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手応え


 エルダーリッチの杖は、俺がこの世界でゲットしたものの中で、初めてしっかりと使っている装備品だ。


 今までは剣とか盾とか、まともに武術を習ったことのない俺にはレールガンで飛ばすことくらいしかできなかったからね。


 実際に使ってみてわかったんだけど、このエルダーリッチの杖は魔法発動の補助を行っているだけではない。


 上手く言葉にすることができないんだけど……この杖を使うと、魔法に何かが混じる。


 感覚で言うと闇魔法を使う時のそれに近いんだけど……なんかちょっと違うんだよね。


 たとえるなら闇属性の魔力を使った、闇魔法じゃない何か……みたいな感じかな?


 それを使おうとしている魔法に混ぜるのには結構な集中力が必要で、ここを乱されると魔法が発動しなくなってしまう。


 なのでここを狙えば、エルダーリッチの魔法も阻止できるという寸法だ(もちろん逆もまた然りで、杖を使用する際には俺もここが弱点になる。けど俺は光魔法の強力な盾が出せるため、あまり気にせずに魔法を使うことができる)。


 この杖の効果をざっくり言うと、発動までの時間が少し長くなり、その分魔法の殺傷能力や速度などが向上するというもの。


 わりとシンプルだけど、結局そういう武器ほど強いものだと相場が決まっている。


「ダブルライトアローレイン!」


 雨のように降り注ぐ風の弾丸を、それを超える密度で放たれた光の束で迎え撃つ。


 俺の放った光矢は進行軌道上にある魔法を蹴散らしながら、勢いそのまま風野郎へと降り注いでいった。


 しかもこの杖、宝玉の色によって補正の度合いは違うものの、別に他の属性の魔法であっても問題なく強化は可能だった。


 なので俺の雷魔法や光魔法も問題なく強化ができるというわけだ(今俺が使っている杖についている宝玉は、二つとも赤色だ)。


 魔物の杖を使って光魔法が強化できるのは違和感だけど……まあそういうものだと割り切っている。


 ちなみに、この杖は使い続けているとなんとなく嫌な感じがしてくる。


 軽い頭痛と胸焼けがするので、普段はあまり使っていない。

 多分……というか間違いなく、呪いの武器とかそういう類いのものだと思うからね。


 けれど未来の胸焼けと引き換えにしている分、その威力は高い。


 元から高かった一撃の威力が更に上がることで、今ではこちらに攻撃が来ることはなくなり、俺が一方的に攻撃を加えることができるようになっていた。


「ガガッ……」


 けれどそれでも、風野郎に焦っている様子はない。

 恐らくだが今の俺の魔法の威力では、自身の核を壊すことができないとわかっているからだろう。


 この世界において、急所を突くことはかなり重要である。


 あれだけLVを上げまくっていたはずの俺が一撃でやられてしまったのは、元から強力なエルダーリッチが杖の補助を受け、更に俺の急所に的確に一撃を当てられたからだ。


 シミュレーションをすることで、この世界のHPという概念もある程度理解ができるようになったことで、俺はそれを理解することができた。


 要はHPというのは、自分へのダメージをある程度肩代わりしてくれる数値だ。


 HPが高い人間は、自分の身体にダメージが入ってもHPが減るだけでそれほど痛みを感じない。


 たとえば本来であれば腕が潰れるようなハンマーの一撃を受けるとしよう。


 HPが低い人間だとただ腕が潰れるだけだが、HPが高い人間はある程度のダメージを肩代わりしてもらえるため、腕はある程度の痛みを感じるだけで潰れることはないといった具合だ。


 ただHPによるダメージ代替は、急所には効きづらい。

 要はどれだけレベルが高い生き物でも、防御や魔法抵抗力を貫通できるだけの一撃で急所を狙えば倒すことができるということだ。


 本来であればエルダーリッチの一撃くらいなら耐えられるはずの俺が死んだのは、相手に首を狩られたからということになる。


 つまりこの世界では相手を倒すのに一番確実な方法は、最大の一撃を相手の急所に叩き込むことなのだ。


 なのでエルダーリッチは、核への強力な一撃を何より警戒する。

 俺へ放つ攻撃魔法を中断して、迎撃に移るくらいにね。


 だから俺はLV10魔法で魔法ごとぶち抜かない限り、核を壊すことはできていなかった。

 ただ今回こそ俺は、それを達成するつもりでいる。


 ライトアローレインとチェインライトニングを併用し、風野郎の質量攻撃を潰しながら定量ダメージを与えていく。


 相手に回復をさせる余裕は与えない。

 魔力回復をMAXまで上げている俺は、魔力切れを気にする必要はないからな。


 圧倒的な攻撃密度で攻撃を放ち続けた俺は――ここで奇手を打つ。

 アクセルとクイックを使用し、俊敏にバフをかける。


 そして俺はそのまま――前へと飛び出した。

 遠距離から中距離へ……それは風野郎の間合いへ飛び込むことを意味している。


 俺の接近に気付いた風野郎が、魔法を放ってくる。

 視認性の低い風魔法を、勘を頼りに避けていく。


 魔法を使いまくっているおかげかある程度は避けられたが、当然ながら全ては無理。

 全身に傷ができていき、血が噴き出していった。


 ただ、俺は傷つく度に己の身体にラストヒールをかけながら前進を続けていく。

 ゾンビも真っ青になるほどの無茶責めを繰り返しながら、更に距離を近づける。


 俺を見てビビった風野郎が、わずかに一歩下がる。

 そうだよ、それが見たかったんだと、俺は更に二歩前に出る。


 そして更に全身が傷だらけになり、魔法で回復が追いつかなくなるほどの近距離に近付いていく。

 全身から感じる痛みと熱さ。


 けれど頭の中は恐ろしいほどに澄んでいて、魔法の発動準備を問題なく整えることも可能だった。


 痛みに慣れる特訓を続けていて、良かった。

 そう心から思った。


 大量のHP任せにダメージを食らいながらも距離を詰め……杖をしまい、アイテムボックスからスケルトンナイトの剣を取り出した。


 そして――超至近距離からの一撃を放つッ!


断罪(エクスキューショナー)の剣(・ソード)!」


 魔物特攻を持つ光魔法、LV7で覚える魔法剣。

 いくら剣術に疎い俺でも、この距離なら外さないッ!


 突き立てた一撃が、発動させていた風のバリアを貫通し風野郎の核に到達する。

 ヒビが入り、後ろに下がろうとする風野郎の核に更に突き立てると――パリィンッ!


 丸い核が半ばから真っ二つに割れる。

 そして発されていた光が徐々に薄くなり……そのまま風野郎が、パタリと地面に倒れる。


 そのまま風野郎が音もなく一緒に消えていく。

 そしてその場には穴ぼこだらけの真っ白な空間と、傷だらけの俺だけが残っていた。


「はあっ、はあっ……どんなもんじゃいっ!」


 気付けば傷を治すのも忘れ、ガッツポーズを取ってしまう。

 ようやく自分の力で、勝利をもぎ取ることができた


 俺は勝利を噛みしめながら、LV10魔法なしで風野郎を倒せたことに達成感を覚え、また一つ自分に自信をつけるのだった――。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


第二章はこれにて完結です!


思っていたよりも長くなってしまいましたので、もうちょっとだけダンジョン攻略が続きます!


「第二章面白かった! 続きの執筆もよろしく!」


「第三章が、続きが早く読みたい!」


「勝たちの活躍をもっと見たい!」


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