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対峙


 戦うとなると、どのエルダーリッチが一番倒しやすいだろうか。

 少し苦手意識のあるので風のエルダーリッチは除外。

 あとは……土のエルダーリッチだと雷魔法を土に吸収されたりする可能性があるか?

 いや、それをいうと水もそうかもしれないな。


 となると残るは……闇か火になるな。

 俺の使える魔法から考えると……闇が一番弱いか?

 でも魔物だから闇魔法に補正なんてことも……ええいっ、考えすぎてもあれだ。

 とりあえず火か闇なら、挑んでみることにしよう!











 それから歩くこと十数分ほど……俺は無事、望んだエルダーリッチと邂逅を果たすことに成功していた。


(宝玉は赤……火のエルダーリッチ)


 ゆっくりと歩いていくエルダーリッチ。

 俺は相手の知覚に入らないよう、岩の影にシャドウダイブで潜った状態でその様子を見つめる。

 それと同時に、魔法発動の準備も整えていく。


 放つ魔法はジャッジメントレイ。

 これが効かなかったら、今の俺では無理だということで別の手を考える必要があるだろう。

 エルダーリッチがこちらに背を向け……完全に無防備になった、今ッ!


 シャドウダイブを解除し影から飛び出しながら、右手を大きく上げる。


 魔法で大切なのははイメージ。

 前回ジャッジメントレイを使った時は、魔法攻撃力が上がりすぎたせいでリッチが率いていた集団全体に降り注ぐほどに巨大な光の柱ができてしまった。


 今の魔法攻撃力はあの時よりも更に上。

 けれど今必要なのは周りにいる魔物を巻き込める攻撃範囲の広さじゃない。


 エルダーリッチに致命的なダメージを与えられるだけの強烈な一撃。

 本来であれば拡散する光を圧縮して圧縮して放つ、収縮された高密度のレーザー光線。

 あらゆる魔を滅する――神罰の一撃ッ!


「――ジャッジメントレイッ!」


 俺の声が聞こえてからか、エルダーリッチが人間の可動域では不可能な動きでぐるりと首を百八十度動かしてこちらを向く。

 そして杖を掲げ、魔法発動の体勢に入ろうとする。


 けれどエルダーリッチが迎撃をするよりも――生じた光の柱が、エルダーリッチを包み込。


 生じる光、俺は左手で『自宅』を発動させドアノブを握りしめながら、同時にもう一つの魔法の準備を整える。


 一、二……五。魔法発動の準備は整った。

 俺が強力な一撃をイメージしすぎたからか、それとも魔法攻撃力がかなり上がったからか。

 コオォ……という機械的な音を発している光の柱は以前よりはるかに長い時間その場に留まり続けていた。


 光が消え、再び薄暗闇が階層を包み込む。

 そしてそこにあったのは……


「嘘だろ……ジャッジメントレイでも仕留めきれないのか……」


 傷だらけになりながらも、立ったまま杖を掲げているエルダーリッチの姿だった。


 着用している紫のローブは高熱で焼き切れ、全身の骨のうちのかなりの部分が消失し、また黒く変色していた。

 そしてその内側にある核にはヒビが入っており、光は弱々しいものに変わっていた。


 けれどそれでも……生きている。


 エルダーリッチはLVが100を超え高い魔法攻撃力を持っている俺のLV10の魔法をしっかりと耐えきってみせた。


 一撃で倒せない相手は、これが初めてだ。

 けどジャッジメントレイの威力が上がったおかげで、十分に時間を稼ぐことができた。


 だからこれで……終わりだっ!


「グングニル!」


 俺が放つことのできる、最速の一撃。

 雷によって構成された槍が超高速で飛翔し、更にそれが周囲を巡る雷によって加速されていく。


 瞬き一つに満たない間にトップスピードに到達したグングニルが、エルダーリッチへとぐんぐんと迫っていく。

 そして……パリイインッ!


 大きな音を立てて、エルダーリッチの核が弾ける。核を貫通しても尚、グングニルは全身を続け洞穴に突き立っていた。


 完全に光を失われた核がことりと地面に落ち、残った骨がバラバラと崩れていく。


「LV10魔法二発か……けどなんとか、倒せたな」


 一気に強くなったとは思うが、今の俺なら決して倒せない相手ではない。

 俺はエルダーリッチを無事に倒すことができホッと安堵のため息を吐き……そのままエルダーリッチの素材と杖をアイテムボックスに入れる。


 そして急ぎ自宅の中に入り、今度はドアを開いたまま様子を観察した。

 するとそこには――音を聞きつけてやってきた、二体のエルダーリッチの姿があった。


「結構危ないところだったな……」


 一対一で奇襲をすればまだ勝てるが、二体の相手を同時に相手取れるだけの力はない。

 一応倒せたとはいえ、俺がこの階層を完全攻略するにはまだまだ時間がかかりそうだ……。

 けれど今はこの達成感を噛みしめることにしよう。


 俺は自宅で肩の力を抜き、アイスクリームに舌鼓を打つのだった――。

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