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隠し球

「ボスなんだから――弱点くらい用意しといてくれよっ!」


 飛び跳ねるようにして前に出る。

 当然ながら対応してくる聖骸の騎士。

 両者の剣が交差する。ぶつかり合う鉄の塊が鳴らす高音。

 数合を重ねることで感じたのは、違和感だった。


 つい先ほどまで感じていた圧迫感がない……一撃の威力が明らかに軽く、動きが遅いのだ。

 先ほどまではわりと拮抗していたはずだが、今は俺の方が圧倒的に力が強く、そして速い。


 持っている技量で俺の剣を受け流し、逸らすことで対応してみせているのは流石としか言えないが、そこまで技量がない俺であっても力がゴリ押しができるほどに弱体化している。

 純粋な腕力だけで言うなら、シミュレーションルームのレブナントよりも弱いかもしれない。


(なるほど、つまりこいつは万能型ではあるが、全能じゃない。フォルムを使い分けるタイプのボスなんだ)


 ゲームだとボスの中にはいくつかのタイプがあるが、その中に当てはめるとしたら、こいつは一定時間やある行動をキーにして戦闘方法を切り替えるようなタイプなのだろう。


 恐らく今の騎士は完全な防御タイプになっている。

 だから物理・魔法に対して強い耐性があるが、その分だけ攻撃と俊敏が落ちていると考えられる。

 それならやりようがある。


 とりあえず時間を稼ぎながら、相手の防御力を測っていく。

 一撃を入れてみるが、まともにダメージが入った様子はない。


 ただ、完全に無効化をしているわけではないようだ。 

 ライトニングはしっかりと相手に命中していた。


 そして朗報二つ目、どうやらむき出しになっている顔と手には攻撃が効きやすいようだ。

 これはスキルなのか、それとも鎧の効果なんだろうか。

 壊れた鎧が治ってたし、スキルと見た方が良いかもしれない。


 とにかくさっきまでにつけた傷は既に治されてしまっているため、回復の暇を与えないように攻撃を続けていく。


 剣だけで戦い、魔法は最低限に。

 なるべく消費を抑えながら戦っていると、相手の鎧の色が白に戻った。

 どうやら時間制限があるらしい。


「朱雀翼」


 続いて即座に鎧の色が赤へと変じる。そして鎧の背部が開き、そこからジェット噴射のように魔力が噴き出してくる。

 魔力はすぐに翼を形作り、その瞬間騎士が纏う雰囲気が獰猛なものに変わった。


 真っ向から打ち合うのを避けるため、打ち合うと見せかけてジョウントを発動。

 相手の攻撃の速度を見ると、先ほどとは比べものにならないほどに速い。


 これは……覚悟が必要そうだ。


 こちらに気付いた騎士が駆け寄ってくる。

 誇張抜きで一呼吸の間で距離を詰められる。


「スピード兼アタックタイプって、そんなのありっ!?」


 剣を打ち合わせると、じぃんと手の奥にしびれが走る。

 これは……なんとかして受け流すので精一杯だ。


 赤い鎧は、スピード兼アタックタイプだ。

 一撃の重さが増し、速度が上がる。


 タイプに兼とかあっちゃいけないって絶対。

 この世界にはお約束ってものはないのか!


 まともに打ち合うことができないと判断したので、即座に思考を切り替える。

 目が回るからあんまりやりたくなかったんだけど……こうなったらしょうがない。


 向こうが戦い方を切り替えるっていうなら、こっちも同じことをするだけだ。



 俺は打ちかかってきた相手の一撃を空かすように、魔法を発動させる。


「ジョウント」


 そして攻撃を避けた瞬間、無防備になっている脇腹に剣を突き立てた。

 鎧はあっさりと貫通し、内側にある肉体から血が噴き出してくる。


 なるほど……通常時よりずっと柔くなっているってわけか。

 これなら、頑張る価値はありそうだ。


「波打」


「ジョウント」


 瞬間移動を使い逆側に移り、再度の一撃。再び鎧を貫通し、

 どうやら騎士の攻撃は範囲攻撃だったようで、剣の衝撃波が波打ちながら広がっていた。


 本当に多彩だな……でも色んなことができるのは、何もお前だけじゃないってことを教えてやる!


「ジョウント!」


 俺はここで、隠し球の一つ目を使うことにした。

 瞬間移動を連続発動させながら、対応できない攻撃を放ち続ける必殺剣。

 対聖骸の騎士(おまえ)用に編み出したこの技……受けれるものなら受けてみろ!

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