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 今の俺が強くなる活路は、やはり魔法にしかない。

 そう考えた俺はエルダーリッチを狩りながらとにかくLV上げに徹することにした。


 ここでLV上げを始めてからしばらく経っているが、最近ようやくLV上げが限界に近付いてきた。


 けれどシミュレーションルームでLV10魔法禁止縛りで戦うと、まだエルダーリッチ相手に勝利を御治めるのは難しかった。


 なので俺は一旦トレーニングを止め、積極的にシミュレーションを行っていくことを決める。

 今必要なのはステータスのわずかな向上より、エルダーリッチ相手に戦える戦法を編み出す方法なのは間違いない。


 風野郎とだけ戦っていては戦闘に偏りが出ると思い、他のエルダーリッチ達とも戦うようにしていた。


 とりあえず五種類のエルダーリッチと一回ずつ戦った段階で、俺はようやくエルダーリッチ相手の戦い方を確立しつつあった。



 そしてこれが……六度目の正直。

 シミュレーションルームに立った俺は、再び風野郎と対面していた。


「さて、今日こそは一泡吹かせてやるぜ……」


「カカッ!」


 俺の覚悟を嘲笑うかのように、風野郎が顎と歯をカタカタ鳴らす。

 動作がいちいち癪に障る野郎である。


 俺にはエルダーリッチ狩りをして上がったLVと、このシミュレーションルームで培ってきた戦闘経験がある。

 もう二度と、あの時のような無様は晒さない。

 今日こそは絶対にぶっ倒してやる!


 俺達は向かい合い――再び、激突した。





 エルダーリッチは魔法の達人だ。

 風野郎がむかつくことは置いておくとして、それだけは紛れもない事実である。


 火・風・水・土・闇。

 俺が扱うことのできるこの五属性において、俺の魔法の練度はエルダーリッチ達にはるかに及ばない。


 今では、エルダーリッチは俺にとってLV上げにいい獲物というだけではなくなっていた。


 エルダーリッチの魔法の使い方は、今の俺から見て見るべきものが多い。


 人間でいうところの魔導師クラスの実力を持ちLV10魔法を使いこなす彼らの戦い方は、あらゆる魔法を使える状態で、今自分ができる最適解を選び出すというものだ。


 それは魔法のLVがカンストしている俺がすべき到達点に、かなり近い。


 エルダーリッチはただの獲物ではなく、同時に俺にとっての魔法の師にもなりつつあった。

 ……それを認めるのは、本当に癪なのだが。


「ガガッ!」


 風のエルダーリッチが杖を掲げる。

 最初の頃は、相手の魔法を避けることができるよう、ここでアクセルとクイックを使い俊敏にバフをかけていた。


 けれど今では、それが間違いだとわかっている。

 なぜなら魔導師クラスの実力者の相対では、全体攻撃を打ち合うことが珍しくないからだ。


 そのため重きを置くべきは身体能力の向上ではなく、相手の魔法発動の阻害と同様に行われる阻害に対して、いかに対抗策を講じるかなのである。


「レールガン!」


 故に俺はアイテムボックスから取り出した、スケルトンナイトの剣をレールガンで射出する。

 狙うは風野郎が掲げる杖と、肋骨の奥に見え隠れしている核だ。


 風野郎は俺の攻撃を無視……することはなく、即座に発動させた風魔法で防御に入った。


 まずウィンドクッションを使い衝撃を殺してから、それを風の防壁であるウィンドバリアで受け止める。そしてそれと同時に、こちらに牽制のウィンドブリットを放ってくる。


 エルダーリッチは、魔法の三重起動くらいのことは朝飯前にやってくる。


 俺も彼らを真似てなんとかできないかと試してはいるのだが、今のところ二重起動が限界なので少々忸怩たるものがある。


 俺はやってきた風の弾丸に対しコインのレールガンで迎撃。

 向こうの方が練度は高いが、純粋な魔法攻撃力なら既に俺の方が高い。


 コインはウィンドブリットを打ち破り、わずかに勢いを弱めながらも風野郎に接近する。


 けれど攻撃は見切られており、俺の一撃は肋骨をすり抜けローブを貫通するに留まった。



 ――ここまでの狩りと五度に渡るシミュレーションで、俺はエルダーリッチの魔法発動を阻害する方法を発見していた。


 一つは手に持っている杖を壊せるだけの一撃を放つこと。

 そしてもう一つは、核にダメージを与えることができるクラスの魔法を核目掛けて放つこと。


 これはコインによるレールガンではだめなようで、剣を投擲して加速させなければ十分な威力にならないことがわかっている。


「ダブルライトニングボルト!」


 俺は動くことなくそのまま、相手に対し攻撃魔法を放ち続ける。

 対しエルダーリッチも、風の魔法で防御と迎撃、カウンターを間断なく繰り返してきた。


 雷の刃が風を裂き、風の槌が雷を床にたたきつける。

 守るための防御ですら、攻撃魔法だ攻撃。

 相手を倒すため、お互い防御は最低限に留め、ただひたすらに攻撃魔法を放ち続ける。


 周囲にバチバチと紫電がはじけ飛び、風の余波が俺の頬を裂いた。

 風野郎のローブが焼け焦げ肋骨の一部が炭化するが、エルダーリッチにとってはあの程度はダメージに入らない。


 本当にヤバい傷を負ったら、あいつらは闇魔法で回復もできる。

 核の破損も、完全に破壊されてなければ修復できる。

 俺も人のことは言えない自覚はあるが、あちらも大分チートじみた性能をしていると思う。


 攻防の余波が、シミュレーションルームを破壊していく。

 タイルがめくれ、その下にある真っ白な物質までえぐり取っていた。


「ちっ、やっぱり強いな……」


 手数と手札はあちらが多いが、純粋な威力はこちらが高い。

 出力差で強引に拮抗させている状態だ。


 ゴリ押しと言えなくもないが、まだ魔法素人でエルダーリッチと打ち合えている時点で及第点と言えると思う。


「それなら……やらせてもらうかっ!」


 アイテムボックスからとあるものを取り出す。

 俺が両手に構えたのは――エルダーリッチの杖だ。


「レールガン!」


 ついている宝玉が濁り、そして魔法が射出される。

 それは今まで拮抗していた風野郎の攻撃を易々と貫通し、その肉体に着実なダメージを与えてみせた――。

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