第七階層へ
寝て起きて戦って、寝て起きて戦ってを繰り返していく。
何度もやっていれば、当然ながら第六階層での戦い方もわかってくる。
グリムリーパーという魔物に慣れてきたのも大きい。
何度も戦っているうちにグリムリーパーは俺にとって恐れの対象ではなく、ただ経験値稼ぎの魔物としか思えなくなっていた。
そうなったのには、当然理由がある。
たしかにグリムリーパーのスピードは、気付かれれば十秒ほどで鎌の圏内に入ってしまうほどに速い。
けれど俺はとある事実を失念していた。
――LVアップを繰り返したことで自分の俊敏も上がってるという、当然の事実に。
それに気付いたのは、三度目の探索の時だった。
第六階層の最大戦力である四体グリムリーパーから逃げようとした時のことである。
俺はふと思ったのだ。
(逃げながら魔法を放つことって、できないかな……?)
そしてやってみると……できた。
走ることに意識が向くからか魔法発動までにいつもより少し時間がかかってしまうものの、魔法を放つことは問題なく可能だったのだ。
少し考えれば、簡単なことだったのである。
相手が迫ってくるせいで攻撃ができる回数が限られてしまうというのなら自分で走って、距離を取ってしまえばいい。
第六階層での急激なLVアップにより更に向上した俊敏は、俺に想像以上のスピードをもたらしてくれた。
なんと俺が全力疾走をすると、速いと思っていたあのグリムリーパーと同じくらいの速度が出たのである。
なので俺は道さえ間違えなければ、グリムリーパーとの距離を保ったまま一方的に攻撃をし続けることができる。
これがわかってからは、第六階層は効率の良い狩り場へと変貌した。
そして第六階層を探索してから五日目の今日。
現状この階層でできるレベルアップも頭打ちになったと思えたこの段階で、グリムリーパー四体を相手に戦いを挑むことを決めた。
「ステータスオープン」
鹿角勝
LV44
HP 550/550
MP 1101/1101
攻撃 111
防御 131
魔法攻撃力 217
魔法抵抗力 195
俊敏 117
ギフト
『自宅』LV3
スキル
光魔法LV10(MAX)
闇魔法LV6
火魔法LV7
風魔法LV9
水魔法LV9
土魔法LV4
雷魔法LV10(MAX)
氷魔法LV6
時空魔法LV10(MAX)
魔力回復LV5
ウィンドサーチを使いまくっているおかげで、風魔法のLVが9まで上がった。
この魔法にはお世話になりまくっているので、多分だけどLV10になるのもそう遠くないと思う。
MPや各種ステータスは順調に増加している。
MPは自宅で積極的に家電や水道を使っても伸びない時は伸びないんだけど、今のところ順調にMPが増えてくれている。
あと走りまくっていたおかげか、俊敏もちょっと伸びていた。
そしてもう一つの新事実。
どうやらグリムリーパーのあの鎌の攻撃自体がかなり強力な魔法攻撃だったらしく、俺の魔法抵抗力が結構上がったのだ。
ただあの食らうとどよーんとする攻撃を、何度も自分から食らいにいくのは可能なら避けたい……魔法抵抗力上げをするのは、どうしても必要に駆られた時だけにしよう。
気軽に自宅を出る俺の手には、バリエッタさんの地図を現像し、そこにいくつか追加の情報を書き足している地図が握られている。
今回はランダム転移ではないので、出てきた場所から第七階層までの道のりもバッチリだ。
ウィンドサーチを使うと……おあつらえ向きに、階段へ向かう道中に四体のグリムリーパーの群れがいた。
俺は気軽に歩いていき、そのまま接敵する。
「チェインライトニング」
「「「キョオオオオッッ!?」」」
雷は分裂しながら四体のグリムリーパーに見事命中。
死神達のうつろな顔が俺を見つめているのがわかった。
「「「コオオオッッ!!」」」
グリムリーパー達がこちらに迫ってくる。
けれどそのうち一体の速度が、明らかに落ちていた。
――これもまた新たにわかった事実なんだが、どうやら雷魔法の一部には、相手に麻痺や行動阻害の効果を与えるものがある。
ちなみにレールガンにだけはこの効果がない。
多分雷そのものを当てるのではなく雷によって加速したものを当てているからだろう。
「レールガン」
俺はバックステップで駆けながら、指先でコインを弾く。
二枚の融解したコインが、先頭のグリムリーパーの息の根を止めさせた。
続いてレールガンを放ち、二体目のグリムリーパーを倒す。
俺の攻撃に恐れた三体目の動きが鈍くなる。
そこに容赦なくレールガンをぶち込み、三体目も倒す。
そして身体が麻痺している様子の四体目をライトニングボルトで始末してから、ふうっと大きく息を吐いた。
「よし、完勝だな」
その後も二体ほどグリムリーパーを倒すと、LVが1上がった。
少しだけ気分を上向きにさせながら第七階層への階段を下っていく。
そこで俺を待ち受けているアンデッドは――。