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複数討伐


 次の日から、俺は再び戦いの日々に戻ることにした。

 当初の目的である、LV10魔法を使わずに風野郎を撃破することは達成できた。

 けれどこれで心置きなく第十一階層に……とはならない。


 シミュレーションルームに出てくる魔物は、実際の魔物とは違う。

 何度か戦っているうちに、それがわかってきた。


 シミュレーションルームの魔物は好戦的で、そして俺に向かって真っ直ぐに攻撃を仕掛けてくる。

 魔物を完全にトレースすることができていないということなのか、その行動AI(で、いいのかな?)が少しお粗末なのだ。


 けれどその力量に関しては、間違いなく本物。

 俺は文字通りに死んでも死なないシミュレーションルームで、エルダーリッチを相手に戦闘訓練を続けていく。


 その中で、いくらシミュレーションルームで戦ってもLVは上がらないこともわかった。

 あくまでもシミュレーション、ということなんだろう。

 まぁそれでも、この部屋を使わない選択肢はないんだけどさ。


 俺の攻撃の要である雷魔法についての造詣を、一層極めていくことにした。


 雷魔法はそのうちほとんど全てが攻撃魔法だ。

 それぞれについて見ていこう。


 LV1の魔法は雷を生み出すライトニング。

 前より更に繊細な出力調整ができるようになったことで、今では手の先だけではなく全身のどこからでも自在に出すことが可能だ。


 LV2の魔法であるスタンショック。

 これは攻撃力は低めだが、相手を一定確率でスタンにできる。

 雷魔法にはスタンと麻痺の状態異常がデフォルトでつくが、そのかかりやすさがスタンだけ何倍かになっている、という感じだ。


 ここでそれぞれの状態異常についても説明をしておこう。

 スタンというのは簡単に言うと、相手をひるませて動きを一瞬止める状態異常のことだ。


 状態異常の中では持続時間が短く治るまでが非常に速いが、その分完全に相手の行動を止めることができる。


 そして麻痺は名前そのまま、相手を痺れさせ運動能力を低下させることができる。

 俺はまだ生身の人間で試したことがないからわからないが、恐らく対人戦で使われたら嫌なのは麻痺の方だと思う。


 LV3で覚える魔法がライトニングボルト。

 LV4で覚えるのがチェインライトニング。

 LV5で覚えるのがアクセルと電磁力で鉄なんかを引き寄せるエレクトロ。

 このあたりは何度も使っているのでもう戦いながらでも無意識のうちに使いこなすことができている。


 そしてLV10で覚えるのが、現状の俺の魔法の中で最強の貫通力を持つグングニル。

 その間の魔法も当然ある。


 LV6で覚える魔法は二つ。

 一つは雷の盾を生み出すライトニングシールド。

 これには相手の攻撃に雷属性を付け足して跳ね返すカウンターとしての効果を持っているため、防御魔法と攻撃魔法を兼ね備えた魔法と言える。


 ただ光魔法のアイギスがある時点で、ちょっと使い道は困るんだよな。


 上手いこと相手に反撃がしたい時にドンピシャで出せると強いんだろうが、出すまでに時間もかかるので今のところ腐ってしまっている。


 そしてもう一つの魔法はレディエーション。

 これは簡単に言うと、自分の周囲に雷を撒き散らす魔法だ。


 囲まれている時なんかは非常に役に立つし、相手が自分では知覚できない時に防御兼居場所確認として使うこともできる。


 この世界にはギフトやスキルがあるため、多分だけど俺の知覚をすり抜けて接近するような能力の一つや二つはあるはずだ。


 そう言ったやつと相対する時に、この魔法は役に立つだろう。

 まあ威力はそこまで高くないので、これもあまり使う機会がない。


 LV7で覚えるのは雷の魔法剣(こっちはまだ名前はつけてない。どうせなら断罪の剣ばりにカッコいい名前をつけようと目下考え中だ)と、俺が恐らくこの世界に来てから最も使っているであろうレールガン。


 LV8で覚える魔法は、人差し指サイズの雷の針を飛ばすスティンガーという魔法だ。

 これはレールガンやグングニル同様電磁加速がついており、元の針の大きさがかなり小さいおかげで速度はとてつもなく速い。


 更に言うとこの魔法には高確率で相手を麻痺・スタン両方の状態異常にさせる効果がある。


 ただそもそもの話スタンも麻痺もアンデッドには利きが悪いし、この魔法はサイズが小さいため、相手に当たっても大きなダメージを与えられない。

 エルダーリッチ相手に何度か試しては見たんだが、相手が少し動いてしまえば狙いは核からズレてしまうため、なかなか難しい。


 俺自身、FPSとか苦手なタイプだったし。

 更に言うとこの使用するのにグングニル並の時間がかかるため、今のところ全然使っていない。


 LV9で覚えるのがトールレインとミョルニル。

 前者は任意の場所に雷の雨を振らせることができる魔法で、後者は雷の槌を呼び出し相手を叩き潰す魔法だ。


 この二つに関しては使いこなしておきたいと思っていたため、俺はエルダーリッチとのシミュレーションで何度も使って使用感を確かめていくことにした。


 トールレインで降り注ぐ雷の一発一発の威力は、ライトニングボルトよりも高い。

 そして選択できる範囲もかなり広めだ。


 ただしその分場所を指定してから数秒経ったところで魔法が発動するという欠点がある。


 高い機動力を持つ相手の戦闘だと使いどころが難しそうだ。

 風のエルダーリッチを相手にすると避けられてしまうが、他のエルダーリッチ相手だと攻撃範囲に入れることができる塩梅だ。


 ミョルニルも似たような感じだ。

 この魔法は発動させると雷の槌が生まれ、そのまま前に振り下ろされる。


 こちらも十分な威力はあるんだが、いかんせん攻撃のモーションが相手に見えるのが良くない。あと融通も利かないし。


(……いや待てよ、魔法はイメージってことは……これを融通が利くようにすることもできるんじゃ?)


 そんな風に思ったので試してみると……できた。


 試行錯誤の結果、ミョルニルは狙って自由な場所に出すことができるようになった。

 更に言うと槌も前に振るだけでなく、ある程度自在に動かすことができるようになった。


 MPは食うが三度ほど振ることができるようになったし、また、MPを使いミョルニルをある程度維持させるおくこともできるようになった。


 これでミョルニルを待機状態にしながらグングニルの発動準備を行い、近付いてきた相手をミョルニルで叩いて時間を稼ぐという戦法を取ることができるようになった。


 これによって俺個人の戦闘能力が格段に向上した。

 二重起動でミョルニルと別の魔法を併用することで、接近されても打つ手が生まれるようになったからだ。


 俺は片方の手でミョルニルを動かしながら、もう片方の手で別の魔法を使っていく。

 恐らくこれが、俺の今後の基本戦術になりそうだ。


 使い勝手が悪いからという理由で今まで使ってこなかったのが正直もったいなく感じてしまうほどだ。


 俺はシミュレーションルームで勝つことができるようになってから、第十階層のエルダーリッチを正面から打ち破ることに成功。

 そのまま時に逃げたり機動力の差で逃げながらこちらを削ろうとしてくる風野郎も倒すことに無事成功。


 第十一階層に行くために自分に課した最後のミッション。

 エルダーリッチの複数討伐に挑むのだった――。

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