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魔族


 会合当日。

 アリシアの部屋へとやって来た俺と未玖は、彼女と一緒に最終確認を行っていくことにした。


「いよいよこの時が来たね……」


「一旦事情を整理しようか。魔族との話し合いは今日の午後三時から王城の謁見の間にて、で間違いないよね?」


「はい、間違いないです」


「来る魔族に関してはどこまで掴めてるんだっけ?」


 俺達がどうやって動くべきなのかも、もちろん事前にある程度は想定している。

 けれどいつだって現実は小説よりも奇なり、どんなことが起こるかもわからないからこそ最終確認は何度してもしすぎるってことはない。


「やってくるのは二名。詳しい事情は知りませんが、両方とも女性だそうです」


「ねえ、来るのがわかってたんなら普通に接触しに行った方が良かったんじゃない?」


「俺達ってこの国だと既にお尋ね者扱いでしょ? 向こうの心証を下げたりしないように、あまり刺激はしない方がいいかなって思ったんだよね」


「ああ、なるほど」


 ぽんっと手を叩く未玖を見て、アリシアが苦笑する。


 俺達は現在、複数人の勇者を連れて行った下手人として王国の上の方では犯罪者扱いを受けている。

 上の方という但し書きがついているのは、そもそも俺達が連れて行った先が帝国だからだ。


 帝国と比べれば魔法技術でも国力でも劣る王国は、あまり強く帝国にたてつくことができない。

 関係悪化を避けるために直接的な手配書なんかを出すことはなく、今は消極的な反対をするに留めているらしい。


 たしかに未玖が言っている通り魔族の二人との事前に接触することを考えたけど、そのせいで人間に悪印象を持たれたりイゼル二世の心証を下げたりしてもいいことはないと思い、我慢させてもらった。

 まあその分、会合中に何かあったら遠慮なく飛び出すつもりではあるんだけど。


「会合が始まる時間はあくまで目安なので、もう少し遅くなると思います」


「一応その情報自体がフェイクって可能性もあるし、ちょっと早めに準備をして時間を潰すくらいにしておこうか」


 こくりと頷き合い、俺達は魔族の会合に備えることにした。

 さて、一体どんな話し合いになるのか。

 楽しみ……というより、ちょっと怖い寄りかもしれない。

 まず間違いなく、何かは起こるだろうから。


 会合が行われるのはグリスニアの王城の一階部分にある謁見の間。

 以前御津川君とアリシアと接触するために潜入した時の経験が活きているので、忍び込むのにもさほど苦労せずに済んだ。


 もちろん以前の平時と比べると警備は厳重になっていたけれど、それでも闇魔法を使えば問題なく潜り込める程度だ。

 謁見の間までの警備の様子を一通り確認したら、そのまま『自宅』を発動。


 一度自宅に戻ってから、再度ドアを開く。


 ――今回の潜入にあたり、俺は現在設置できるドアのうちのいくつかを王城の中に集中させている。


 さっき確認した中で最も警戒が緩そうな場所へとやってくると、問題なく警備兵とかち合うようなこともなく王城に戻ってくることができた。


 誰かがやってくるより早くシャドウダイブを使い物陰へと潜り込む。

 王城はいちいち調度品やら美術品やらが多いので、影を探すのに苦労しない。

 最悪何もなくてもダークオブザムーンを使えば中に入れるし、ここまで来てしまえば潜入は成功したも同然だ。


 ここならアリシアとの部屋の距離もそれほど遠くないから、十分にジョウントの効果範囲内。

 彼女に自宅のギフトを見せることなく連れてくることができるだろう。

 アリシアを信じてないってわけじゃないんだど、ギフトの力を知ってる人はなるべく数句ない方がいいからね。


「よっと、それじゃあ二人とも準備できたから一緒に行こう」


「了解!」


「……どうすればいいですか?」


「俺の手を取ってくれれば大丈夫だよ」


「えっと……は、はい、わかりました」


 めちゃくちゃ挙動不審になりながら、アリシアがソッと俺の手に触れた。

 元が白いからよくわかるんだけど、指の先が真っ赤になっている。


 ああ、なるほど。ジョウントで飛んだことがないからかなり緊張しているんだろう。

 そんなに緊張しなくても大丈夫なんだけどな。一度事前に使ってみた方が良かったかもしれない。


「あ、以後はおしゃべり厳禁でお願いします。小さいですけど、声を完全にシャットアウトする感じじゃないんで」


 シャドウダイブによって入ることができる影の中の空間は、音を普通に通してしまう。

 そのため物音を立てたりしてしまえば、勘のいい人なら普通に気付いてしまう可能性は十分に考えられる。


 手で口を抑えながら思い切り目を瞑っているアリシアを見て、そこまでする必要はないんだけど……と思いながらも、再びジョウントを発動させ、影に入る。

 影を縫う形でするすると進んでいくと、あっという間に謁見の間にたどり着くことができた。


(お、あれは……)


 影から中を窺ってみると、既にそこには今回の対話相手と思しき魔族の姿があった。

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