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特訓


「ふっ、ふっ……!」


 俺は自宅の外にある庭で、一人剣を振るい続ける。

 その剣筋は、初めて剣を握ったあの時とは比べものにならないほどにしっかりとしたものになっていた。


 素振りは誰にでもできる。

 だからこそ漫然としている人とそうでない人との差は、どんどんと大きくなっていく。 以前俺でも名前を知っているプロ野球選手がそんな風に言っていた。


 たしかに素振りをするのは簡単だ。

 だがだからこそ、おろそかにできない。


 少し型がズレてしまえばそこに宿っている術理は消えてしまい、生み出されたわずかなズレが時間をかけて大きな歪みに変わってしまう。


 頭の中で聖骸の騎士とレブナント達の型をなぞりながら、剣を振る。

 動きながら、走りながら、相手を想定しながら。

 型がズレないように一振り一振りに神経を使いながら剣を振るい続ける。


 剣を振りながら、前を見据える。

 剣をメトロノームのように使いながら、タイミングを見計らい……素振りをすると同時に、叫ぶっ!


「ライトニングボルト!」


 剣を振ると同時、俺の目の前に見慣れた雷撃が飛び出してくる。

 剣術のLVが5を超えた段階で、剣を振るいながらでも別のことをするだけの余裕が出てくるようになった。


 日課になった素振りをしながら、魔法を発動させていく。

 わざわざリフレッシュを使って直すのも面倒なので、ここ最近もっぱら俺の素振りの場所は第十一階層入り口の崖だった。


 現在俺は、いつもより時間をかければ剣を振りながらでも魔法が発動させることができるように成長していた。


 LV10魔法であれば、大体十秒前後で発動させられる感じだ。

 怪我を負ったりすれば集中力が切れて魔法が途中で霧散してしまうため、今はまだ実用に達しているとは言いがたい状態である。


 剣を使いながら魔法を使い続けて普段と変わらない速度で魔法を使えるようになり、いずれは剣を振ったまま魔法の二重起動ができるようになるのが今の俺の目標だ。


 そこまでいけば恐らくだが……あいつ相手でも、戦えるようになるだろう。


「――よし、次は……ランニングっと」



 ――俺が聖骸の騎士へ挑んでから早二月弱。

 この世界にやって来てから、早いもので四ヶ月近い時間が経過しようとしていた……。




 剣を振りながら魔法を使うことができるようになったことで、俺自身の育成方針を変えることにした。


 聖骸の騎士に勝つために必要なのは、攻撃ではなく俊敏だ。


 速度が高ければそれだけ相手の攻撃を避けることができるし、速度で相手を翻弄することもできる。


 時間を稼ぎ、その間きちんと怪我をしないように立ち回ることができれば、至近距離からジャッジメントレイを打ち込めるわけだからな。


 大切なのは、一撃の重さよりも、いかに相手の一撃をかわすことができるか。

 というわけでトレーニングルーム使う器具を変え、俺は現在2Pカラーになっている白色のランニングマシーンで激走を続け俊敏を上げ続けていた。


 ちなみに俊敏を伸ばすのと並行して、聖骸の騎士と騎士のレブナントが振るっている剣術に自分なりに軽戦士や侍が使っている技も取り入れ、アレンジにも取り組んでいる。


 速度特化の自分なりの剣術を生み出すべく、試行錯誤をしている最中だった。


 現在俺のステータスは、こんな感じになっている。




鹿角勝


LV 222


HP 2330/2330

MP 3210/3285

攻撃 529 

防御 487

魔法攻撃力 760

魔法抵抗力 732

俊敏 648 


ギフト

『自宅』LV4


スキル

光魔法LV10(MAX)

闇魔法LV8

火魔法LV8

風魔法LV10(MAX)

水魔法LV10(MAX)

土魔法LV5

雷魔法LV10(MAX)

氷魔法LV8

時空魔法LV10(MAX)

魔力回復LV10(MAX)

魔力感知LV5

剣術LV7

双剣術LV6

抜刀術LV3

範囲詠唱LV1

身体強化LV6



 一ヶ月ランニングマシーンを頑張り続けたことで、俊敏が攻撃や防御を超えてきている。


 速度特化で戦う練習台にちょうどいいので十一階層のレブナント達との戦いも継続しているため、レベルもちょこちょこと上がっている。


 俊敏と魔法攻撃力と魔法抵抗力を伸ばしている剣士という、いやそんなやつがどこにおんねんと突っ込まれそうな謎ステータスになりつつある。


 ちなみに剣術や双剣術のレベルが上がっても、剣術に関する諸々の感覚や手応えは変わったけど、特別な技が使えるたりはしなかった。


 スキルLVが上がって技を覚えることができるようになるのは、魔法系のスキルに限られるのかもしれない。



「――よしっ、対戦オナシャス!」


 シミュレーションルームに入った俺は、聖骸の騎士(劣化)相手に駆けていく。


 ――俊敏特化になったことで、ようやく聖骸の騎士相手にしても即殺されるようなことはなくなった。


 剣術スキルの補正があってもまだまだ差は大きいけれど、とりあえず速度は俺の方がずっと高いため、相手の攻撃をいなしたりすればある程度は打ち合えるようになったのだ。


 これで後は上手いこと魔法を使うことができれば、倒すこともできると思う。

 そろそろいけそうな感じはしてるんだけどな……。


 以前の記憶を思い出してみても、恐らく俊敏だけなら既に聖骸の騎士(本物)を抜いているはず。

 この劣化版聖骸の騎士を問題なく倒せるようになったら、聖骸の騎士に再挑戦するつもりだ。


 バリエッタさんに聞いたところ、聖教会と王国の上層部で会合が行われたらしい。

 もうあまり猶予はないかもしれない。



 俺は善戦を続け何度がジャッジメントレイをぶち込んだのだが、聖骸の騎士はそれでも倒れなかった。


「あ、まずっ……」


 そして相手が攻め手を増やしたことでこちらが魔法を使うだけの余裕がなくなり、回復と回避に専念しているうちに気付けば完全に守勢に回ってしまい、致命の一撃をもらって負けてしまった。

 惜しいところまでは来てるんだ。


 ――絶対に今月中には倒してやるぞ!

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