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今後


「イヤアアアアアアァァッ!!」


 甲高い悲鳴のような音を鳴らしながら、ソーサリーレイスがゆらゆらと揺れる。

 右に一度、左に一度動くその動きが、あの魔物が魔法を放つ予備動作だ。


 こちらに目掛けて飛んでくるのは、巨大な炎弾だった。

 大きさはおよそ直径三メートル前後。

 ファイアボールを使って出せるものより、二回りほど大きい。


 LVが上がることではちゃめちゃに上がった俊敏を使い、相手の攻撃を避ける。

 地面に着弾したファイアボールが、周囲に炎を撒き散らす。


 LVが6になってから覚える火魔法、ブラストファイアボールに似ているがその範囲がかなり広い。

 かなり余裕を持って避けたはずなんだけど、こっちにまで火の粉が飛んできた。


「うおっと!」


 更に大きくバックステップして距離を取りながら、攻撃の着弾場所を見つめる。

 炎弾の威力自体も高いらしく、地面は踏みしめたように推し固められており、焦げ目は衝撃の範囲外にまでついている。


 単体攻撃というより、全体攻撃に近いか。

 俺の魔法で言うとチェインライトニングみたいな。


(なるほど……ひとかたまりになっていた騎士団に、この攻撃が降り注いだんだとすればキツかっただろうな)


 全体向けの魔法を集団に放たれ続けると、どれだけ耐久があったとしてもキツかっただろう。


 ただ威力は高いが、速度はそれほど早くはない。

 グリムリーパーやヌルゾンビ自体の移動速度より、少し遅い程度。

 これなら問題なく、目視してからでも避けられる。


「お返しだ――ジャッジメントレイ!」


 相手のHPが未知数である以上、最初の一撃は全力で。

 魔法を避けながら発動準備を終えていたジャッジメントレイを放つ。


 当初は発動にまで十秒近い時間がかかっていたLV10の魔法も、今では当初の目標である発動時間五秒を切るくらいには短縮できていた。


 ちなみに目下の新たな目標は、戦闘をしながらでも三秒前後でしっかりと魔法を放つことができるようになることだったりする。


「オオォォ……」


 浄化の光柱を食らったソーサリーレイスは、最後に少しだけ鳴くとその場から跡形もなく消えてしまっていた。

 どうやらジャッジメントレイであれば、問題なく一撃で確殺することができるらしい。


 けど、集団向けの魔法が放てるくせに何も残さないのはしょっぱいな。

 ヌルゾンビと違って経験値ウマーもないし。


 ステータスを開くと、一応LVは1だけ上がっていた。

 どうやらヌルゾンビでのゾンビアタックが効き過ぎたらしく、LVの上がりは今までより遅かった。


 この階層自体、あまり旨みがないな。

 戦闘練習をしながら進んでいって、少し粘ったらそのまま第十階層へ向かうか。






  



 ……と、そんな風に思っていた俺だったが、途中で方針変更をすることにした。

 俺に時間を無駄にする余裕はない。

 なのでただ戦う練習をするだけでなく、かねてからの懸念点を解決する方法を自分で探すことにした。


 動きも速くて魔法を使ってくるソーサリーレイスは、その相手として正に適任だったからだ。


 その懸念点とは――俺の放つことができる最大の一撃であるLV10の魔法を使っても、相手を倒せなかった場合の対処法である。


 ジャッジメントレイとグングニルの一撃で相手を倒すことができなかった場合、俺はかなりの窮地に立たされることになる。


 正直あまり想定はしたくないが、何発もジャッジメントレイを当てないと倒せないような敵が今後出てこないとも限らないし。


 最初の一撃を弾かれたにしろ耐えられたにしろ、その先に待っているのは長期戦だ。


 俺はかなりの実力を持つ相手に対し、再度強力な魔法を放つために時間を稼がなくちゃいけない。


 探索の時に本来ならバカスカ高LV帯の魔法を連発した法が楽なんだけど、それをせずにチェインライトニングやライトニングなどを積極的に使っているのは実はこれを見越してのことだったりする。


 俺はソーサリーレイスを相手に、出の速い魔法を使いながら切り札を放つための時間を稼ぐやり方を学んでいくことにした。




「ライトニング!」


「オオッ!?」


 稲妻の一撃がソーサリーレイスを強かに打ち付ける。

 ジグザグな軌道で放たれたライトニングが当たるが、いかに魔法攻撃力が高いとはいえ一撃では倒すことができなかった。


 相手も明らかに魔法タイプだからな、多分だけど魔法抵抗力が高めなんだろう。


「ライトニング! ライトニング! ライトニング!」


 雷魔法には確率でスタンと麻痺の状態異常を与える効果がある。

 そのため何発も連発していれば、ダメージと状態異常の二本の矢で結構な確率で相手の動きを止めることができる。


 これをして時間を稼ぐ。

 距離を詰められることも想定して後ろに下がりながら時間を数える。

 三、四……五ッ!


「グングニル!」


 俺の放った雷の槍が一瞬のうちに到達し、ソーサリーレイスの肉体を焦がし、更に進み続けた。


 よし、もう単体が相手なら時間稼ぎは余裕だな。


 問題は複数体に襲われた時だ。

 チェインライトニングの効果範囲外から同時に襲われたりすると、なかなか厳しいんだよな。


 とりあえずなるべく大量のソーサリーレイスに敢えてぶつかり、雷魔法を使って時間を稼ぐ練習を繰り返す。


 途中でグループの最大である四体だけでは足りなくなったので、敢えて音を鳴らし前後に四体ずつ、合わせて八体を相手取ることにした。


 遠距離型である俺とソーサリーレイスの相性がいいおかげで、かなり無理なやり方をしながらでも問題なく対処することができる。


 そこで感じることになったのは、自分の純粋な手数の少なさだ。

 時間稼ぎ用の魔法を使っている間に、高LV帯の発動準備も同時にできたらと何度も思うことになった。


 今後のことを考えると、取り組んでみるかもしれないな――魔法の二重起動に。


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