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聖骸の騎士


 一旦仮眠を取ると、気持ちが少し落ち着いた。

 思考を整理するためにも、敢えて口に出しながら脳内の情報をまとめていく。


「多分だけどあれが、このダンジョン名の由来である騎士本人……なんだと思う」


 あれがこのダンジョンの最奥に安置されている騎士なのだろう。

 俺にはなぜか(・・・)、そう確信することができた。


「『騎士の聖骸』の最深部にいた騎士だから、そうだな……聖骸の騎士とでも呼ぶことにしようか」


 あの聖骸の騎士は、スケルトンとレブナント双方の特徴を持っている。

 これは普通ではありえないことだ。


 生前の肉体と記憶を持っているレブナントと、生前の記憶なんか欠片もないまま放浪するだけのスケルトン。

 この両者の性質を併せ持っているわけだから。


 ボスモンスターには、この世界の常識が通用しないということなんだろう。

 あの聖魔反転とかいう技も変だった。


 当初噴き出していた黒いオーラが、あれを使った瞬間に真っ白に変わった。

 少し経った今だからわかるが、あれは闇と光の魔力だった。


 名前から察するに、あれは闇と光の属性を入れ替える技なんだろう。

 現在の属性によって、聖骸の騎士のフォルムが変わるようになっていると考えるのが自然だ。


 状況に応じてフォルムを切り替える、形態が二つあるラスボスみたいな感じだろうか。


 そして、あの魔物は見たこともない技を使ってもいた。


 十字に滞空させた斬撃を光の魔力で押し出すことで発動させていた、あのグランドクロスとかいう技だ。

 必要なモーションは多いはずだが、動きがあまりにも滑らかだった。

 発動にかかっていた時間は、かなり短かったように思える。


 風野郎の魔法でも壊れなかったドアが一撃で粉砕されたのだから、その威力もかなりヤバそうだ。

 今の俺がジャッジメントレイを使って打ち合っても、勝てるかどうか……。


 あれだけの技だ、恐らくは何らかのスキルのカンストボーナスだったりするんじゃないだろうか。


 そう考えると、使える技もかなり大量にあるはず。

 おまけにあのスケルトン状態で戦うこともできるんだろうから、今のところ底はまったく見えてこない。


 もしかすると今までの敵とは違ったアプローチで、自宅にいる俺に攻撃するような手段を持っていることも考えられる。

 可能であればあまり隙を見せたくない相手だ。


「とりあえず傾向と対策を練るか……」


 起き抜けでぼうっとしていた意識を洗面台で顔を洗って覚醒させてから、シミュレーションルームへと入る。


 けれど俺にはこのシミュレーションルームの力がある。

 初見では勝てないような強力な相手だとしても、しっかりとその強さを分析し対策を考えることができれば、決して倒せないことはないはずだ。


 あの神様が、そんなクソゲー仕様な難敵を作るとも思えないし。


『トレーニングする相手を選んでください』


 あの魔物を選択しようとした俺の手が止まる。


「……どういうことだ?」


 そこにはこんな風に書かれていた。

 聖骸の騎士(劣化)……と。


 あ、名前は聖骸の騎士に決定なんですね。

 にしても劣化って……どういう意味なんだろう?


「……まぁとりあえず、戦ってみればわかるか」


 選択し、待っていると目の前にいあの騎士とうり二つの魔物が現れた。


「これは……うん、たしかに劣化だ」


 そのスケルトンからもたしかにプレッシャーは感じる。


 だが如何せん、ビリビリと肌で死の危険を察知してしまうようなヤバさがそいつにはなかった。

 多分だけど、シミュレーションルームで再現できることにも限界があるってことなんだろう。


「まぁなんにせよ、有効活用させてもらうけどね」


 俺は本気で倒すつもりで、聖骸の騎士へと挑みかかる。


 そして……魔法を連打してもまったく通用せず、大技を使うだけの隙を見出すこともできず接近を許し、無事一撃で首を刈り取られるのだった――。

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