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一旦休憩


 もしかすると二つの部屋が俺の自室に直結してるのって、ヘトヘトになってからすぐに寝れるようにという配慮なのかもしれない。


 そんなことを考えながら、むくりと身体を起こす。

 寝入り過ぎて寝違えたのか、少し肩の辺りが重い。


 ストレッチをしてぐーっと身体を伸ばしてから、洗面台へ向かうことにした。


「……(しゃこしゃこしゃこしゃこ)」


 歯磨きをして粘ついた口の中を綺麗にさせながら、シミュレーションルームでの戦闘について思いを馳せる。


 エルダーリッチって……やっぱりめちゃくちゃ強い魔物だったんだな。


 そりゃ未だにLVが上がってる時点で強いのはわかってたし、グングニルやジャッジメントレイを一発耐えられるって時点で魔法に関しての造詣が深いのもわかってたけど……まさか何が起きたのかもわからないうちに、一発でやられてしまうとは。


 しかもやられ方も、見事なまでの首チョンパだ。

 自分の身体を見下ろすあの感覚は、もう二度と味わいたくはない。


 もしシミュレーションルームを使わず、実際に風野郎と戦っていたら……どうだったろうか。


 多分一発目のジャッジメントレイは当てられたと思う。

 けど二発目を放つまでにあの一撃を使われてたら……やばかったかもしれない。


 いくら欠損すら治せるラストヒールがあるからと言って、首を飛ばされれば終わりだろうし。


 いや、もしかしたら首だけになっても、速攻でラストヒール使えば首から下がにょきにょき生えてきたりするんだろうか……?


 試したくはないけど……もう一度あの風野郎と戦って負けたら、その時は一度試してみようか。


 でも……はぁ。

 こうやってきちんと戦って負けたのは、この世界に来てから初めてだ。

 負け=死だから、当然っちゃ当然なんだけどさ。


「いかんいかん」


 歯を磨いてから顔を洗い、気を引き締める。

 そのまま頬を叩きながら、鏡に映る自分の顔をのぞき込んだ。


「よし、落ち込むの終わりっ!」


 負けたことで沈んでいる暇があるなら、次はどうするべきかを考えるべきだ。


 アリステラでなら一度負ければ終わりだけど、シミュレーションルームでならやり直しが利く。何度間違えたって大丈夫。

 最後に正解にたどり着ければ、それでいいんだから。


 気分が落ちたのは空腹のせいもあるかもと思い、とりあえず台所へ。

 あまり複雑な料理をする気になれなかったので、久しぶりにカップ麺を食べることにした。


 電気ケトルに水を入れて、スイッチオン。

 母さんが少し前に最新式に買い換えたばかりだったので、あっという間にお湯が沸く。


 既に開け、かやくも入れているカップ麺にお湯を注いでいく。


 今回の待ち時間は三分だ。

 たまに五分のとかもあるけど、個人的にあれは長すぎると思う。

 やっぱりカップ麺は三分なんだよね、これが刷り込みってやつなのかな?


 液体スープは上で温めてから入れるタイプなので、蓋の上に乗せてのし蓋代わりに使う。


 バグっている時計をタイマー代わりに使いながら、先ほどの戦いをもう一度振り返ることにした。


 脳内で風野郎の動きを思い浮かべていく。

 そういえばあいつ、自分のいる場所から動こうとしなかったよな。


 俺は風のエルダーリッチはとにかく動いて動いて中距離を保つような戦い方をするもんだとばかり思っていたから、ちょっと意外だった。


 俺がグングニルやジャッジメントレイを使う時と同様、必殺技を使うまでにはかなりの溜めが必要ってことなのかな。


 あと、今思うと俺を倒した魔法を使うまでに、かなりの時間がかかっていたように思える。


 クイックとアクセル、ライトニングボルトと回復魔法にレールガン。

 都合五発魔法を放つくらいには時間もあったわけだから、その間に魔法発動を邪魔する方向でいけば、即死攻撃は避けられるか。


 でも前にレールガンを使った時もそのまま魔法を使われたし……攻撃はあんまり意味がないのかな?


 それなら杖や宝玉を狙っていくのがいいんだろうか?

 相手の魔法発動を阻害するのって、どうするのが一番効果的なんだろう。


 そんなことを考えている間に二分が経っていた。

 意識を戦闘から食事に切り替える。


 どこからでも切れると書いてある切り口が全然切れずに悪戦苦闘しながら液体スープを入れると、ジャスト二分半。

 俺はそのまま、まだ完全にほぐれていない麺を口に運ぶ。


「このジャンキーな感じがいいんだよなぁ……美味しい……」


 三分ゆでカップ麺を二分半で少し固いうちから食べるのが、俺のジャスティスだ。


 醤油の濃厚な味が後を引く。

 気付けば無心になって、ずるずると面をすすっていた。


 久しぶりに食べると、カップ麺特有のペラペラなチャーシューも妙に美味しく感じられる。


 腹が減っていたので、あっという間に食べ終えてしまっていた。


「これはこれで美味いんだよなぁ」


 外で食べるラーメンは当然ながら美味しいけど、カップ麺とか袋麺って、はまた違った趣があっていいよね。


 まあ今は外で食えないから、これが唯一のラーメンなわけだけど……リフレッシュを使いカップ麺を再生してから、ふぅ~と息を吐く。


 腹がいっぱいになってから、改めて対策を考える。


 どうせ戦うんなら、LV10魔法でのゴリ押し以外の方法も検討してみたい。


 ただシミュレーションルームだと、一度負けるとMPが全部持ってかれる仕様みたいだから……とりあえず第十階層でエルダーリッチ狩りをしてから、再トライしてみることにしよう。


 俺はどうすれば風野郎に一泡吹かせることができるだろうかと考えながら、自宅を出てエルダーリッチ狩りに精を出すのだった――。

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