LV4
ヌルゾンビの討伐に勤しむことしばし。
俺はこの階層の底意地の悪さに……笑みを隠せなかった。
レールガンと『自宅』があるおかげで、順調すぎるほどにLV上げを進めることができている。
相も変わらず、『騎士の聖骸』と俺との相性は最高だった。
俺が気兼ねなくLV上げができるように作られたんじゃないかと邪推してしまう。
けれど俺にとってはLV上げスポットであるこの第八階層は、ここまで苦労しながら冒険を続けてきた冒険者達の鼻っ柱をへし折るほどの難易度を誇っている。
高LV帯になるまで魔法を鍛えてきた人間は魔法が効かずに苦戦することになり。
同じく肉体LVや身体強化するスキルなんかを育ててきた人間は、ヌルゾンビの数の暴力と死してなお動く不死性によって一撃をもらい、そのままヌルゾンビに食らい尽くされる。
ヌルゾンビはゴキブリのように、殺しても殺しても湧いて出てくる。
驚くべきことに、一度墓の中からヌルゾンビが這い出してきた後に、同じ場所から二体目のヌルゾンビが這い出てくることまであった。
文字通りの無限湧きである。経験値的にはありがたい。
この階層を攻略するためには、出てきたヌルゾンビを即殺することができるくらいの戦闘能力を身に付けるか、スピード特化で逃げ続けて第九階層に逃げ込んでしまうか、ウィンドサーチやシャドウダイブなどの補助系の魔法を使いまくって極力戦闘を避けていくかくらいしか選択肢がない。
ちなみにバリエッタさん達は、ヌルゾンビが出てきた瞬間全力で狩って雄叫びを使わせずに先を進んだようだ。
え、俺?
俺は第四の選択肢だよ。
とりあえず出てきた最初のヌルゾンビが雄叫びで仲間を呼び出すのを待ち、湧いてきたヌルゾンビ達を片っ端からレールガンで倒していく。
そしてヌルゾンビが倒しきれないくらい増加してきたら自宅へ戻る。
これをやればやられることもなく、魔力か集中力の続く限りヌルゾンビ狩りをすることが可能だ。
どういう仕組みなのか、半日も空けるとあれだけ大量にいたヌルゾンビ達は消えてしまっている。
大量に空いていたはずの穴も全て綺麗に塞がってしまっているのだから、ダンジョンは摩訶不思議である。
俺は電磁気を発生させる雷魔法のエレクトロを使いレールガンで使った鉄製品達をアイテムボックスに再度収納、そして歩きだしヌルゾンビ狩りをする。
これがここ最近の俺のルーティーンだ。
ちなみにヌルゾンビの身体に容赦なく叩き込みまくっているせいで、俺の持っているスケルトン達の武具達は既に完全にボロボロになってしまっている。
というか腐食した部分が剥がれて、新しい部分がまた腐食してというのを繰り返すうち、最近はボロボロを通り越して、なんか黒ずんだオーラみたいなのまで発し始めている。
『これヌルゾンビの怨霊とか籠もってないよな……?』とビビりながらも使っている。
黒いオーラを発するようになってから腐食は止まったので、とりあえず損耗はある程度のところで抑えられている感じである。
ここ十日ほどはヌルゾンビ狩りしかしていないため、完全に鼻がぶっ壊れてしまっている。
ティッシュを詰めても貫通して匂ってくる腐臭のせいでここ最近俺の食欲は減退しており、家にあるニンニクや唐辛子といった刺激の強い香辛料を使ってなんとか食事をしている状態だった。
「そろそろ次の階層に行くか……」
家の中でゆっくりしていた時に、ふと思い立った。
いくら無限ヌルゾンビ編を開催できるとはいえ、流石にLVも上がりづらくなってきた。
狩り場としては優秀だからまだ上がるっちゃ上がるんだが、かなり効率は悪くなってきている。
それにそろそろこの臭い階層からもおさらばしたいところだ。
というわけで俺は一度第九階層へ向かうことを決める。
しっかりと休息を取ってから、定期的に行っているステータスを確認をやることにする。
「ステータスオープンっと」
鹿角勝
LV 112
HP 1230/1230
MP 1840/1840
攻撃 247
防御 267
魔法攻撃力 423
魔法抵抗力 399
俊敏 253
ギフト
『自宅』LV4
スキル
光魔法LV10(MAX)
闇魔法LV6
火魔法LV7
風魔法LV9
水魔法LV9
土魔法LV4
雷魔法LV10(MAX)
氷魔法LV6
時空魔法LV10(MAX)
魔力回復LV9
よしよし、どのステータスも均等に上がってるな。
これだけあれば第九階層の魔物もなんとかなるはずだ。
魔力回復も9まで上がってくれて、今では10分で18MPが回復してくれる。
おかげでほとんど息切れすることもなく魔法が……って、あれ?
「……んん゛っ!?」
喉の奥から変な声が出た。
よく見たらーー『自宅』のLVが4に上がってるじゃないか!
第九階層に行こうと思ってたけど予定変更だ。
まずは『自宅』の新たな力の検証をしなくちゃいけないからな!