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ダンジョンコア


「異界の勇者は全員がギフト持ち、おまけに複数のスキルを持っていることも確認されていると聞く。未だ戦闘経験は浅いじゃろうが、たしかに潜在能力は高いとは思うが……」


 このままではまず間違いなく、うちのクラスメイト達が『騎士の聖骸』に挑戦することになる。

 この国の王に、お前は正気かと問い詰めたい。


 この国の戦闘職として長いことやってきたバリエッタさん達騎士が大隊規模――恐らく数百人単位――で挑んでも、最後まで探索ができなかったような場所にだぞ。


 そんなこと、できるはずがない。

 どう考えても全滅する未来しかないじゃないか。

 常識的に考えれば、無理だとわかるはずだ。


「勝てるわけがないと思うんですが……」


「ふむ……それにはわしも同感じゃな。聞けば勇者達はまともに戦闘もこなしていないと言うし……わしの伝手を使って色々とやっとるんじゃが、時期を先延ばしにするので精一杯といった感じじゃな」


 どうする、今の俺に何ができる。

 シャドウダイブを使って皆に逃げるよう伝えるか?

 聞いた感じ、この国の魔法使いの練度はそれほど高くない。

 上手く侵入することさえできれば、王城に入って脱出を促すことくらいならできるかもしれない。


 だがそんなことをして何になる?

 仮に逃げて王国から指名手配でもされようものなら、その先に待っているのは逃亡生活だ。

 救ったクラスメイト達から石を投げられる姿が、容易に想像がつく。


 『自宅』のギフトで自分達を養えと行ってくる女子生徒達の姿が、俺達にも分け前をよこせと言ってくる男子生徒達の姿がありありと脳裏に浮かんだ。

 どうする、やっぱり何もせずにただ静観しておくのが……。


『勝君……』


 そんな中、俺の中に現れた一筋の光。

 クラスメイト達の中で俺が唯一信頼、有栖川未玖さんの姿が見える。


 ……そうだよ、さっき決めたばかりじゃないか。

 彼女に恩を返せるくらい、強くなってみせるって。


 大して仲良くもないクラスメイト達のために、そこまで危険を冒す義理はない。

 けれど彼女のためになら、骨を折る価値がある。

 だって俺はまだ、彼女に恩を返すことができていないから。


 ――日本にいた時は気付いていなかったけれど、一人ぼっちの引きこもり生活を楽しむことができていたのには彼女の笑顔も大きかったのだと……今になってわかったから。


(それならいっそ、未玖さんだけでも連れて行ってしまう? ――ダメだ、不確定要素が多すぎる。今の俺が単身で連れて行けるかがわからない。けれど未玖さんがどんな力を持っているにせよ、王国騎士の軍隊より強いとは思えない。彼女がダンジョン攻略をできなくなるようにするための方法が何か一つでもあれば……ん?)


 何だ、今何に引っかかった。

 一瞬浮かんだ疑問の理由を、必死になってたぐり寄せる。

 そうだ、この『騎士の聖骸』の攻略に、国王がそこまで必死になる理由……。


「歴代の王達がそこまで必死になってダンジョン攻略をしようとしているのは、『騎士の聖骸』をなくすため、で合っていますか?」


「――いかにも。いくらアンデッド達がグリスニアまでやってきたことがないとはいえ、物事というのに絶対はない。危険を取り払うために歴代の国王達は『騎士の聖骸』の最奥にあるダンジョンコアを破壊し、ダンジョンそのものを消し去ろうとした」


「つまりダンジョンの最奥まで向かってそのダンジョンコアとやらを壊すことができれば、ダンジョンをなくすことができるんですね?」


 俺の言葉に、バリエッタさんが首を縦に振る。

 なるほど、これで俺の方針が完全に固まった。


 理不尽な暴力を跳ね返せるくらいに強くなる。

 そしてこのままでは無謀なダンジョンアタックをさせられることになる未玖さんを(その上で余裕があるなら他のクラスメイト達も)助ける。


 この二つをクリアするために――俺は多少の危険は覚悟した上で、『騎士の聖骸』の完全攻略と、ダンジョンコア破壊によるダンジョンの停止を目指す。


 そうと決まれば、ギルドとダンジョンを往復している時間さえも惜しい。

 一度ギルドで達成報告をして、ついでに魔物図鑑でアンデッドの情報を収集したら、攻略を終えるまで街に戻るのはよしておくことにしよう。


 何せ今回の攻略にはタイムリミットがある。

 俺が『騎士の聖骸』を攻略しきるより前に一年一組でのダンジョンアタックが始まってしまえば、それでゲームオーバーだ。


 俺はバリエッタさんにキュアを使い酔いを醒ましてから、第六~第十階層までの情報を教わることにした。


 既に自重をしている余裕もないため、彼が持っている地図はポケットに入れておいたスマホのカメラでしっかりと撮影させてもらう。


 更にその先にいると予測される魔物の候補達についてもしっかりと話を聞かせてもらいメモを取ったら、そのまま速攻へギルドへ駆けていく。


 LVアップで俊敏が上がったおかげで、俺はあっという間にギルドにたどり着いたのだった――。

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