報告
ステータスを確認してみると、たった一回の戦闘でLVが3上がっていた。
グリムリーパーを初めて倒した時に勝る勢いでの上がり具合に気を良くした俺は、第七階層で、リッチ軍団を狩りまくることにした。
ウィンドサーチで群れを探し、ジャッジメントレイで一掃。
再び群れを探し、ジャッジメントレイで一掃。
これを繰り返すだけで、面白いようにレベルが上がっていく。
おまけにグリムリーパーと違い、戦利品が手に入るというのも俺のリッチ狩りを推し進めた要因の一つだ。
スケルトンソルジャーのもっている鉄剣と鉄の盾。
そしてスケルトンナイトが着込んでいる全身甲冑を含めて、スケルトンソルジャーよりワンランク上の錆びていない鉄製の武具。
これらがじゃんじゃかアイテムボックスに溜まっていく。
グリスニアでは買い取り不可(暗黙の了解)ってことらしいけど鉄は鉄だ。
適当に鋳つぶして鉄塊にすれば、生活費くらいにはなるはずだ。
それにスケルトンナイトの武具の方は、他国で売りさばけば結構な金になりそうだし。
ちなみにスケルトンメイジとプリーストの杖やローブは、完全に焦げて使い物にならなかった。
けれど魔法耐性が高いからかリッチの持っている杖だけは残っているのでこれも回収していく。
持ってみても、何の効果があるのかわからなかったので、とりあえず使って試してみる。
試してみると、闇魔法の威力が上がっていた。
どうやら闇魔法に関する補正をかける杖らしい。
ただ光魔法とは相性が悪いらしく、ジャッジメントレイの威力が明らかに落ちていた。
スケルトンソルジャーを一体打ち漏らした時はビビったね。
とまあそんな風に、討伐とアイテム回収が捗る捗る。
楽しくて魔法を使いまくっていると、あっという間にMPが尽きてしまった。
けれどそれに見合うだけの収穫はあった。そう断言できる。
鹿角勝
LV62
HP 730/730
MP 128/1281
攻撃 147
防御 167
魔法攻撃力 271
魔法抵抗力 249
俊敏 153
ギフト
『自宅』LV3
スキル
光魔法LV10(MAX)
闇魔法LV6
火魔法LV7
風魔法LV9
水魔法LV9
土魔法LV4
雷魔法LV10(MAX)
氷魔法LV6
時空魔法LV10(MAX)
魔力回復LV5
LVがめちゃくちゃ上がった。
それに伴ってステータスもぐんぐん上がっている。
LVの上昇に伴って、最初にリッチを見た時に感じたような生理的な恐怖はまったく感じなくなっていた。
ということはつまり、今の俺のLVはリッチとやり合えるくらいまで達しているってことだろう。
だが、俺は別に最初からリッチを一撃で倒すことができている。
これはどういうことなのか、一応俺なりに仮説を立ててみた。
まず一番考えられるのが、俺の魔法のLVが本来の肉体LV(俺自身のLVのことだ。スキルのLVとややこしいので、今後この呼称で行こうと思う)にそぐわないほどに高いという可能性だ。
よくよく考えてみると、高LV帯の魔法は明らかにおかしい。
バリエッタさんの話ではラストヒールは欠損すら治せるらしいし、そもそも瞬間移動のジョウントや瞬間マッピングのパーセプションはバランスブレイカーが過ぎると個人的に感じている。
純粋な攻撃魔法であるグングニルとかジャッジメントレイは威力がバグっている。
俺がLV1の状態で放ってあれだけの威力があったのだ、今グングニルを使えばどうなるか……ちょっと想像したくない。
多分だけど、魔法のLVっていうのは普通は滅多なことで上がるものじゃないんだと思う。 自宅で引きこもってるだけでLVが上がるのが異常なだけなのだ。
神様も再現には神力を使うみたいなこと言ってたし、多分この自宅ってチートな能力なんだろう。
高LVで覚えられる魔法は、ゲームでたとえるとするなら、最後のダンジョンの手前とかで入手できるものなんだと思う。
つまり俺は魔法LVのごり押しで相手を倒すことができているという説だ。
そして二つ目は、俺のステータスの上がり幅がバグっているという説である。
怖くてLVアップの話を人としたことがわからないけど……多分MP四桁って普通じゃないよな?
冒険者の話も聞かせてもらったが、あまりバンバカ魔法を使うような感じじゃなかったし。
それに俺は今、ステータスが上がりまくっていることで明らかに身体性能が向上している。
何分だろうが平気で息を止めることができるくらい心肺機能も上がっているし、多分だけど全力でぶん殴れば人をボールのように吹っ飛ばすこととかもできるくらいの腕力はある。
LVが上がるだけでこんな超人になれるなら、そもそも勇者なんて呼ばなくても現地の人達だけでなんとかなるだろうし。
実際俺くらい強くなるなら、鍛え上げられている騎士団の人達がリッチ相手に後れを取ることもなかったはずだ。
つまりこれは勇者として召喚された俺達異世界人の伸びしろがエグいということなんだろう。
こんなに強くなるなら、なるほど簡単に異世界召喚とかしちゃおっかなと思う国王イゼル二世の気持ちもほんのちょっとだけわかる。
当然ながら、許すつもりはまったくないけど。
第八階層への階段は既に見つけている。
けれど俺の集中力は完全に切れているし、MPも心許ない。
自宅に戻って英気を養い……そして寝て起きたところで、ふと気付いた。
既に『騎士の聖骸』に籠もりだしてから一週間近い月日が経っている。
「……一度バリエッタさんと情報交換をすべきかもしれない」
一年一組側にも何か動きがあった可能性は十分に考えられるし、バリエッタさんは第六階層以降の情報をとにかく欲しがっていたから。
なので俺は『自宅』のギフトを発動し一度自宅に戻ってから、ドア設置の力を使って第一階層へと戻り、報告へ向かうのだった――。