挑む
ステータスを確認すると、一度の戦闘でLVが5も上がっていた。
流石LV10魔法で倒せなかっただけの強敵……本来であれば俺よりはるかに格上なんだろうな。
これならしばらくの間は、ここで本格的にLV上げができそうだ。
次の階層に出てくる魔物のことを考えると今から頭が痛いけど……とにかくギリギリまでLVを上げてから挑むしかない。
俺がエルダーリッチの倒し方のうち肝要だとわかってきたことが二つある。
一つはあちらが体勢を立て直しこちらに攻撃をしてくる前にLV10魔法を二発当てること、そしてもう一つは戦闘したら他のエルダーリッチが寄りつかないうちに撤退することだ。
つまり俺が勝てるかどうかは、周囲のエルダーリッチの居場所次第になってくる。
なのでとりあえず戦ってみて、無理そうなら撤退という感じで挑んでもいいんだけど……それだと少々、危険度が高すぎる。
一発魔法を放ったり、集中している間に他のエルダーリッチがやってきてしまう可能性はゼロではないからね。
エルダーリッチが近場にいれば、待っているのは彼らによる挟撃だ。
そんなことをされたら、今の俺ではとてもではないけど処理しきれない。
さてどうするべきか……と悩んでいた俺は、敢えてリスクを取ることにした。
この階層では封印しようと固く決めていたウィンドサーチを、探知のために使うことにしたのだ。
ウィンドサーチは風のエルダーリッチを呼び寄せるという特大の地雷がある。
けれどその探知能力は複数の敵と邂逅するだけで詰みかねないこの階層では、必須といっていいほどに必要なものだ。
故に俺は――風のエルダーリッチと戦うというそもそもの選択肢を捨てた。
「……うおっ、ヤバッ!」
ウィンドサーチを使い、逆探知をしてきた風のエルダーリッチが寄ってくれば即座に自宅へ撤退。
「……風野郎確認ヨシッ!」
そして使用後も動く様子がなければ、俺は探知能力を活かし近くにいるエルダーリッチの場所を把握していく(何度も何度も風のエルダーリッチがやってきてめちゃくちゃうっとうしかったので、あいつのあだ名は風野郎に決定した)。
間隔が近すぎるため気付かれる可能性がありそうだと判断した場合も、同様に撤退。
再度ドア設置を使って同じ階層の別の場所にランダム転移を行い、また風野郎の確認から行っていく。
そしてエルダーリッチ達の位置取りが問題がなさそうになれば、ようやくそこで戦闘に入るというやり方を取らせてもらうことにした。
ドア設置の力を使って場所を何度も変えることができる俺だからできるやり方だ。
自分でもちょっと慎重すぎる気もするけれど(実際にエルダーリッチの魔法を食らっているわけではないから、受けてみたら問題なく耐えきれたりとかもするかもしれないし)、流石に命には替えられない。
効率が悪くとも、こちら側が無理せずに確実に倒せる方法でやっていくべきだ。
このやり方に切り替えると、大体一時間に一体くらいはエルダーリッチを倒すことができるようになってきた。
スポットを選んで何回もやり直すので、戦うことよりも精神的な疲れの方が大きい感じだ。
最初の方は……正直かなり苦戦した。
エルダーリッチの探知能力を見誤ってたせいで倒しきるより早く撤退しなくちゃいけなくなったりとか、危うくエルダーリッチに囲まれて魔法を食らいそうになったりすることも何度もあったし。
けど失敗を繰り返してうちに、徐々にコツも掴めてきた。
いざとなったら『自宅』に逃げ込めばいいっていうのも大きいしね。
でも……いちいちあの風野郎が近付いてくるせいで、ストレスがマッハだ。
こんなことを続けていたら、そう遠くないうちにダメージが頭頂部にまで及びそうだと思うくらいにイライラのボルテージが溜まっている。
俺は次の階層へ進むに当たってこの第十階層での目標を二つ設定することにした。
まず一つ目は、複数のエルダーリッチを相手取って勝つことができるようにすること(二体だけでは心許ないため、可能であれば少々リスクを取っても三体同時に戦って倒せるようにしたい)。
そして二つ目は――空気を読まずにやってくるあの風野郎を、ボコボコにすることだ!
どちらかというと二つ目の目標を一刻も早く達成するため、俺はLV上げに勤しむことにした。
待ってろ風野郎……このやり方でLVを上げきったら、ぶち飛ばしてやるからな!




