではなく魔物を仮想敵としている証拠である。
「さて、それじゃあまずは……冒険者登録をしちゃおうか」
俺達はこのまま、神聖エルモア帝国へと向かうことになる。
この際、未玖の素性が不明なままだと少々面倒なことになる可能性がある。
現状比較的検閲は緩いらしいが、それでも下手をすれば
なので話し合った結果、まず未玖さんを冒険者として登録することにした。
ギルドに登録して冒険者にするだけで、越境はずいぶんと楽になる。
魔物討伐を生業としているだけで、結構な優遇措置が受けられるのだ。
俺という既に冒険者として活動している人間がいるため、未玖の登録はスムーズに終えることができた。
ちなみにカモフラージュの意味も込めて、開拓村に居た頃から服は出会った時の修道着ではなく、駆け出し冒険者のような革鎧だ。
森をかなり歩いたおかげでほどよく汚れていて、服に着られているような感じもない。
当然ながら本名で登録するわけにもいかないため、彼女の冒険者としての名前はミクルになっている。
親しい人にはミクと呼ばれているという設定を足しておけば、俺が名前で呼び捨てにしても不審に思われることはないだろう。
下手に疑われるのも面倒なので、宿を取ってそのまま自宅へ戻る。
そしてせっかくの機会ということで、一度自分達のステータスを確認し合うことにした。
「ステータスオープン」
鹿角勝
LV 242
HP 2530/2530
MP 3600/3621
攻撃 569
防御 527
魔法攻撃力 825
魔法抵抗力 792
俊敏 1141(限界突破)
ギフト
『自宅』LV4
『聖魔反転』(劣化)LV2
スキル
光魔法LV10(MAX)
闇魔法LV10(MAX)
火魔法LV10(MAX)
風魔法LV10(MAX)
水魔法LV10(MAX)
土魔法LV10(MAX)
雷魔法LV10(MAX)
氷魔法LV10(MAX)
時空魔法LV10(MAX)
魔力回復LV10(MAX)
魔力感知LV10(MAX)
剣術LV10(MAX)
双剣術LV6
抜刀術LV9
範囲詠唱LV3
身体強化LV10(MAX)
《解放》
聖骸の騎士
これが俺の現在のステータスだ。
ヴェーロにたどり着くまでには結構な魔物を倒したけれど、俺の肉体LVはまったくといっていいほど上がらなかった。なので途中からはトドメは未玖にさしてもらうようにして、彼女のLV上げを手伝うことも多かった。
聖骸の騎士以上に強い魔物が早々いるとは思えない。
以前考えていた、LV上げではどうにもならない領域に足を踏み入れたと考えるべきだろう。
ここから先はスキルとギフト、それにステータスを上げて強くなるしかないと見ている。
この一月半、魔法の習熟を頑張ったおかげでようやく全属性のLVを10まで上げることができた。
今までは戦いながらだったからどうしてもペースが遅くなったけど、今回は魔法のLV上げだけに注力できたのが大きい。
土魔法は途中からはクラフト感覚でわりと楽しくできたからさほど苦じゃなかった。
地味にLVを上げるのは、闇魔法が一番キツかったかもしれない。
ずーっと自宅の部屋を消して瞑想してるのは、まだ落ち着きのない俺には結構厳しかったからね。
とある方法を思いつかなければ、LVを10まで上げるにはまだまだかかったことだろう。
ただ頑張ったおかげで、各種魔法のLV10のカンストボーナスと思われる各種最強魔法も手に入った。
風魔法や光魔法のように、まだ使えない魔法もいくつかある。
改めて確認してみると、雷魔法と時空魔法のLV10での魔法は一つきりで、それ以外の属性は攻撃魔法を一つと使えない魔法が一つという感じになっていた。
雷魔法と時空魔法はLV10魔法が強いから一つだけ……という感じなんだろうか?
「うーん……これはどう頑張っても追いつける気がしないなぁ……」
俺がノートに書いたステータスを見た未玖が、眉間にしわを寄せる。
顎に手を当てながら口をへの字にしているその様子すらかわいいんだから、もうなんでもありである。
未玖って、マジバーリトゥード。
「にしてもこうやっていちいち書かないと他人のステータスが見れないのは、地味に不便だよねぇ」
「一応看破ってスキルがあると他人のステータスボードも見れるようになるらしいよ。後から知ったんだけど、第一王女のミーシャは看破を使って最初から全員分のを盗み見てたみたい」
ひゅう、流石グルスト王国王女。
プライバシーなんかを完全に無視してやりたい放題である。
この世界には俺が持っていないスキルがまだまだある。
今後のことを考えると、スキルの獲得も目指していきたいところだ。
「ステータスオープン……っと、はいどうぞ」
さらさらと数値を書き足している未玖の手元をのぞき込む。
有栖川未玖
LV25
HP 95/170
MP 162/163
攻撃 24
防御 59
魔法攻撃力 59
魔法抵抗力 59
俊敏 132
ギフト
『聖女』
スキル
光魔法LV8
闇魔法LV2
水魔法LV5
魔力回復LV7
これが現在の未玖のステータスだ。
基本的に一人で行動していたため、人のステータスを見るのは未玖が初めてだ。
なので最初に見た時、正直俺は……ビビった。
どうやら俺のステータスの伸び方は、異常らしい。
彼女の話では、伸び率だけなら勇者さえ凌駕しているらしい。
それに俺にはトレーニングルームという、自分が好きなステータスを伸ばすことのできるギフトまである。
おまけに人を自宅に招けば、この力を共有することすら可能なのである。
現にトレーニングルームを使うことで、未玖の敏捷は既に以前とは比べものにならないほどに上がっている。
更に言うと闇魔法も使えるようになったため、今では完全に闇墜ち聖女状態だ。
『君もこのギフトを使って世界を救ってね!』
神様が言っていた言葉……あれは冗談でもなんでもなく、真実なのかもしれない。
未玖もそろそろ敏捷以外の値も上げていこうか。
そんな話をしてから、俺達は眠りについた。
そして次の日。
国境を越えて帝国に入ろうとしている俺達は予想だにしていなかった形で足止めを食らうことになる。
「すみません、実はワイバーンの群れが街道を陣取ってしまっているようで……しばらくの間、帝国への越境は不可能とお考えになった方がよろしいかと」
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