棺
第十一階層の基本的な攻略法は、第十階層と同じだ。
まず最初にシミュレーションルームを使い、相手の戦法をしっかりと学習してから勝ち方を描いていき、勝利する。
面白いことに、レブナントを集団として出すことも、個別に呼び出すこともできる。
これによって訓練がかなり捗ることになった。
レブナント(騎士)を呼び出すことで相手の剣術を盗み取ることもできるようになったし、レブナント(魔導師)を召喚することで魔法の打ち合いがどの程度できるかも確かめることができたからね。
おかげで色々なスキルが生えてくることになった。
いちいち説明するよりも、見た方が早いだろう。
鹿角勝
LV 212
HP 2230/2230
MP 2145/3185
攻撃 459
防御 467
魔法攻撃力 727
魔法抵抗力 701
俊敏 458
ギフト
『自宅』LV4
スキル
光魔法LV10(MAX)
闇魔法LV6
火魔法LV7
風魔法LV10(MAX)
水魔法LV10(MAX)
土魔法LV4
雷魔法LV10(MAX)
氷魔法LV7
時空魔法LV10(MAX)
魔力回復LV10(MAX)
魔力感知LV2
剣術LV1
双剣術LV1
抜刀術LV1
範囲詠唱LV1
身体強化LV2
レブナントの経験値はどうやらエルダーリッチよりかなり高いらしく、それを集団で討伐するようになったことで鈍化していたLV上げのペースも再び上がり始めた。
おかげでとうとう200の大台を突破し、更にスキルも一気に増えた(あと一応、毎日お風呂に入っていたおかげで水魔法のLVもMAXまで上げることができた)。
レブナント達から色々と教わった(でいいのかな?)スキルについて見ていこう。
まずは剣術・双剣術・抜刀術の剣術関連。
前二つのスキルは最初に遭遇したあのレブナントから、そして最後の抜刀術は彼らを倒した門の先にいた侍のような格好をしたレブナント(シミュレーションルームでもレブナント(侍)と表記されている)から手に入れることができたスキルだ。
スキルの入手方法は、正直よくわかっていない。
一応前から剣術とか生えないかなぁと隙を見て素振りをしたりはしていたんだけど、まったく成果はなかった。
けど騎士や侍、軽戦士達のレブナントの動きを近くから観察し、技を盗み取ろうと同じように剣を振ることを意識すると、それほど時間をかけることなくスキルが生えてきたのだ。
急所を狙った魔法剣の威力は、LV10魔法に匹敵する。
それに近付かれてからも戦える手段があった方がいいのは間違いないので、こちらは引き続き伸ばしていくつもりだ。
レブナント達と戦って、最初に手に入れたスキルは魔力感知だった。
バリエッタさんが持っていたあの魔力感知だ。
これのおかげで、相手の魔力をものすごいざっくりとではあるが、感知することができるようになった。
LVが低いおかげで、その精度はかなり低い。
魔力が少ない・普通・多いの三段階評価くらいしかできない感じだ(ちなみにエルダーリッチもレブナントも全部多い評価なので、現時点ではあまり意味はない)。
感知能力に関してはそんな感じだけど、いくつか副産物もあった。
そのうち一番大きかったのは、魔力の動きや変質のさせ方などについて以前よりもしっかりと感じ取ることができるようになったことだ。
これによって相手が魔法を使う魔物である場合、その魔力の使い方を目で追い、真似することができるようになった。
そうやって練習を続けることで得られたスキルが、最後の範囲詠唱と身体強化だ。
――俺はこの世界に来てから、常々思っていた。
なぜこの世界にはベ○マがあるのにベホ○ラーがないのかと。
どうやらそのカラクリはスキルシステムにあったらしい。
このスキルは名前の通り、詠唱した魔法の効果を一定範囲へ広げる魔法だ。
このスキルを使用し範囲指定を行ってから回復魔法を使うと、その指定範囲にいる生物全てに回復魔法をかけることができる。
ちなみに範囲指定によって消費魔力はおよそ3倍になるため、3人以上に使えば帳尻が合う感じだな。
ただこの生物全てというのがくせ者で、範囲内にいる敵もしっかりと回復させてしまう。
なので俺がこのスキルを学び取らせてもらった僧侶の格好をしていたレブナント(こいつはレブナント(プリースト)と書かれていた)のように最初に範囲指定して味方にバフをかけるという使い方をするのがいいだろう。
身体強化は、わりと名前通りのスキルだ。
これは身体の内側に魔力を流し、循環させることで筋肉や骨に魔力を伝え、その分だけ身体を強化させることができるというもの。
身体強化を使うとアクセルやクイックを使った時とはまた違った感じで身体が強化される。
魔法を使った時のように魔法によって明らかに運動性が上がっている感じじゃなくて、元々の身体能力の延長線上で、今までの1.5倍くらいの力が発揮できるようになった感じだろうか。
たとえるならバフの魔法は外付けで強力なエンジンをつけて速度を上げる感じで、身体強化は内側の部品を入れ替えたり弄ったりして速度を上げる感じだろうか。
とまぁ、こんな感じで俺は無事第十一階層で強くなることができた。
「ほっ、ほっ、ほっ!」
最初の時はおっかなびっくりだったが、今ではもうこの光の道を駆けていくのにも慣れた。
光の道をしばらく歩くと門があり、門を超えた先のステージで魔物を倒せばまた次の光の道が続いているという仕組みだ。
ちなみに門は後戻りすることも可能で、俺は四回戦ってから来た道を戻り三回の戦闘をこなす、七回を一セットとして戦闘を繰り返していた。
けれどここでのLV上げにも限界が近付いてきた。
スキルLV上げに関してはまだまだできそうだけど、どうやら基本的にスキルはなかなか成長しないものらしいので、あまりそちらにばかり取りかかるわけにもいかない。
というわけで俺は今までは引き返していたところを敢えて進み、第十二階層へ続いているであろう門の前にやってきていた。
「……」
その門は、今まで開いてきた神々しい光の門とは違い、真っ黒だった。
まったくつやのないマッドブラックの門には一切の装飾がついておらず、どこか質実剛健な印象を受ける。
俺はこの階層を、天国を模した階層だと考えていた。
だとしたら天国の更に下にあるこの門は、一体なんなのだろうか。
この先へ続いているのは、地獄か、それとも……。
緊張しながら、ゆっくりと門に触れる。
重たい門を力任せに押し込み、闇の中へと入っていく。
そこにあったのは……色とりどりの大量の花束と、それらに囲まれるように安置されている白い棺だった――。